下の話。(食事中の方はごめんね!)



 私カリーナ! 商人を目指してとりあえず冒険者になった女の子!

 身体目当ての酔っぱらいに絡まれたと思ったらただの親切な先輩冒険者だったの!

 そんなわけで冒険者の仮身分証と、後払い手数料分の投げ銭をゲットしたわ!


 というのが前回さっきまでの話。


 そんなわけで先輩冒険者のブレイドさんから投げ銭でもらった中銅貨を見る。

 黒パンが5個買える感じなので、日本円に換算して500円くらい。ちょっと奮発した募金といったところ。



 そして、私は空間魔法の【複製】でこれを何千枚にでも増やす力がある。

 つまり、貨幣のコイン1枚を手にした時点で、私は大金持ちになれるのだ。



「……」


 しかし、お金を増やすのはなんか違う、そう、なんか違うのだ。


 お金を複製したらそれは贋金だ。いや、分子の1粒に至るまで完全に複製されるので、限りなく本物なのではあるが……


 お金はあくまでお金。子供の小遣い程度ならともかく、私は商人を目指す身。

 商人の取引レベルでお金が増えたら、インフレが起きて市場が崩壊するだろう。


 そして、それはやはり1枚の銅貨を複製するところから始まってしまうのだ。

 一度お金を複製してしまったら、お金を複製することに抵抗が薄れてしまう。



 複製するなら商品の方……いや、これもマズいか。


 商品だって、商人が取り扱うのは誰かが作るなり、採取するなりした代物だ。

 商人としてそれを手に入れるのであれば、そこには本来金銭のやりとりが発生するべきであり、それを省略してモノだけ得てしまえばやはり健全な経済活動とは言えないだろう。


「……お金と商品の複製は、最終手段だな」


 そんなことしなくても、空間魔法さえあればいくらでも稼げる。どうしても必要な場合を除いては使わない、という縛りプレイくらいあってもいいじゃない。うんうん。


 私はそう決めて、中銅貨を収納空間へと仕舞った。




 ちなみにこの理論であれば、自分が原材料から採集して作った商品であれば複製してもいいことになる。

 自分で作ったモノなら、作成過程を飛ばすだけだからね! 時短時短!


 神様からスキルを習得しやすくなる才能を貰ってるし、鍛冶師とか魔道具作製士とかの生産系スキルを覚えるのもアリだな。


 あと商品ではなくて個人的に使うモノとかもOKだな。

 例えば自分用に希少金属で剣を作りたい、といった場合に原材料を複製して用意するのはOKとしよう。練習用の材料を複製するのもアリ。売らなきゃOK。自分用自分用。



「まぁ流石に縛りすぎても詰まらねぇからな……っと」


 不意に尿意を催してきた。この世界初尿意だ。

 幸いここは冒険者ギルド。よかった、初おしっこが野ションとかにならなくて。


「すみません、トイレ貸して下さい」

「あ、はい。あちらです」

「どーもー」


 あー、漏れる漏れる……って、ちょっとまて、あ、やば、意識したら急にきたぞ。

 あれ、そういや棒が無い場合ってどうやって我慢したらいいの?


 ……マジで漏れそう。

 うぉお、トイレトイレ!! 急げぇ!!!



 ばたんと扉を開けると、数人が男性用小便器で立ちションしていた。うぇ小便くせえ。新宿駅のトイレよりきついアンモニア臭。水洗トイレの開発は急務かもしれん。


「うぉっ!? おい嬢ちゃん、こっち男用トイレだぞ!」

「おっと! すまん間違えた!」


 あらやだ、そういえば今の私は女だったわ。カリーナちゃんうっかり!


「だがもう無理! 漏れるッ! 大を借りるぞ!」

「えちょっ、まぁ漏らすよりはいいか……スライムに気をつけろよー」


 私はそのまま大きい方用のトイレに突撃し、異世界初トイレと相成ったのである。

 ふぃー……あれ、トイレットペーパーないんだけどー?


  * * *


 ふー、スッキリした。

 ついでに大きい方も致しました。


 そして基本的知識さんによれば、異世界のトイレではトイレットペーパーないんだと。

 生活魔法の【洗浄】で何とかしろってさ。魔力切れがなければトイレットペーパーが切れる事も無いのはありがたいね。


 あと、マジで底の方でスライム君がうにょうにょしてたの!


 そして私のトイレの結果、スライム君がめっちゃ怒ってた。

 スライム君はスカベンジャースライムとかいう品種らしく、さらには男性用・女性用で別々に調教されたトイレ用スライムらしい。

 理由は基本的知識さんにはなかったので不明……嗜好の違いだろうか。うーん、奥が深い。いや、スライムの業が深い?



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