失われた記憶(ただの酔っぱらい)
私カリーナ! 先輩冒険者相手にお酌して情報収集してたの!
気前のいい先輩冒険者は貧乏な私にもお酒を奢ってくれたので美味しくいただいたの。
結果、今二日酔いで頭がクソいてぇんだワ。
「……あったま痛ぇ……!」
そして差し込む朝日に目を細める。
あー……昨日結局あれからどうなったんだっけ?
確か、営業時間終了とかで冒険者ギルドを叩き出されてから、えーっと……
~・~・~
「えぇい、飲み足りねぇ! おいカリーナ、馴染みの店を紹介してやる! こい!」
「へいブレイド先輩! お供しやす!」
「えっ、ちょっとまってブレイド! まさかシュンライ亭じゃないよね!? おいシルドン、ブレイドを止めるぞ! って寝てるし!」
「ぐがー……俺が止める……ッ ふごっ」
「おい! せめて離せぇ! 女の子の行く店じゃないからあそこは!」
~・~・~
うーん、そうしてセッコーとシルドンを置いてシュンライ亭ってところに行って……綺麗なお姉さんと飲みふけって……えーっと……
って、なんでか私裸だ!? 正確には下着とシーツ一枚羽織ってるけど!
そして隣には同じくパンツ一丁のブレイド先輩!
えっ、あれ!? ナンデ!?
ま、まさか女の子人生1日目にして、致してしまったのか!? うぇええええ!? って頭もいてぇええええーーー! うぉえっぷ……
「おや、起きたようだねぇ」
「おぐぅ……ん?」
声のした方を見ると、金髪を結い上げて、キセルをぷかぷかふかしているお姉さまが居た。体のラインがバッチリ出るシックな黒ドレス。デキる女という空気をまとっていてカッコいい。これはもう素敵すぎるお姉さまである!
そして注目すべきはその耳としっぽ。狐だ! 獣人! うわぁ初めて見た! 異世界っぽいぃいい!
やべ、興奮してきた。私は一旦、表面上は落ち着いたように取り繕って尋ねる。
「……えーっと、あなたは……」
「シュンライ亭のオーナー。ハルミカヅチさ。その様子だと昨日のどんちゃん騒ぎも覚えてないみたいだねぇ……」
ふーッ、と呆れたように煙を吐くハルミカヅチ。
あらやだ、そんな動作も綺麗で美人だわ。惚れそう。チャイナドレスとか絶対似合う。
「って、あの、ひょっとして私、なにかしちゃいました……?」
「そりゃもう。そこのブレイドと纏めてみぐるみ引っぺがして請求するくらいにはね」
あ、裸だったのって身ぐるみ引っぺがされたからなのか。
……ならまだ致してない? セーフ? 私がいぶかしげな顔でブレイドを見てると、ハルミカヅチがやれやれと言う。
「安心しな。ブレイド
「あ、そうなんですか? よかったー」
下着は付けていたのでその辺は無事だろう。ヨシ!
「そうだ。昨日のはブレイド先輩の奢りのはずなので、私の服だけでも返してください!」
「アンタの服は別の代金になってるよ。ほら、アンタの握ってるアタシの靴下」
「えっ。あー……」
今気が付いたけど、私は右手に黒い靴下を握りしめていた。
どうやら私、酔った勢いでこの狐人のお姉さまに靴下くださいとお願いした模様。
神様に捧げる供物にする、お金がないから服と交換で、とかなんとかで。
(ちなみに万能身分証は収納空間の中なので無事だ)
「案外いい仕立てだったから、お釣りで古着も用意しておいたよ。サービスさね。あと仮ギルド証も返しとくよ、何の価値もないし」
「……どもっす」
私は古着を着た……むむ、ちょっとゴワゴワとする。というかなんかめっちゃ擦れる。
うぐ、そしてなんか腰に、いやおまたに異物感。……あれー、貞操は無事だったはずでは?
「ああ、大丈夫かい? 悪いね、初物だと知らずに食っちまって」
「えっ」
クスクスと笑うハルミカヅチさん。
あー、うーん。つまり?
「私の初めてはハルミカヅチさんってことですか!?」
「そうだね。そこはちょっと悪かったと――」
「やったーーーーー!!!!」
さよならユニコーン! 処女厨は去れ!
こんにちはバイコーン! 今後末永く宜しく!!
こんな美人さんでハジメテ卒業とか最高かよぉ!!
異世界最高ーーーー!!!!! 神様ありがとーーーーーーー!!!!!
「あ、でも酔っぱらってたせいで全く覚えてない! やだーーーー!!!」
「……なんだい昨日のアレは素だったのかい?」
どうやら昨晩もこのテンションでやらかしていたらしい。
「あ、あの、ちなみにどういう感じに……?」
「ん? あー、そうだねぇ。ウチの店は1階が飲み屋になってて、そこに舞台もあるんだが……(ゴニョゴニョ)……さらに……」
「なっ……そ、そんな恥ずかしい事を!?」
「思い出すとアタシもとんでもないことしたねぇ……ああ、恥ずかし」
とんでもねぇな昨日の私! お酒って怖い!!
でもおかげでこんな綺麗なお姉さまと……くそう、記憶、蘇れ私の記憶!
ぬ、ぬ、ぬぐぅぅ、全く思い出せない……なんと勿体ない。
……お酒は程々にしないとだな。
「あっ。そういえば私の服、大事な人から貰った服なんですよ……返せとは言わないんで、ちょっと最後にお別れ言っても良いですかね」
「ん? それくらいなら構わないよ」
そう言うと、ハルミカヅチが服を持ってきてくれる。神様がこの身体と併せて作ったいわば私の一部だったと言ってもいい服。
私は、ぎゅうっと抱え込む。抱きしめる。
「いままでありがとう……君の事は忘れないよ!」
身体で隠したところで、はい複製。収納空間内にコピー爆誕。
そんで一応オリジナルと複製を入れ替え。
いやー、良い仕立の服だもんな。仕方ないな。ゴワゴワした服を着るのは気分が悪いもんなー。
後で着替え直しとこっと。
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