執事「お嬢様ァッ! 尻から毛がはみ出しておりますッ!」〜妖怪の世界は力が全てなので、とりあえず学校の奴等を全員シメると決めたジジイとロリ〜
第27話 変態“尻目”、田んぼの妖怪“泥田坊”、布団の妖“暮露暮露団”
第27話 変態“尻目”、田んぼの妖怪“泥田坊”、布団の妖“暮露暮露団”
それから数日間に渡り、ヨドミたちによる無所属狩りは続いた。ヨシノリくんの引き寄せ体質のお陰だろうか、ことはトントン拍子で進んでいく。
「田んぼ返せー!!!」
「田んぼなんて盗っとらんわい!」
地中より飛び出して来た一つ目の化け物――“泥田坊”にヨドミのチョップが炸裂する。
*
「ボロボロトン〜」
「そう来る事はわかっとったで、布団の怪異――“
継ぎ接ぎだらけの布団が起き上がり、ヨシノリくんへと覆い被さろうとする所をポンのきん○まが弾き落とす。
*
木枯らし荒ぶ夜道を四足歩行で後ろ向きに歩いてくる男がある。よく見るとその男は着物の裾をたくし上げ、露わになった尻の間から巨大な目を光らせている様ではないか。
「この変態がー! カンチョー!!」
「ねべらっパァ!!!」
特に何をして来るでも無かった妖怪“尻目”に、ヨドミのカンチョーが食い込んだ。大きな目をバッテンにした尻目は、つぶらな瞳を真っ赤にしてよたよたと夜の町に逃げ出していった。
*
……そんなヨドミの快進撃を眺め、陰ながら歯ぎしりをする三人衆が居た。
河童と小豆洗い、枕返しの三人は、ここ数日間、藪の中からのヨドミたちの動向を追っていたのである。
「くっそぉお! ヨドミの泣きっ面が見れると思っとったのにどうなっとるんや!」
「いい加減ヨドミの実力を認める時かもしれないシャカね……今のヨドミは飛ぶ鳥を落とす勢いで町に名を轟かせているジャラ。こうなれば奴の靴でも舐めて『狐組』に入れてもらう方が得策シャカ」
「……ぅぉ……」
「馬鹿野郎小豆洗い! そんな惨めな真似して勝ち取った栄光、何が嬉しいやボケナス!」
「でも、カッパくん」
不安な顔をする子どもジジイと枕返し。だが河童はくすくすと不敵に笑い始めたのである。
「まだ慌てる時やないで……耳貸せや小豆洗い、枕返し」
二人にそっと耳打ちした河童。すると小豆洗いの表情は意地悪く歪んで、眼の下に濃い影を作るのだった。
「その話しが本当なら、まだわしらは天に見放されとらんて事ジャラね……シャッシャッシャッ」
「せやろ、ワイもこの話しをまさかの『覚組』若頭、ナンバーツーの“土蜘蛛”くんから持ち掛けられた時は、膝から崩れ落ちて涙を流したもんや……神は居ったんやなって、カッパッパ」
「……ん……!」
「これなら確実にヨドミを潰せるっちゅうてなぁ……カパパ、カッパッパ!」
*
木枯らしの飛ぶ秋の風。街路樹並んだ庭園で、小川に掛かった飛び石をヨシノリくんが飛び越える。ヨドミと大五郎は奥のベンチに腰掛け温かい茶をすすり、豆狸は尻尾を振って周囲を散策していた。
「ん、なんや~また
豆狸が奥まった松の木の下で松ぼっくりを蹴っ飛ばすと、近くの藪がガザゴソと動き始める。しかしそこから聞こえた声は知ったものであった様で、ポンの眉毛は珍妙に曲がった。
「豆狸くん……ワイや、聞こえてるか!?」
「この大阪弁……なんや河童かいな、小豆洗いと枕返しも居てるやんか。僕は別にキミらに恨みなんか無いけど、姉さんは別やん。こんな所で密会してんのバレたら僕またボコボコにされてまうやんか」
早々と河童との会話を終わらせてようとした赤いジャケットに、枕返しの長い腕が縋り付く。
「なっ、なんやねんな」
「豆狸くん……見損なったで。なんやねんなボコボコにされてまうって、すっかり従順な狸ですがな! 泣く子も黙る舎弟頭の豆狸は何処に行ってしまったんや!」
「誰がペットやて? 言葉が過ぎるで河童」
豆狸が妖力を解放し、河童をギロリと睨み付けた。
「そんなこと言いに来たんかいな。僕はもう『狐組』の一員や。……それにっ、姉さんと居んのも案外悪くないんよ」
河童は豆狸を恐れて動けなくなったが、また彼の腕を掴んで来たのは別の
「待つジャラ豆狸くん! わしらの話しを聞いて欲しいんだシャカ、これは豆狸くんが復権する好機でもあるんだシャキ!」
「なんやて……ここまで落ちぶれた僕がまた『覚組』のナンバースリーに返り咲けるっちゅう事かいな……でもそんなうまい話ある訳ない」
その時、豆狸は自分のきん○まをたくし寄せる河童の熱い涙を肌に感じて目の色を変える。
「豆狸くん……! こりゃあ土蜘蛛くんから提案された謀略なんや!」
「嘘やろ、土蜘蛛くんからやって? 姉さんに敗北した時、僕は『覚組』に見放された筈やろ!」
「そんな事無いジャラ、だからこそ土蜘蛛くんがわしらに声を掛けて来たシャカ。豆狸くんを指名したのも土蜘蛛くんシャカよ?」
「……っ」
「それにワイらに任せられた役目は難しいものでも無いんや……決められた時間にとある場所にヨドミを連れて行くだけ、それだけの事で『狐組』は終わり、豆狸くんもワイらもまた前の……いいや、きっと前以上のポストで『覚組』に迎え入れられるって訳や」
「姉さんを、ハメるって事かいな……」
「卒業も近いジャラから。その時にどの勢力に属し、どれだけの地位を得ていたかで、今後の待遇や中学校での扱いも大きく変わるシャカ。言わばわしら妖怪にとっての内申点みたいなものジャラね」
「豆狸くんはまだ三年生やからまだ卒業は先やけど、ここで確固たる地位を築いておけば、来年からの『豆狸組』発足の際に必ず有利になる筈や……な? どやろか?」
顎に手をやり俯いていった豆狸は、程無くして顔を上げていった……
「『豆狸組』か……んひ、んっひひひ……ひぃやぁはぁははははっ!! そんなん決まってるやん!」
醜く歪み、涎を垂らした破顔で豆狸はげらげらと笑った。
「僕はより強くて盤石な方に着くだけや~、妖怪なんてみんなそんなもやろ〜! ひぃやはははは、これでキツネの姉さんもおしまいや〜っ」
見事な変わり身をしてみせた豆狸に加わり、『無意味三人衆』もまた怪しい笑み浮かべていくのであった。
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