突撃隣の先輩冒険者
「冒険者や行商人は自分用のスカベンジャースライムをテイムしてるヤツが多いぜ。野営する時とかあるとないじゃ大違いだぞ」
「あ、そうなんすか」
「エサ代も掛からねぇし、いざって時は囮にしてもいいしな。そうだ、俺のを分けてやろうか?……って冗談だよ、そんな顔すんなって」
そんな感じで先輩冒険者のブレイドから聞いたのは、基本的知識さんにはなかった野営のための情報だった。
うーん、為になるね。私は空間魔法あるから野宿不要だけど……
あ、どうも。私、カリーナちゃん。異世界初トイレを済ませた後、基本的知識さんの情報に不足していた所を知りたくて先輩冒険者に突撃取材してみたの!
はい。
まあね、野営のやり方自体は基本的知識さんに含まれていたんだ。
けど、随分大雑把な情報しか入ってなかったんだよね。本当に基本的な情報だけなんだなって実感した所存。
つまり、お外でトイレしたくなったらどうすんの、とかが分かんなかったわけ。
尚、
「……つーか、普通に俺に話を聞きに来るとは思わなかったわ。凄いなお前。ああいや、褒めてんだぞ。先輩の持ってる情報って大事だからな。そういうのちゃんと聞きにこれるって、ホント良い冒険者になれるよお前」
「いやぁそれほどでも。あ、ジョッキが空ですよどうぞどうぞ」
「おっ、サンキューな」
そう、私は先輩冒険者から冒険者の話を聞くべく、自分からブレイドさんへと話を持ち掛けたのだ。「お酌するんで、ちょっと冒険の話聞かせてください」と。
ブレイドは「えっ!?」と驚きの表情を浮かべたのち、「まぁいいけど」と快諾してくれた。
受付嬢さんが言ってた通り、本当に面倒見いいなぁ。
しかも飯まで奢ってもらっちゃっている。パンにハムとレタスまで挟んである、銅貨5枚相当のごちそうである。
先輩、あざーっす。
「ハハハ、それは迷惑料じゃねぇからそのうち返せよ。無理なら身体で払ってもいいぜ」
「あ、そういうのはナシで。普通に稼ぐんで」
「あっはっは、ブレイドまたフラれてやんの」
「っかー! 脈ねぇなー! 諦めろよブレイド」
「おっと、お二人もジョッキが軽そうですね、どうぞどうぞ」
「お、悪いね」
「いやぁ、今日は酒が美味いなー」
ブレイドの仲間、樽のような大男のシルドン、猿のように小柄なセッコー。
冒険者ランクは全員C。まぁ、
彼らは三人で冒険者パーティーを組んでいるらしい。役割としてはブレイドとシルドンが前衛で、セッコーがサポート役だそうな。
「つーか、カリーナちゃんはソロでやんのか? 誘うお友達いなかったのかよ」
「ま、ソロですねー。こうみえて腕に自信はあるんですよ。あと、そのうち商人になる予定ですし」
「冒険者ギルドの登録料も払えないのに大丈夫か? ま、となるとまずは行商人だな。護衛依頼するなら俺達をよろしくな! 多分あと10年は冒険者やってると思うし」
「ええ、タイミングが合えば是非」
まぁ空間魔法あるから頼むかどうかは微妙なところだけど。
「ま、そんならまずは金を稼げる依頼をこなさにゃならんなぁ。商人ギルドに加入するだけでも大銀貨2枚と中銀貨1枚だろ? 商売する金も必要だし、相当貯めなきゃだ」
「ギルドに金預けとくのが一番安心だな。宿に置いとくと盗られることもあるし」
「おススメの依頼? 初心者依頼って言われてるけど、薬草採取は意外と難しいよ。ちゃんと処理しないと使い物にならないし。それだけならまだしも根こそぎ持ってきて群生地枯らすバカもいてさぁ……」
うーん、マジためになるな先輩冒険者。
お酌するだけでこんなに情報もらえていいんだろうか? うめぇうめぇ。
「じゃあ討伐系の依頼ですかね?」
「といっても、まず装備がなぁ……今の嬢ちゃん、どっからどうみても村人っていうか」
「そもそも武器の一つも持ってないって、襲ってくれって言ってるようなもんだよ」
「ブレイドが思わず声を掛けたのも分かるよなぁ……ああ、一応言っとくとな。自分の愛人とかって名目ならパーティーで面倒見ることもできるんだわ。フツーなら仮ギルド証のGランクをCランクのパーティーには入れられねぇしな」
「なんと、そんな事情が」
あー、基本的知識さんの知らなかった情報が充実していくわぁ。
将来使うかはさておき。
「あんまり町から離れるなよ、魔物相手はマジで死ぬぞ。なんなら盗賊の方がまだ生かしてくれるレベルだ。倒せないだろうけど」
「できれば配達依頼とかの方が安全でいいんだけど……金はあんまり稼げねぇしなぁ」
「とりあえず無いよりはマシだろうから、後でギルドの裏手にある廃材置き場から角材でも貰っとけ。運が良ければ板もあるだろ、紐で腕に括り付ければ盾代わりにはなる」
ほほう。それは木工スキル覚えたら色々捗っちゃいそうですなぁ……
って、そんな使える廃材が置いてあるもんなのか? もしかして冒険者ギルドの貧困冒険者救済措置なのでは? まぁ今まさに私も貧困冒険者なんだけど。
「私、魔法使いなんでなんとかなるんじゃないかなって」
「魔法使い? どんな魔法が使えるんだ?」
「うーん……あ、木を切ったりできます」
「エアカッターかな。それならスライムは安全に狩れそうだ。ウサギもいいかも」
「血をまき散らすとゴブリンとかウルフが出てくる、狩ったら即回収して逃げると良い」
「あ、ウルフは毛が刃を弾くから気をつけろよ。足が速いから逃げられないし。腹の方は柔らかいから、とびかかってきたところを潜り込んでナイフでグサッってやるのが一番簡単……」
「囲まれてたら死ぬやつだな。町の近くにははぐれしか出ないけど、遠くまで行くと集団で出てくるから絶対やめとけよ。ぶっ刺したナイフを持ってかれても深追い厳禁な」
うん。
というか、ブレイドさん達マジ親切だわ。一言言うだけでめっちゃアドバイスくれるじゃん……初心者の味方かよぉ。今ならおっぱいのひと揉みくらいは許してあげてもいいレベルだよ。
「まずは装備を整えるんだぞ! 命を預ける相棒だからな!」
「うっす、ためになりますブレイド先輩!」
「だははは! 敬いたまへー!」
「ははーっ、あざーっす! ざーっす!」
情報源ありがたやありがたや。将来商人になった暁には指名依頼でも出して恩返ししたい所存。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます