着脱式と聞いて
そうざ
I Heard it's Detachable
半同棲中のカノジョの生殖器が着脱式と聞いても、ふーん、としか思わなかったのだが、私の生殖器を持っておくように、と言われたのは面食らった。
邪魔になるし、汚したり傷付けたり失くしたりでもしたら面倒なので断ったが、聞き入れてくれない。だったら銀行の貸し金庫にでも仕舞っておけば良いだろうと提案したが、俺が携帯しなければ意味がないと言う。俺は渋々承諾した。
因みに、人に預けてしまったら用を足す時に不便はないのかと素朴な疑問が湧いたが、預けるのは飽く迄も生殖器であって排泄器ではないから全く問題ない、との事だった。
俺は、信頼出来る先輩に相談をした。ああだこうだと愚痴っていたら、何なら与っておいてやろうかと言われ、うーん、と考えていると、今度は、物は相談だがと前置きをされ、ちょっとだけ貸してくれないかと頼まれた。先輩夫婦は倦怠期真っ只中らしい。最終的には、うちの奴も着脱式だから暫く交換してみないかと誘われた。流石に断った。
会議中、背広の内ポケットで携帯電話が震えた。議論の途中だったので無視をしたが、やがて胸元に違和感を覚えた。内ポケットを探った所、背広の内側や下のワイシャツがぐしょぐしょになっていた。液体はズボンの方まで滴り、裾から垂れそうな勢いだった。携帯電話と一緒に所持してはいけない事を知った。
人数合わせで誘われた飲み会での事。俺は、酔った勢いでカノジョの生殖器を見せびらかしてしまった。男性陣は色めき立ったが、女性陣は赤らめた顔を背けた。自分も同じような物を身に付けている癖に、女というのはよく解らない。
その中の一人が俺に興味を持ったようだった。飲み会の後、俺はその女と飲み直す事にした。参考までに女心という奴を教えて貰いたいと思っただけだ。
女の推理に拠れば、カノジョは俺に浮気をさせない為に自分の生殖器を持たせたに決まっている、嫌でもカノジョの存在を意識してしまうから、らしい。本当にそんな事で浮気が防げるのか、と反論すると、試してみたら、と切り返された。どうやって試すんだ、と問うと、こうやってよ、とテーブルの下に誘導された俺の掌は女の股間に辿り着いた。そこには異物が差し込まれていた。着脱式の生殖器を持つ男から、用を足す時以外はずっとこれを挿入しておくように命令されていると言う。俺は、そんな男に従う必要はないと迫った。退店後の行き先が決まった。
男の生殖器は腹が立つくらい立派で、疲れを知らずに臨戦態勢を保っていた。俺は、女からそれを引き抜き、行為が終わるまでカノジョの生殖器の隣に並べておく事にした。互いのパートナーの生殖器を目の前にしながら互いの生殖器を擦り合わせるのは、溜まらなく興奮するシチュエーションだった。
翌日、昨夜はどうして連絡が取れなかったのか、とカノジョに問い詰められたが、友達と盛り上がっていて着信に気付かなかった、と適当な嘘を吐くと、意外にもカノジョはすんなりと納得の表情を示した。
それからと言うもの、俺の浮気に拍車が掛かった。俺は枕元にカノジョの生殖器を置き、それを眺めながら情事に耽るという倒錯した興奮に溺れて行った。
或る夜、行為が終わり、そそくさと帰り支度をしている時だった。ベッドサイドに目をやると、薄暗い照明の下、素朴な塑像のように鎮座するカノジョの生殖器が妙に艶めいて見えた。手に取ると、微かに震えていた。そして、煌めく一筋の雫が小陰唇を伝って涙のように滴った。
その瞬間、罪悪感が火花となって全身に降り注いだ。俺は泣き濡れる生殖器を優しく抱え、カノジョの部屋へ急いだ。
俺は漸く覚った。何てしおらしい、いじらしい女だ。カノジョは俺に操を立てるつもりで己の生殖器を託したのだ。それなのに俺は、何も出来ない生殖器の前で夜毎カノジョの一途な想いを蹂躙していた。
カノジョを抱き締める事しか頭になかった俺は、呼び鈴を押すのももどかしく、合鍵でドアを開け放った。ワンルームのベッドに横たわった男女の視線が素早く俺を捉えた。
男の武器は一つだが、女の武器は二つ、と改めて気付かされた。握り締めた生殖器が
着脱式と聞いて そうざ @so-za
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます