引き時と、悪化していく状況


地面がぶち砕ける、瓦礫が撒き上がる

この世ならざる負荷が全身を襲い

常軌を逸した速度に身を委ねる。


極限まで引き伸ばされた時間感覚

吸血種の、恐るべき動体視力を以てしても

視界の端に捉えるのがせいぜいという程に


ボクの踏み込みは早く

振り抜いた爪は暴風を引き連れ

無慈悲に、一切の容赦も猶予もなく

フレデリックの胴体を消し飛ばした。


「ふ、フレデリッ——」


目の前に広がる衝撃的な光景、それは

戦い慣れていない者の足を止めるには

充分に余りある威力を孕んだモノだった。


ジーンはボクから意識を逸らした

戦いの最中において、特に今は


吸血種同士の全力戦闘においては

その一瞬は、恐ろしく致命的であった。


ボクの、爪の一撃は空間をも切り裂く

隙を晒した獲物がそれを防ぐ道理は無い。


——首が空を飛んだ。


フレデリックもジーンも

逃れようのない死であるが

こと吸血種に限って言えば


その死は単なるダメージに過ぎず

再び戦闘開始の鐘が鳴り響くのは

正しく時間の問題であった。


「——クソがァァーーッ!!」


再生が終わり

立ち上がったフレデリックが

人が変わったように荒れ狂った。


地面を叩き、砕き

破壊を撒き散らして吠える

彼が叫ぶと大地が震える。


「まだだァーーー!戦え……ッ!

僕と戦え!ジェイミーーーッ!」


「ふ、フレデリック……?」


彼のそんな様子を見て

ジーンが恐ろしげな表情を浮かべる

まるで怪物に襲われたかのような顔だ。


そして、復帰後のインターバルは設けない

戦いは、戦いが続く限りは終わらない


「——お望みとあらば幾らでも」


お互いがほぼ同じ条件であるが故に

ボクは間髪入れずに攻撃を仕掛けた。


再び爪を振り抜く

フレデリックは反応出来ない

彼は間合いの調整を間違えて

そのままボクに胴体を切り裂かれた。


「ふ、フレデリック!」


ジーンは戦意を取り戻せずにいる

床にへたり込み、絶望している。


たしかに彼女はただの一般人

戦場に立った事が無い普通の女

しかし、戦いの場に情けは無い


そんな風に

絶望している暇は無い。


ボクはそんな彼女の頭を蹴り砕いた

ゴミのようになって倒れ伏すジーン

戦えないものは、ただ死ぬのみだ。


「——くっ!」


フレデリックが復活した

やはり再生力は相当に高いらしい

ともすれば、ボクに匹敵するやも。


彼は飛んだ


辺り一帯に衝撃波を生み出し

迎撃の構えを取ってぶっ飛んでくる彼

その目は、憎悪と復讐に燃えている。


真っ青な鬼火

生とし生ける者全てを喰らい

塵の一片たりとも残さぬ業火


良いね、その目は良い

そんな風に激情に身を委ねて

襲いかかってくる奴は久しぶりだ


闘争心が沸き立つ

百年ぶりに戦いが楽しいと思う

静かな殺意が身体の表面を走る。


「——規定線紅」


飛び掛ってくるフレデリックは

から突き上げるソレを

避けることが出来なかった。


「なっ——!?」


突貫の勢いを全て殺され

フレデリックは地面と固定された

頑丈になった身体が仇となった!


千切れ飛ぶのであれば再生が出来た

しかし、固定されてしまえば……!


ボクは脚力をもって空中へと離脱し

動くことの出来ないフレデリックを


遥か上空から

この身を弾として地上を爆撃した。


——途端


ひび割れ、隆起する大地

砕け散る岩石に混じって四肢が

フレデリックの全身が千切れ飛んだ。


視界の端に

頭部の再生を終えたジーンが

メラメラと燃える戦意を瞳に宿し

こちらに殺気を放っているのを捉えた。


ボクは


飛び散った岩石の欠片をひとつ

渾身の力を込めて蹴り飛ばした。


精密を極める肉体操作によって

岩石は砕けること無く射出された。


亜音速の壁を打ち破り

暴力そのものとすら呼べる程に

強烈な推進力を誇った岩石は


ガァァン!という凄まじい爆音と

土煙を引き起こしながらも

ジーンの手によって受け止められた。


反応、したのか

この距離で、あの速度のものを

完璧に受け止め切ったと言うのか。


さっきまで戦意を喪失していた彼女が

この短期間で戦線に復帰してくるとは。


この脚で蹴り飛ばした岩石が

受け止められたのを認識した瞬間

ボクは、彼女の目の前に飛んでいた。


「うわヤバッ——」


繰り出された貫手4閃は

容易に彼女の両手足を打ち砕いた。


膝から崩れ落ちるジーン

それによって丁度蹴りやすい位置に

彼女の頭が落ちてくる、ボクは構えて


再びその命を刈り取るべく

鎌足を振り抜こうとして


背筋に薄ら寒いものを感じて

即座に行動を切り替え、飛び退いた。


——瞬間


ボクが居た場所には

暗闇の様な影が通り過ぎた

それは他ならぬフレデリックであり


殺意と怒りを漲らせた

抑えのきかない怪物であった。


「それはさっき見たぞ……ッ!」


フレデリックは、その場から飛び起き

空中に離脱したボクに食らいついた!


予想していたのだ、見ていたのだ

ボクが彼の攻撃を避けるだろう事を

この僅かな攻防で理解し、判断した。


彼はボクを追った


地上を飛び出して

ノータイムでボクを


その判断は実に素早く

ボクは正直に言って度肝を抜かれた

彼の、適応速度に驚愕していた。


しかし


圧倒的な、戦闘経験の差

これまで積み重ねてきた戦いの年月が

ボクに、その一手を打たせたのだッ!


「——規定線紅」


ボクはふたたび、それを利用していた

これまでも何度か使ってきた手だ


地面に血のアンカーを打ち出し

空中での高機動を獲得する技!


ボクは


血のアンカーに身体を委ね

不自然なほど直角に進行方向を変えた


「——なんだと!?」


己の身ひとつで飛び出した彼では

ボクの機動力に着いてこられる訳もなく

この目に、死路を浮かび上がらせた。


ガラ空きの背中を、斜め後ろから見下ろす

彼が身を捩って振り返り、こちらに対して

迎撃の構えを取るまでの時間は、一切無い。


斬撃


迸る白銀の閃光

肉を断ち骨を砕き


本来、頑丈であるはずの肉体を

紙切れ同然に切り裂いて終わらせた。


ボクが向かう着地点には

額に汗を浮かべるジーンが居て

迫り来る敵を打ち落とそうとしている。


これまでの数回の攻防に比べても

来る事が分かっている攻撃であり

彼女の目は、希望に満ちていた。


だからボクは

真っ向からぶつかる事にした

力量を図る、全力をぶつける!


交差する一瞬の会合

そこに、無数のやり取りが生まれる!


爪、弾かれる、すれ違う、着地ッ!

即座に踏み込み、死角から切り込む


躱される、しかし体勢が崩れた

彼女は次の一撃に対応出来ない


畳み掛ける、瞬きの間に何度も

何度も続けて爪を叩き込んでいく


それは肉を削り出し、腕を足を飛ばす

再生が始まる、一瞬だけ動きが鈍る


更に身体を抉り飛ばす

やがてフォローしきれなくなった彼女は

致命的すぎる隙を晒してしまった。


防ぐための腕、まだない!

逃げるための足、存在しない!


——死


細切れに切り刻まれて

ジーンの肉体は吹き飛んでいった。


その時、フレデリックが蘇った。


「負けてたま——」


ボクは言葉の途中で襲いかかった

悪いけど不意打ちは得意なんだよね!


臨戦態勢を整える前の気の緩み

それは容易に命を散らせた。


ボクは全力の殴打を叩き込み


彼は腰から上を、まるで

花びらが開いた様な状態になり

ショッキングな光景を生み出した。


ジーンが飛び飲んできた

本格的に戦いに慣れてきたようだ

当初放っていた恐れはもう何処にも無い。


ボクは思う


いつまでも愚直に飛び込むだけでは芸がない

そろそろやり方を変えてくる頃合いだ、と。


まっすぐ飛び込んでくるジーン

彼女とボクの間にはまだ距離がある。


速度が出切っていない

まだ加速の余地が残されている

彼女自身もそれに気付いているだろう。


——ならば


ボクは足の裏に力を集中させた

肩から腰、腰から膝、膝から足首へと

瞬時に力を伝導させ、指向性を持たせる


踏み込んでくると言うのなら!

こちらは先に足場を奪うのみだ!


地面に亀裂が走った

それは雷のように広がっていき

踏み込むための足場の安定を殺した


ガタガタになって割れる地面

これでは、加速する事が出来ない!


そしてボクは既に

足の裏に溜めた力を余すことなく

突撃のために変換し、飛んでいた!


体勢が崩れたジーンでは

もはや為す術が残されてない。


彼女は、ただ待つしか無かった


迫り来る吸血種が

自分の首を刈っていくのを

ただ黙って待つしか出来なかった。


背後で、フレデリックが

再び意識を覚醒させたのを感じた

そこでボクはとある変化に気が付いた。


彼の、心の奥底に燃えていた

灼熱のような闘争心が、冷えていたのだ。


「ほう……?」


様子の変化に際して

ボクは少しだけ彼を待つ事にした。


「怒りに身を任せてたら勝てないんだ

全力でぶつかるには、まだ足りない

今の僕じゃ、感情が邪魔になってる」


ボソボソと呟かれた言葉は

優れた聴覚でしっかり聞こえていた。


視界の端で、ジーンも復帰していた

頭を押えながらゆらり、と立ち上がる。


しかし彼女らは仕掛けてこない

距離を取ってこちらを警戒している

ここまで積み重ねてきた死の経験が

戦場における一歩を殺したのだ。


こちらから行くでもいいが

そろそろ別の教育もしなくてはな。


「同時に来るといいよ

連携も学ぶべきだろうからね」


フレデリックとジーンは

ボクを前後から挟み込むようにして

徐々に、徐々に、歩みを進めてやって来る。


突撃するのじゃ敵わないと考えたな?

しかし、そのやり方が通用するのは

初撃をボクに気付かせない時だけだ


そうでなければ

返り討ちに合うのはキミらの方だよ。


一歩、また一歩と

間合いは縮まっていく


いずれ、確実に来る接触の時

それが近付くにつれて高まる緊張感


ボクは耳に意識を集中させた

初撃を完璧に捕まえるために

それ以外の機能を一時的に制限する。


聞こえてくる呼吸の音

心臓が鼓動し、脈打つ血流の気配

揺らぎが発生した瞬間にボクは動く。


自分が出せる最高速度

最高の反応を見せてやる。


——そして


ソレの片鱗を捉えた瞬間

ボクの身体は地上の雷光と変異し

ジーンと、フレデリックの両名を


放たれた2発の貫手により

頭が理解するよりも早く突き殺していた。


意識を失い、落下していくふたり

その額には特大の穴が開けられている。


ボクの極限まで研ぎ澄まされた反射速度は

ふたりが持つそれを、容易に追い越した。


「戦闘開始からおよそ3分半

まだまだ戦いは長いよ、ふたりとも

吸血種だからね、体力切れは無いし


ほら!倒れてる場合じゃないよ!

早く修復して、掛かっておいで!」


すっかり気分が高揚したボクは

前のめりに、彼女らを挑発する


未だ再生が終わってない骸に対して

並み居るワクワク感を抑えられない。


まだまだ戦いと呼べるには程遠く

実力差は絶望的なまでに開いているけれど


どうかその闘争心を忘れないでほしい

そっちの方が、相手をしてて楽しいからね。


「……ちくしょう」


「衣服にすら触れないなんて……っ!」


ふたりの額に空いた穴は塞がっている

彼女らはまだ、戦意を失っていない

むしろ時間が経つ事に増大している。


いい兆候だね、成長の兆しと言えるだろう

あとはボクがそれを真っ向から叩き潰して

実力を伸ばしてやろうじゃないか。


「来るがいい」


✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱


「——随分とまた酷い状態だねえ」


戦闘訓練から帰還したジーンらを見て

リンドが引き攣った表情を浮かべている。


「あんた滅茶苦茶やったね?」


ジトッとした視線がリンドから注がれる


「つい興が乗った」


「出たよ」


頭を押えて顔を横に振るリンド


「プライドも、何もかも全部打ち砕かれて

何故生きてるんだろうって気分になったわ


いつかやり返してやる

何回も顔蹴り飛ばしやがって

治るから良いってもんじゃないのよ


絶対に殺してやるわ……」


拳を握り込んで復讐に燃えるジーン

意気込みはいいけど、まだ実力が足りない

その願いが叶えられるのは、当分先の話だ。


「あの時の爪は避けられたはずなんだ

でも反応出来なかった……速度の違い?

肉体性能の差だけでは無い、何かがある


技の練度で、どうこうなる話なのか?

初速の違いはどうやって埋めれば……


そもそも、戦い方のスケールが大き過ぎて

僕自身の発想が、まるで着いてこれてない


考え方次第で変えられるだろうか?

もっと根本的な所から変革しないと……」


フレデリックの方はずっとこの調子で

誰がどう話しかけても反応が返ってこない

完全に自分だけの世界に閉じこもっている。


「なるほど、こりゃ相当だ」


彼女らの変わり果てた姿に

眉を上げて反応を示すリンド。


「じゃあボクちょっと出てくるから

この子達のご飯とかお願いしても良いかな」


「追加で2人分くらい訳ないさね

ま、大したものは作れないけど」


`何処に行くのか`を聞かれない辺りが

ボクに慣れているなって感じがする

十数年も付き合ってれば、そうもなるか。


ではお言葉に甘えて

ボクの用事を済ませに行くか。


「いつ戻ってくるんだい?」


リンドの問いかけにボクは


「帰ってくる時に帰ってくるよ」


軽口で返すのだった。


✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱


真っ暗な街の中を歩く、静かな空気

この時間は人っ子ひとり居ない


だからボクのような者が歩くには

非常に好ましい時間帯であると言える。


怪しいもの、身分を偽っているもの

表沙汰には出来ない者達が横行する

今日みたいな夜は、特にそうだ。


月明かりひとつない真の闇

人々は夜を恐れ、外を出歩かない


人間の叡智で明かりは作り出せるものの

もっと根源的な恐怖は、決して消えない。


そんな中で出歩くのは

ボクのような人ならざる存在か


あるいは——


「はいはいはーい!お待ちどうさま!

情報屋リリィちゃんですよぉ〜〜!


会いたかったっすか!?

私は会いたかったっす!」


待ち合わせ場所に着くなり

突然詰め寄ってきてこの様相

思わず半歩あと退りをしてしまった。


「うんうん、近所迷惑だからね

あとキミちょっと乱暴だよ?

乱れるんだよね服とか髪とか」


抱き締めて来るのは良いんだけど

出来ればもう少し優しくやって貰いたい


「乱暴じゃなきゃ良いんすか?」


「いいけど」


「マジっすか!?初耳っす!」


「前も言った気がするけどね」


とまあ、ボクが出歩いている理由は

このように情報屋リリィと会う為である。


「……さて、じゃあ仕事の話っすけど」


彼女は普段からおちゃらけているが

このように切り替えが凄まじい人間で

纏っている空気が一瞬で変わる特徴がある。


本人に言った事はないけど

ボクは彼女のその瞬間が好きだった。


「えーっと……まず最初の報告は?

国の内情っすね、ヤバいっすよコレ


もうむっちゃくちゃです

何せ大国がひとつ消し飛んだんっす

正気の沙汰じゃねーっすよ、本当に


本当なら即戦争モノなんすけど

あまりにも気の触れた行いに

みんな脅えちゃってましたね


各国の王様もみんな

自国が標的になることを恐れて

ろくな弾劾を行えてないらしいっす


それにそもそも証拠がない

何もかも瓦礫の山にされちゃあ

付け入るための材料が足りないっす


胸糞悪い情勢の話は

一旦この辺にして……っと」


本題に入りましょうと前置きして

彼女はポケットから1枚の紙を取り出し

サクッと目を通して語り始めた。


「死者を生き返らせる研究は

完全に頓挫したらしいっすよ


それに伴って王子様のご遺体が

ついに処理されてしまったっす


これにより王様と王女様は手札を失い

国の未来を背負うはずの世継ぎは

既に操り人形となる事が確定しており

国の将来は暗雲が立ち込める……っす」


「決着が着いてしまったか」


「どうやら完全に勝負ありっすね

もはや現政権は立ち行かないっす」


縋る先を尽く潰してまわられ

最後の頼みの綱でさえ無慈悲に焼き切られた

支えを失った彼らは、地上へ向け堕ちるのみ


「それで、爆発のことは一般に

どのように説明されているんだい?」


顎に手を当てて

やや上を向きながらリリィは言った。


「国で行われていた極秘の研究

それが失敗し、甚大な被害を及ぼした


王様は病気により命に執着し

不死の研究に取り憑かれていた

その研究が今回の事態を引き起こした


と、いう前提条件を作り上げたうえで

今の王政に対する疑問の声を積み上げていき

民衆に対する不安を煽ったみたいっすよ


話の整合性や辻褄合わせは二の次で

話をすり替える事が目的だった


ただでさえ吸血種の事や昨今の爆発事件で

世の中は相当な乱れを見せていましたので

効果は絶大だったみたいっす


今に対する不満と不安は膨らみ

不確定な未来に妄信的な希望を抱く

なんとまあ性格の悪い手法なことか」


1度広がった波紋は取り消せない

掻き消そうとしても別の波紋が生まれるだけ

そうなれば、もう何をしても無駄だ。


……ふむ


「もうボクが介入する隙は無さそうだね

研究成果はボクが保持しているんだし


ここいらが引き時だと判断する

国のゴタゴタに巻き込まれたくはない」


「首を突っ込むだけ突っ込んで

重要な物品を引き抜いてトンズラっすか

随分と美味しい役回りですねジェイミーさん」


「いちおう情報収集は続けてもらうとして

例の、大規模な討伐作戦とやらについて

何か分かったことはあるかい、リリィ?」


他所のことに気を回すのは終わりだ

自身に迫る驚異について取り組むべきだ。


「着々と準備が進んでるらしいですよ

肉体性能の一部を制限できる兵器が

開発されて実戦投入されると聞いたっす」


「……それどんなやつ」


「噂では`光`なのだと聞きましたが

それ以上の事は分かりません」


「もし、それが文字通りの意味なら

避けられないし防げないって事になるね」


どう対処したものかと悩んでいると

リリィがこんな事を口にした。


「先に潰しておいた方が

良いかもしれないっすねコレは」


その言葉を聞いた瞬間にボクは

`まさか`と顔を上げていた。


「……ひょっとして、在処知ってる?」


するとリリィは


「ふふふふ……苦労したんすからねぇ〜?

調べるのに物凄く手間が掛かったんすよぉ


ジェイミーさん死んだら嫌っすからねー

最近、あんまり役立ててませんでしたし

見限られたりしたら怖……と、とにかく


その新兵器がある地点を

情報屋リリィは見事に掴みました」


重要な情報であるが故に

彼女はいつになく答えを溜めている

これはアレだ、ボク待ちってヤツだ。


仕方の無い

あの言葉を口にしてあげよう。


「それで、その場所とは?」


リリィはニヤリと笑い

大袈裟なポーズを取ってこう言った。


「——それは海の上にあるっす」

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