殺戮の地下要塞


チカチカと

古びた蛍光灯の光が

頭上から降り注いでいる。


光源としては頼りないが

この狭っ苦しい通路を照らすだけなら

一応、その役目を果たせてはいる。


その中をボクは


足音を殺し

気配を殺し

呼吸音を最小に抑えて

素早く、そして慎重に走る


立ち止まり

曲がり角の壁に背中を付けて

耳を済まして周囲の気配を探る


が、分からない

音の聞こえ方が悪すぎる


壁も床も天井も

特殊な素材が使われているらしい

やはり、そう簡単には行かないな


ここは人間の施設

地下に存在する吸血殺し共の本拠地

ボクを打ち倒す作戦を立てた人物が

ここの何処かに居るというのだ。


楽は出来そうにない

根気のいる作業になりそうだ。


探知範囲は当てにならない

制限をかけられてしまうのならば

今は経験と勘が頼りになる。


「ふぅー……」


深呼吸をひとつ

拳を握ったり開いたり

自分の腕の調子を確かめる


良好だ


曲がり角を飛び出した

薄明かりに照らされた通路

幾つもの分岐点があるのが見える


敵影は無い


複雑に入り組んでいる

どの道から探すべきかな


まあいい

端から順に潰していこう


……疾走


風が駆け抜けるような

姿すら捉えられぬ超高速


可能な限り姿勢を低くして行われるそれは

およそ自然界の生き物では

到底有り得ない挙動である


ほとんど自動的に身体は動く

ボクが集中しているのは視覚のみ


その目に敵が写った瞬間

確実にする為に


その時、話し声が耳に届いた

極めて近いところからだ。


範囲が狭いとはいえ

ある程度は機能するらしい

壁沿いに設けられた扉の向こう側から

人間の話し声が、3つほど聞こえてくる。


情報を得るならば

現地の人間を利用するに限る

多少は絞り込めるかもしれないな


ボクは周囲の警戒を最優先にしつつ

部屋の中の声に耳を澄ませた。


『……それで、全滅したってのは

やっぱり本当の話だったのか』


『ああ、さっきアイザに聞いた』


『なんてこった

それじゃあ襲撃は失敗か』


『いいや、それがどうやら

逆に奇襲をかけられたらしいんだ』


『なんだと!?それじゃあ

内通者でも居るってのか?』


『あるいは敵がよっぽど

情報戦に強いか、ですね』


『……それは考えたくないぜ

まだ内通者の線のがマシだ』


『なあ、本当に俺たちは

あの吸血種に勝てるのか?』


『レオ、そういうことはね

考えない方が良いんですよ』


『……だな、じゃあ俺はそろそろ行くわ』


『アイザに呼ばれてるんでしたっけ?

彼はたしか相当機嫌が悪いはずですけど』


『有難い情報どうも助かるよ

……はぁ、気が滅入るぜまったく』


部屋から出てくる

ボクは咄嗟に距離を取った

具体的には曲がり角の手前まで


そこから壁を遮蔽物にして

男が部屋から出てくるのを待つ


扉が空いた

赤い髪の男が出てきた


扉が閉まる

男がボクのいる方向とは

反対の方に向かって歩き出した


瞬間


ボクの身体は弾丸となって

獲物に忍び寄る蛇のような静けさで

男の背後に駆け寄った。


気配は悟らせない

まずボクは後ろから

男の喉を握りつぶした


「——っ!?」


異変に気が付いた時にはもう遅い

男は既に声を上げることが出来ない


ボクはそのまま男の頚椎を捻り砕いた

断末魔の叫びは起こらない


ひたすら無音のまま

この男は生涯を終えた。


その時


『ああ、そういえば

まだ用事があるんでした』


そんな声と共に

部屋の扉が再び開き始めた


ボクは死体となった男を

ゆっくりその場に寝かせて

間髪入れずに前へ踏み込んだ


「レオ、この間の件ですが——」


扉の向こう側から現れた

眼鏡をかけた男が


そこから先の言葉を

発することは永遠に無かった


ボクはそいつを補足した瞬間

その頭蓋に指をかけて握り砕き


そのまま首を

押し出すようにして

完膚無きまでにへし折った。


首が直角に曲がり

天井を見つめる虚ろな瞳

そこにもう光は存在しない。


ボクは眼鏡の男の死体を

素早くこちらに引き込み

音を立てないように床に寝かせた


『……ジーン、どうした?』


もう一人


まだ部屋の中に残っている男が

異変が起きている事に勘づき始めた。


ボクは咄嗟に地面を蹴り

反対側の壁に着地するように飛んだ


そして足が壁に触れた瞬間

ボクの姿は煙のように掻き消え

開いたままの扉を一瞬で潜り抜けた。


事前に音を聞いていたので

部屋の構造及び立ち位置は把握している


まっすぐ

標的に飛び込む


「——な」



ボクは驚く男の喉に向かって

拳を叩き込み、気管を破壊した


これではもう声を出すどころか

呼吸すらまともに出来まい

もはや助かる道は無い


この時点で彼の死は確定した

それを治療できる技術は存在しないし

人間の生命力では生き延びる事は不可能だ。


「——っ!」


だが勇敢にもその男は

腰からナイフを抜いた

あれは対吸血種用の武器だろう

その身に受けるにはリスクが高い


しかし


壁を反動にして

部屋に飛び込んだボクの方が

彼がそのナイフを振るよりも早かった


素早く男の背後に周り

武器を持った腕を抑え込み

そのまま関節を捻り壊し

一蹴りで男の両膝を砕く


力なく床に倒れていく男

ボクはそれを尻目に部屋を飛び出し


廊下で右、左と視線を動かし

他に誰かが居ないことを確認


並行して

床に倒れているふたつの死体を

脇に抱えて再び部屋の中に戻った。


そして


無様に床に倒れている

死にゆく男の耳元でこう言った


「ボクの質問に答えたなら

命は助けてやると約束しよう

無論、そこに倒れてる二人も含めてね」


男の目が見開かれた

そこに倒れている2人には

目立った外傷を与えていないので


パッと見ではまだ

生きているように見えるのだ


少なくとも

この男から見える範囲では


ボクは男の反応を見て

同意したものだと判断

そして質問を投げかけた


「君たちがアイザと呼んでいた人物

それは吸血狩りの部隊を編成した者か?」


ゆっくりと首が縦に振られた

その顔は苦悶に歪んでいる

呼吸が出来ないのだから当然か。


「ではその人物に関する事を

何でもいい、頭の中に思い浮かべろ」


その言葉から一拍置いて

ボクは男の首筋に噛み付いた

そして全身に脈動している血液を

1秒と掛けずに吸い尽くした。


途端

脳内に駆け巡る

見知らぬ光景の数々


アイザという人物に関する

この男が保有する記憶が

ボクに流れ込んできたのだ


吸血種相手にするのと違って

本来、人間の血を吸ったところで

こんな事は起こりえないのだが


さっきしたように

その人間が死の間際に

思い浮かべてた記憶程度を

追体験することはできるのだ


精度はあまり高くないうえ

見られるかどうかは運頼り

おまけに探れる範囲もあやふやで

時系列もバラバラで判別が難しい


なんとも不都合だらけの抜け道だが

こと今回に限って言えば有効だった。


あとは同様の手段で

何人かから情報を引き出すのみ


一度に得られる情報の精度が低いのなら

確信を持つに至るまで何度も繰り返して

穴埋めを図っていくに限る。


まったく

地道な作業だね。


✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱



それからボクは


幾つかの廊下を超え

また、多くの部屋を通り抜けて

道中で障害となった人間を排除し

共通の質問をしてから血を吸っていった。


やがて


8人目からの吸血を終えたボクは

口元の端から垂れる血液を

親指の腹で拭い取りながら呟いた


「——見つけた」


ニヤリ、と

目論見が上手くいったことを示す

邪悪な笑みが浮かんでいる。


標的の姿を捉えた


この人間の記憶によると

奴はここから3階下に居るらしい

少なくとも数十分前はそうだった。


アイザと呼ばれる男の姿と共に

壁に掛けられた時計の針が

時刻を示してくれていた。


行ってみる価値は大いにある

ただ問題はそこに至るまでで

今までとは比べ物にならないほど

警戒が厳重であるという点だ。


現時点ではまだ

ボクの侵入は悟られて居ないが

既に11人の命を殺めている


誰かが異変に気がつくのは

恐らく時間の問題だろう。


と、なれば

慎重などとも言ってられないか


多少リスクを負うことになっても

ここは速度をとるべきだ。


時間が経てば経つほど

情報の鮮度は落ちていく

そうなれば無駄なロスが生まれる。


決断したボクは

すぐさま駆け出した


それまでとは比にならないほどの速度で

しかし、確実に隠密性の下がった動きで。


壁をつたう

天井を蹴る

小窓を潜り抜ける


通路を歩いている人間を

通り過ぎざまに殺害する


鍵のかかった鉄の扉を力ずくで開けて

上下に長く続く階段の手すりを飛び越え

そのまま真下に落下していく。


ひとつ


ふたつ


みっつ


ちょうど3層降りた時点で

手を伸ばして壁に爪を突き立て

落下速度を完全に殺し切る


手すりに手をかけて

ヒョイっと通路に舞い戻る


扉の向こう側の音を聞く

相変わらず聞こえが悪いが

目に見える範囲に敵は居なそうだった。


扉には鍵が掛かっていた

内からも外からも開けられない作りだ

対応する鍵が無ければ開かないのだろう。


もっとも——


バキッ!


ボクにそんなのは

全く関係ないんだけど


封鎖されているはずの扉を

力技でこじ開けて通路に出た

一応、扉は閉めておく。


そこは最初に通った階と比べ

何やら物々しい雰囲気がある廊下だった

薄オレンジの電灯の灯りが妙に不気味だ。


さて


ここから奴までの道順は

しっかり頭に入っている

そう遠い場所ではない


ボクは再び加速

全身を光の粒子と成さん勢いで走る


走る


走る


やがてボクは

一本道の通路の奥に設置された

大扉の前で、その足を止めた。


この扉の向こう側に

非常に多くの人間の気配がする

いずれも強者の空気を纏わせている。


カチャカチャと

僅かに耳に届く音が

彼らの武装を物語っている。


この扉の先は

かなり開けた空間が広がっている

内部に居る人間の数も相当多い


……ここいらでそろそろ

手段の変更を行うべきだな


スピード勝負だ

一瞬で事を終わらせてやる

全力を尽くして殲滅してやる


ボクは

爪を構えた


そして

渾身の力を込めて抜爪

目の前の大扉を切り裂いた


この世のものとは思えない

裂音が鳴り響き、ちょうどボク1人分

通れるだけのが生まれた


同時に!


ボクは遥か後方に飛び退き

着地と同時に踏み切った!


生み出される強大なエネルギー

それは莫大な推進力をもたらし

ボクを超高速の世界へと誘う


………だが、


まだ足りない


ボクが目指しているのは

こんなものでは無い!


——2度目


ボクの足は

急速に流れ出した景色の中で

もう一度地面を蹴っていた。


足の裏、足首、ふくらはぎ

膝、太もも、腰、力を伝導する

全身の骨と筋肉をひとつにして


生まれた更なるエネルギーを

丸ごと地面に叩き付けて

その反動をこの身に受ける!


歪む視界

何全倍にも加速された意識

吸血種が持てる最高の動体視力


それが負ける

認識が追いつけなくなるほどの


超越的な速度で、ボクは

扉の向こう側に飛び込んだ!


コンマ数秒後

6つの首を切断した


上下左右

あらゆる方向に人間がいる

全身を完全武装させた兵士達だ


胴体を切断されても

頭蓋を打ち砕かれたとしても


認識できない

認識できない


彼らは己の死すら理解できない

人間の反応速度では到底足りやしない


切断した首が落ちるより早く

血飛沫が空中に舞うより早く

ボクは次の獲物を切り裂いている


現象を追い越す

死という結果だけを与えては

次へ次へと標的を変えていく


切り裂いた、切り裂いた

切り裂いた、切り裂いた、切り裂いた


誰一人として

状況を把握することなく


やがて


最初に殺害した兵士が

ようやく、その首がずり落ちて

切断面から血飛沫を上げ始めた頃


その命を失った体が

重力に逆らえなくなり

地面に倒れ伏したその時には


ボクは


この広大な部屋の中にいた人間

その全てを、殺し尽くしていた。


地面に着地した

勢いを抑えきれずに

床がほんの少し凹んだ


………全滅だ


何人殺したかも分からない

数十人では済まないはずだ


返り血は浴びなかったし

爪が汚れる事も無かった


血液が付着出来ないほどの速度で

彼らを殺害したのだ。


かなり派手にやったが

ボクとしては後悔はない

ここは思いきる必要があったんだ。


さあ


さっさと終わらせに行こう

そこの通路をぬけた先の部屋に

ボクの探している男はいるのだから。



辺り一帯からは、濃厚な血の匂いが

ひたすらに漂ってくるのだった………。


✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱


「——さっきの音はなにごとだ!」


通路を走っていると

執務室から男が飛び出してきた

血を吸った男の記憶にいた顔だ


見つけた

奴がアイザという男だ。


ここから奴までは一本道

隠れる場所も待ち伏せる場所もない


ならば!


「………む、誰だ貴様ッ!」


壁、天井、そして床!


軌道を複雑に変えながら

ボクは空間中を跳ねた!


「吸血種か——ッ!」


男は長さの違うナイフを2本

腰から抜き放って構えた


跳ね回りながら

確実に接近してくるボクを

やつの両目は完全に捉えていた


目が合う

それで悟った


この方法ではダメだ!


ボクは咄嗟に方向転換

天井を蹴って真下に落下

地面に着地して真っ直ぐ飛び込んだ


「シッ——!」


ナイフが振られる

予備動作のまったくない一撃

とても人間とは思えないスピード


ボクは!

やつの間合いに入る寸前で

再び方向転換を行った!


「——なに?」


後方に宙返りを行う

体が宙に舞う

浮遊感を味わう


さっきまでボクが居た場所に

六筋の閃光が走っていた


ボクはそのまま

天井に足の裏をつけて

膝から力を伝えた


アイザは

ボクのその姿を見て

次に取ろうとしている行動を予測


構えを変えて

防御の姿勢を取った

背中に回された左手は

防御後の迎撃に使う気だろう


天井から跳躍する直前

ボクは血の力を発動した


体が射出される

アイザが武器を構える


爪を振りかぶってみせる

奴がそれに迎撃の一撃を合わせる


………今!


血の力は既に起動している

目に見えぬほど細い糸のような線が

実は壁に打ち込まれていた。


それは

どれだけ細くとも

吸血種の持つ強大な血の力


故に

強度は十分である


壁に埋め込んだアンカーとしての

役割を果たすだけであれば……!


振りかぶった爪はブラフ!

攻撃に見せかけただけだ!


その真意は

引き込むことにある

壁に打ち込んだ血のアンカー


それをまるで

鎖を引き込むように


振り下ろす腕の力を

そのまま利用して——!


グンッ、と

ボクの体が

不自然なほど直角に曲がった


「ッ!?」


動揺が伝わってくる


ボクは引き込んだ勢いのまま

アンカーを打ち込んだ壁に着地し

その勢いを丸ごと転換


今度は前方へ飛んだ

それはすなわちアイザの背後

ボクは文字通り、奴の裏をかいた!


アイザが振り向く

だが、もう間に合わない


吸血種相手に隙を見せたなら

それは絶対不動の敗北を意味する!


昼間の地下要塞

殺戮の本拠地にて振られた


無慈悲な爪の一撃にて

奴は四肢を切り飛ばされ

ボトッ、と地面に墜落した。


頭を踏み付けながら

ボクはこう言った


「死ぬのは怖いだろう?

だったら質問に答えるんだ


——人間達がボクを殺そうとしている

その本当の理由は、いったいなんだ?」


「……くたばれ………アバズレが」


「そうか」


ボクは


彼の頭を踏み付ける足に

ほんの少しだけ力を込めた


そして


何かが砕ける感触が

足の裏に返ってきた


「ならばその血に聞くだけだ」


本人が答えなくとも

血は教えてくれる


無意味な問答をする気は

ボクには無かった……。


✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱ ✱✱✱✱


翌日、街ではこんな噂が立っていた


「今朝、兵隊さんから聞いたんだけどよ

なんでも吸血殺しの本拠地が

襲撃されたらしいってんだぜ」


どうやら誰か、口の軽い人物が

情報を漏らしてしまったらしい


その話は街の噂好き達の手によって

瞬く間に拡散されていった。


口を滑らせた者にとっては

それだけ衝撃的な事件だったのだろう

なにせ本拠地が襲撃されたのだから


それも、ボクを殺す作戦を

企てていた者が、だ

内部の者たちの恐怖は計り知れない。


ついうっかり

という気持ちも分からなくは無い

恐らくは精神的に限界だったのだろう。


さて


当のボク本人はと言うと

そんな噂の中をくぐり抜けて

噴水のある広場に来ていた


子供がはしゃいでいる

大人たちが談笑している


昨日の残虐な出来事など

知らないという顔で


ボクは公園のベンチに腰掛けて

その光景をしばし眺めていた。


なんてことは無い

ただの街の住人の一人だ

何処からどう見ても不自然ではない。


パッと見では分からない

ボクが吸血種であることも


そして

いる事も。


『随分と派手にやったっすね

行動が早くて思い切りがいい

私としては関わってて面白いですよ』


軽薄な女の声が聞こえてきた

それはボクに向けてのものだった。


ここから見える範囲に

その声の持ち主は居ない


ボクの耳の事を知っていて

探知範囲のギリギリから

語りかけてきているのだ。


『頼まれてた情報を仕入れました

私もあんたに負けず劣らず優秀っすよ


えーと……待っててくださいね

今正確にお伝えしますんで……』


ガサガサと

紙束の音が聞こえる


彼女は情報屋リリィだ

今回ボクが事前に潰した襲撃計画

その話を持ち込んだのも彼女だった。


さらに言えば

秘匿の限りを尽くされている

吸血殺しの本拠地の場所を


ボクに教えたのも

リリィの仕業だった。


ボクが最も信頼するふたりの人間


ひとりはリンド

そしてふたりめは彼女

情報屋リリィであった。


『あー!ありましたありました

紙束の砂漠から見つけ出しました!


えーっと調査をご依頼されていた


`今回の作戦を指揮した人物に

直接命令を下した者を調べろ`


という話でしたが

ものの見事に突き止めたっすよ

どうぞ私のことを誇って下さい!』


基地内でボクが

アイザから得た情報は

大して多くはなかった


血の記憶を覗いたところで

元々あのやり方での精度は劣悪を極める

大抵まともな答えは得られない。


だからボクは

事前に彼女に依頼をしておいた


ほんの僅かだけでも得た情報を

補完するための手を打っていた


『えーっとっすね

驚かないで聞いてくださいよ

どうも今回の件の黒幕っていうのが


——この国の王女様っぽいんすよね』


「……やはり」


『驚いたっすか!?

どうすかビックリでしょう!?


いやー苦労したんすからね

今度たっぷり労って下さいよ!』


「そうか……あの時見たのは

女王の顔だったのか……」


新たに一歩

前に前進した気がするのだった。

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