拠点作り
私カリーナちゃん。今お買い物してるの!
予算は銀貨2枚、一体どんな素敵な物が買えるのかしら!
というわけでまずは中古の背負いカバン、革製のリュックサックを購入。
お値段銀貨1枚。
……早速予算の半分が消えたんだが?
モノを出し入れするための偽装用だったんだけど、この世界のカバンは高いのな。
いや、そりゃ工場生産品とかじゃないんだから高いのも頷けるんだけどもさ。中古でこれだもんなぁー。
店のおっちゃんも新品だと大銀貨2枚は軽い品だって言ってたしなぁ。長年使い込んでるから柔らかくなってて使いやすいとかセールストークが上手かった。
ま、そのまま行商人になっても大丈夫そうなくらい大きいやつを買ったから元は取れるだろう。
「って、よく見たら穴空いてらぁな……」
角が擦り切れて、私の人差し指が通る程の穴が開いていた。うーん、まぁある程度大きいモノを入れるなら問題なさそうだけどこれは……ここから破けて底が抜けそう?
……もしやカバンとしては廃品間近だった? だからこそ銀貨1枚で買えたんかな。いわばジャンク品で。
でも私の場合はどうせ実際にモノを入れるのは収納空間なわけだしね! 偽装として膨らませるくらいはするけど。
一応、空間魔法で穴の修理だけしておこう。上の方の大丈夫な革を5cm四方で複製してペタリと上書き貼り付けだ。
テキトーでいいから腕をくっつけるより容易いね。同じカバンの革だから色合いも同じ。目を凝らしてよく見れば境目が分かるかも、というくらいの完璧な修復だ。
……複製もハギレ程度ならそれほど負担も無いようだし、時間に余裕があったら他の部分の補強して普通に使えるリュックにするのもいいなぁ。
「これは色々と自作するのも検討したほうがいいかなぁ」
自分で作れば安上り、というやつだ。実際日本では作る方がなんやかんやで高くつくこともしばしばあったが、この世界じゃ自分で作れた方が安上がりなのは間違いない。空間魔法もあるし。
うん、そうだよ。椅子とかテーブルなら切ったり貼ったりする空間魔法で簡単に作れるじゃないか。木製でいいならコップも簡単に作れるぞ。先輩から教えてもらった木工スキルもあるし。
ベッドの土台とかも木で作れるから、あとはベッドの上に載せる布団とか毛布だな。自分用だしある程度複製するのも良しとする! あ、でも購入した品に限定だな。流石にタダで商品をコピーするのはダメだ。
「……錬金王国でとってきた木は自分用の木材としよう」
確か生木を乾かすと縮んだり割れたりするからそのまま木材にはできないんだっけ?
まぁ適宜空間魔法で直せばいいだけか。とりあえずやってみればいいだろう。
木材が足りなきゃまた山に行って伐ってくればいいし。何せ自分用だ。好きにしちゃえ。
「よし、じゃあ残りの予算でどれくらいの布や綿が買えるかチェックしよう!」
それと食料だ。さすがにご飯無しはひもじい。
* * *
綿は結構高かった。うーん、少し買って複製してしまいたくなる……
一方、狼――ウルフの毛皮を鞣した程度のものであれば手頃な価格で購入できることが分かった。1匹分で大銅貨5枚。ただし穴だらけのやつ。
……こんなボロボロなのが売り物になるんだろうか? そもそもなんでこんな穴だらけなんだよ。中古の毛皮なんだろうか?
と、疑問に思ったので商人のお兄さんに聞いてみた。
「ねぇ、これってなんでこんな穴が空いてるの?」
「ああ。見習いの練習品だからさ。あと見習いの練習ではあまり良い状態の革もないしな、こっちの穴は狩った時に矢か何かで空いた穴じゃないかな。まぁ真っ二つじゃないだけまだマシな方だよ」
「あー、そういうのもあるんだ。……売れるの? コレ」
「1匹分の量がちゃんとあるし、それなりだな。ああ、掛けて寝るには穴が開いてるくらいの方が丁度いいだろ? 汗だくになるし」
「なるほど」
ということらしい。状態がきれいな奴は売ってなかったけど、あったら銀貨数枚分はするとか。
しかし穴だらけでも私にとってはお買い得。
穴は空間魔法でチョチョイのチョイっと修復できるからね。
「じゃあ1枚買おうかな、あと干し肉も頂戴。合わせて銀貨1枚分でお願いします」
「まいど。美人さんだし少しオマケしておくよ」
「お、ありがと。兄さんいい男だね、気前のいい奴は好きだよ」
「へへっ、もう少しオマケしとくぜ。またウチで買ってくれよな」
やったね、やっぱり美人ってお得だ。
にしても、この世界では本来穴をふさぐのに必要な糸やハサミ、針なんかもそれなりにお高い。日本では百均で簡単に手に入った代物だけど、こちらでは全部手作りなんだから当然だ。修繕道具を全部揃えようとしたらそれだけで銀貨数枚はかかる。
そういう道具が要らないって点でも、空間魔法って便利だよなぁ。まさに神。
「あ。そういや教会ってどこにあります?」
「ん? それならあっちだよ。白い壁の建物だから見ればすぐわかると思う」
「あざっす」
折角だし神様に挨拶でもしておこう、と私は教会に寄っていくことにした。
神様への貢物(靴下)も渡したいしね。
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