木こり再び。



 私、カリーナちゃん。なんかこの世界で初めて朝ごはん食べた気がするわ?

 というわけで異世界生活3日目スタートです。(チュートリアル除く)

 ……まだ3日目なんだよなぁ。(チュートリアル除く)


 朝ごはんは美味しいと言い切れるほど美味しくはなかったものの、シスターさんの優しさがとっても嬉しかったので実質御馳走でした。


「そういえばシスターさんの名前ってなんです?」

「ん? シエスタですが。よくある名前ですよ」


 なるほど、シエスタ、シスター。よく似てるな、覚えやすい。

 シエスタさんの厚意に応えるためにも、今日も木こりを頑張ろう!




 そんな意気込みを持って今日も冒険者ギルドへやってきた。


「おい、カリーナ。お前ひとりで木こりしようとしたんだって?」

「あ、ブレイド先輩。そっすよ、それがなにか?」

「いや、俺たちも丁度木こりをしようと思ってな。手伝ってやろう。一人じゃ大変だろ?」


 ニカッと歯を見せて笑うブレイド先輩。シルドンとセッコーも居る。

 ……一歩間違えれば私にたかる寄生目当てな発言だが、ブレイド先輩は私が楽々クリアしたことを知らないんだろうか。知らないんだろうな。


 今日は酔っぱらってないから単に面倒見いいモードに違いないし。



 けど悪いな、この依頼は一人用なんだ。(私に限る)



「あー、いやぁ先輩。私は一人で――」


 断ろうとしてふと、この3人が手伝ってくれればその分一度に多くの丸太を運べるんじゃないかと思い至る。

 というわけで予定を変更して勧誘してみることにした。


「私が7、先輩達が3なら良いっすよ!」

「おいおい、そこはせめて逆だろ。先輩として色々コツを教えてやるって。うまくやれば、木こりも実入りの良い仕事なんだぜ」

「そっすね、昨日はあの後で銀貨2枚稼げましたし」

「…………ん? ちょっとまて。え? 成功したの? ソロで? しかも2枚って……2本!?」

「ええ。こう、丸太を左右に抱えて持って帰ってきましたよ。ね、受付嬢さん」


 私が話を振ると、カウンターの向こうでコクコクと頷く受付嬢さん。

 驚く3人。


「言ってくれよ! そんなの俺ら大恥じゃん!!」

「依頼の成否とかは個人情報ですし、ギルドとしては吹聴できませんからね?」

「あー、うむ、個人情報だものな……。これは仕方ないなブレイド」

「すごいドヤ顔決めてたなー、ウケる」

「シルドン……セッコー……いや、だけどさぁ……」


 どうやら先輩たち、私がスライム核の納品をした後、『木こりの依頼を受理した新人が居る』という情報だけ得たらしい。納品の時は冒険者ギルドじゃなくて木材置き場へ直接運んだから、目撃者いなかったんだよなぁ。


「しっかし、そうなると、確かに話が変わってくるな。俺達の手助けが要らないってことだし……なぁ、マジでどうやったの? 聞いていい?」

「簡単に言えば、魔法でちょいちょいっと」

「あぁ、アレかぁ。魔法ってすげぇんだなー」


 それで納得しちゃうんだ。ブレイド先輩純粋すぎじゃね?


「というわけで、私一人でも簡単にこなせるんで、先輩達が手伝ってくれるなら7:3くらいかなって」

「いや、俺ら要る?」

「これで『みんな! 丸太は持ったか!?』って言えるんで要るってことにしときます」

「なにそれ。まぁいいよ、今日はお前を手伝うつもりで予定空けてたしな」


 マジかよ。先輩めっちゃいい人だな。


「嘘つけ。シュンライ亭のおかみさんに支払い催促されてるだけだろ」

「姐さん怒ると怖いからなぁ。尻尾がぶわーってなって」

「い、言うなよ。締まらねぇだろ!?」


 あぁ、ハルミカヅチさんかぁ。じゃあ仕方ないね。


  * * *


 先輩たちは結局私の木こりを手伝ってくれることになった。

 取り分は私の提案通り7:3である。


 早速森に向かおうとする。


「あれ、荷車は使わねぇのか?」

「荷車なんて持ってませんよ?」

「バカか、借りりゃいい――って、そうか。Fだし誰の紹介も無しじゃ借りれねぇか。俺らなら借りれるぜ」


 おお、それはありがたい。両腕に1本ずつ抱えて2本、じゃ4人で8本だもんな。


「荷車がありゃ6本は運べるからな!」

「やっぱいらなくないですか?」

「え、そうか?」

「いやまて。一人それぞれ6本運べるならあった方が良いな……」

「んん!? ちょっとまて、何本伐る気だ!?」


 そりゃまぁ、伐れるだけ?


「荷車1つ借りるのに1日大銅貨1枚だ。……借りれなくはないが、元取れんのか?」

「余裕っすよ!」

「マジかよ。すげーな魔法って」

「いやいやブレイド。さすがにそれを丸呑みで信じるわけにはいかないぞ」

「というか、ブレイドのカリーナちゃんへの信頼が厚すぎない? 何かあったの?」

「ああ! カリーナとはシュンライ亭で少しな! あの夜の舞台は忘れられねぇぜ……」


 おい見てたのか。私本人はハルミカヅチさんから聞いた分しか知らないすげぇ恥ずかしい行為を……!


「こいつは信用できる女だ! 俺が保証する!」

「……ねぇホント、なにしたの? ブレイドの愛人にでもなった?」

「セッコーさん。それは絶対ないっすけど秘密っす」


 私も思い出したいような思い出したくないような恥ずかしい過去だからな……!



 ブレイド先輩の紹介で荷車を4台借りて、私たちは森までやってきた。


「じゃ、私が切りますんで」

「おう! 周囲の警戒は任せろ!」

「たーおれーるぞー」

「って早ぇよ!?」


 だって空間魔法で一瞬なんだもん。

 そして地面に倒れる寸前に空間を固定。ピタッと完全に止めて、静かに降ろす。


「は、発動の瞬間も見えなかった……!」

「風魔法のちょっとした応用ですよ、セッコーさん」

「風魔法ってこんなだっけ……?」

「な? カリーナすげーだろ」

「ブレイドは何で自慢げなんだ……いや、荷台が無駄にならなそうで何よりかな」


 まぁ一人6本だし、あと23本サクサク伐っちゃいますねー。


「ならせめて枝打ちは任せ――」

「あ。忘れてました。えいっ!」

「一瞬かよぉ!? とんでもねぇなカリーナちゃん! じゃあ積み込みこそは――」

「あ。魔法で軽くしときますねー」

「嘘ぉん……」


 伐るだけじゃなく枝打ちも空間魔法で一瞬!


 中身をくりぬいて収納空間に置いておくことでごっそり軽量化!

 (あとでバレないように戻しとくからね!)



 フハハハハ、これぞ空間魔法の神髄よ!



「こりゃ、確かにカリーナちゃん一人で十分だわ……俺ら要る?」

「手続き上よりは要ります」

「なんだそりゃ」

「荷運びよろ! 丸太は持ったか!?」

「おいもう1人分!? はえーよ!?」


 しかもこれ、2往復できたので1日で私たちは丸太48本を納品することに成功した。




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