第14話 舎弟一号
『ぜ、全部燃やし尽くすって……っ! なんて無茶苦茶いいはる姉さんや! 直情的にそんな事してどないなんねん!』
「うるさいのじゃぁあ!! 燃やすっつったら燃やすのじゃあ! お化け諸共全て
『ここ、この世界からは出られ言うてんのに、火なんて放ったら姉さんは火に巻かれるだけやで? そこんところわかってんのかいな、ええっ?!』
「じゃから言うとろうがぁあ……」
『え――――』
ヨドミの上空に完成されていた蒼き超大な火の玉が、闇を照らして煌々と光を解き放ち――空へと、闇夜に浮かんだ豆狸の顔面に向けて打ち上げられていた。
「
『ちょちょちょちょ!! ウソやろ姉さんそんなん普通出来るとは思わへんやろ!! てかなんでそんなにキレてんねん、半狂乱やんそんなの! 待て待て待て待って待ってや、火の玉止めてや! わかったから、出したるから、ここからなんにもせんと出したるから……!』
「――駄目じゃあァァァ、お化けなんかと一秒でも一緒にいられるかァァァ!!!!」
『ちょ、待……ぁ――――』
闇夜に打ち上げられた炎は月へと届く前に、そこに幻影の天井でもあったか、弾けて炎を飛散させた。そして豆狸の悲鳴と共に、薄明かりの世界は曇天の屋上へと立ち返っていく――
「あぢゃぢゃ!! あぢぢぢぢ!! あっヂャヂャヂャ!!」
どういう訳か、そこで火だるまになって転がっている豆狸に気付いたヨドミと大五郎。向こうの方では『無意味三人衆』が指を咥えて蒼白になっているのも見える。
「アヂヂヂヂ!! なんで僕がこんな目に合わないかんねん!! ヒィィ、ヒイイイッ!!」
何やら下腹部を抑えてのたうち回っている豆狸。ようやく鎮火したかと思えば、すぐに起き上がって腹の下の方にふーふーと息を吹き掛けている。
「なんで姉さんあんなごっつい炎扱えんねん……もう嫌や、僕もう熱いのは嫌や〜! 僕の、僕のきん○まが真っ赤っ赤になってしも〜た〜っ!」
わんわん泣き始めた豆狸の下腹部――つまり陰のう……つまりつまり、きん○まが、火傷で真っ赤に腫れ上がっているのをヨドミは見た。
すると次にはわらわらと、廃屋にいた妖怪たちがおっかなびっくり豆狸のきん○まから出て来たのである。
絶句しているヨドミは、正気を疑う様な面持ちで震えた指先をそちらに向け始めた。
「おい爺……もしや、もしや儂らがさっきまで彷徨い歩いとった世界が……っ」
「左様で御座いましょう。豆狸とはその巨大なきん○まを变化させて家屋などを模倣すると、そういった逸話も残っております」
ヨドミの悲鳴が空をつんざいていった。バッチィバッチィと、今度のたうち回っているのはヨドミの方であった。
「もう許したってくださいな! なんでも、僕姉さんの為ならなんでもしますがな!」
「ほう……儂をきったないきん○まなんぞに包みあげおってよく言うのぉ……そうじゃろぉ“
「堪忍してや〜っ!! ポンはもう姉さんの言う通りにしますぅ、僕は火ぃが何よりも苦手なんや〜っ」
ペタリと平伏してしまった豆狸を、尖らせた口元で不愉快そうに見下ろしたヨドミ。
――そんな光景をまじまじ見やり、河童たちは息を呑んで後退っていく。
「ウソやろ。なんでやねん……なんでヨドミなんかが豆狸くんを倒してまうカッパ!」
「これは何かの間違いジャラ! でないとヨドミが『覚組』のナンバースリー、舎弟頭の豆狸くんをボコボコにするなんてありえないジャラ!」
「……っ!」
「くそっ! 調子に乗るなッパよ、ヨドミ! 覚えていやがれー!!」
手本の様な捨て台詞を吐いて、三人衆はドタバタと屋上を降りていくのだった。
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