ナンパ
私カリーナちゃん。ハルミカヅチお姉さまに商人ギルドの事について聞きに来たの!
早速Eランクに昇格してお金を稼いできた私に、お姉さまもビックリですことよ!
バーカウンター席にて、お姉さまと話をする私。
「てっきりウチで働きに来たのかと思ったけど、やるじゃないか。一体何をどうしたら新人冒険者が1日でそこまで稼げるんだい?」
「いやぁ、先輩達と魔法でちょいちょいっと木を切ってきました」
「ほぉー、魔法で木こりねぇ」
感心してか耳がピコピコと動くお姉さま。
えへへ、一杯褒めてくれていいのよ?
「というわけで商人ギルドに所属するにあたって色々お聞きしておこうかと」
「ん? 商人になるのかい? このままブレイド達と稼ぐんじゃなくて?」
「元々行商人とかにでもなろうかと思ってたんですよ。特技を生かして」
「確かにそんなすごい魔法が使えるなら、行商も楽だろうねぇ」
ええ、なにせ転移までできますからね。そこまでは言わないけど。
「といっても、ウチはそういう相談所じゃあないんだけど?」
「そこを何とか! 相談できるのがハルミカヅチお姉さましかいないんです!」
「……ったく、仕方ないねぇ。女一人でシュンライ亭に飲みに来た心意気を買って、少し相談にのってあげるよ」
やったぜ! 姐さん優しい!
「それと行商で何を取り扱ったらいいかとか、そういう相談もですね」
「ンなもん、ギルドの連中に聞けば一発さ。行商して欲しい、足りない商品をわんさと教えてくれるはずさね。本当に利益のいい商品は教えてもらえないだろうけど、大きいハズレや取引拒否されるような商品も教えないハズさ」
取引拒否。そういうのもあるのか。
「むしろ最初のウチはギルドで聞いた商品だけ取り扱うのが安全だし、たとえ一時的には多少損でも先人達に手土産を渡す感覚で一度はやっとくといい。信頼を買えるから後々得になるし、大損するような商品を平気で勧めるヤツは早めに切っちまいな」
「なるほど」
大損しても規模の小さい行商人のうちにそういう輩を見つけられてラッキーだったね、ということか。ま、現状の元手は木こり一日で稼げる程度だもんな。
「……ああ、そういえばウチも欲しいモノがあったんだっけねぇ」
「うっしゃ、どこで売ってるか教えてくれたら秒で買い付けてきますよ!」
「ハハハ、元気がいいのは何よりだけど秒は言い過ぎだろ。まぁ、ローションなんだけど、仕入れられたら頼むよ。粉末のを一袋銀貨1枚くらいで引き取るよ。けど、質の悪いヤツは買い取らない、いいね?」
あら、ローション! それはこのお店で働くお姉さま達の為にも仕入れないとね!
「ちなみに質の良し悪しってどう判断したら?」
「味で分かる。良いのは殆ど無味無臭だけど、質が悪いのはマズいし臭いし舌触りも悪い。ま、質が良い奴も大量に飲むと気持ち悪くはなるけど」
なるほどね。味かぁ。
私はお酒の入ったジョッキを傾ける。こっちの世界のお酒は、ぬるいしアルコール度数が低いけど、ほんのり甘い感じがして私好みではあるんだよなぁ。
「おっと、今日のとこはその1杯で止めときな。また記憶飛ばしちまうだろ、折角色々教えてやったのに忘れられたら勿体ない」
「ふぇ? あー、たしかに……」
「それに商人ギルドに加入するなら元手はしっかりとっときな。アタシは容赦なく毟り取るよ?」
毟り取る、って。そう言いながら止めるんだ?
その優しさMAXのセリフに、私は苦笑せざるを得なかった。
* * *
シュンライ亭を後にして、私はお家に帰ることにした。
とはいえ、宿もとっておらず、かといって二日連続で教会のお世話になるのも気が引ける。私のお家、それはもちろん収納空間だ。
教会で毛布コピーしたからもう収納空間内で寝起きするくらいは余裕でこなせるんだよね。フフフ。
とはいえ、収納空間に入るところを人に見られるのも何なので私は路地裏の人気のないところへとフラフラ歩いていく。あー、一杯だけだけどちょっと酒効いてるわぁ。
この身体、若くてお酒の耐性も大分低いんだなぁ……ひっく。
「お嬢ちゃん、ここは通行止めだぜ」
ん? あ、お嬢ちゃんって私か。
私は声を掛けてきた男に「おっと、失礼したね」と軽く頭を下げ引き返す。
すると、別の男が私の前を塞いできた。
「こっちは通行料払ってもらわないと通れないぜ」
「おんや? そうなの?……って、一本道でそれだったら私はどこへ行けばいいのさ」
「さぁて、どこだろうな。天国にいかせてやろうか?」
「あー、上ね。おっけ。んじゃお邪魔したね」
私は上空へと飛び上がった。
あ、そういや空なら誰にも見られないじゃん! 大発見!
……と、ソラシドーレの町上空にて収納空間に入り、一晩明かすのであった。ひっく。
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