第9話 聖女の故郷

 ギャモーは早速馬車から降りて村へ行こうとするが、それを私が引きとめる。


「待って下さい。先に私が家に行ってきて歓迎の準備をします。」


「別に気を遣わなくても良いんだぞ?」


「ダメです。私の大事なお客さんですから。」


 お母さんに結婚相手を紹介するのだから、歓迎の準備は絶対必要よ。


「そう言うなら待ってるが……。」


「では、全員村に入るワケにもいきませんので、我々はここで野営の準備をしております。護衛にこの3名の騎士をお連れ下さい。」


 そう言って隊長さんが、3人の騎士を連れてきてくれた。


「よろしくお願いしますね?」


「「「はっ。」」」


「ギャモーはここで待ってて下さい。準備が出来次第呼びますので。」


「了解だ。」



 私は護衛の騎士3人を連れ、村へと入っていく。


 村人の反応は相変わらずだった。


 魔女軍が攻めて来た…なんて言っている人もいる。


 後でブッ叩いてやろう。


 そう思っていたら、護衛の騎士が剣の柄に手を掛けたので慌てて止める。


 そして……


「魔女め。とうとう本性を現したわね! 魔女軍なんて連れて来ちゃって。」


 この子は実家の三軒隣に住むメリル。


 いつも率先して私をいじめてくるそれなりに美人な女の子だ。


 毎回ブッ叩いてやるのだが、まだ理解出来ないらしい。


「聖女様に向かって何という事を……。覚悟!」


「ひっ!?」


「ダメよ。」


 すると騎士は大人しくなる。


「メリル? そろそろいじめるのはやめて欲しいんですけど。」


「ふん! アンタのせいで村中の女が迷惑してるのよ。」


 そう言われても……。


「私は特に何もしていませんが。」


「嘘よ! アンタが男共を誘惑するせいで、村の女はみーんなっ! 恋人が出来てもアンタの代用品として見られるのよ!」


「誘惑なんてしていませんよ?」


「そうやって被害者ぶってんのがムカつくっていつも言ってんの! それに聖女って何なのかも全然わかんないし!」


 そう言ってメリルは私の頬を打とうと手を振り上げる。


 はぁ……。面倒ね。





 ゴンッ!



 頭にコブが出来た女の子が道に倒れている。


 これは良くない。犯罪に巻き込まれたら大変。


「この子を…すぐそこの青い屋根の家に置いてきて下さい。」


「はっ。」


 私は気絶したメリルを運んでおくよう騎士にお願いした。


 その家には好色なお爺さんが住んでおり、寝ている女の子相手に何をするか分かったものではないが……道に捨て置くよりは良いだろうと配慮した。


「何をやっているの!? そこの家に女の子を放り込むなんて、やっぱり魔女だったのね!」


 そう言って怒っているのは、これまたメリルと一緒になって良く私をいじめるサリアだ。


 この子もそこそこの美人。


「やっぱりって……私が何をしても結局、魔女だって言うじゃないですか。」


「あなたが毎回魔女みたいな事をするからでしょ!」


 私は何もしていない。魔物や危害を加えて来る村人をブッ叩いているだけだ。


「何騒いでんだ?」


 横から現れたのはサリアの恋人。デール。


「アリエ……魔女じゃないか。」


 サリアが彼をキッと睨みつけると、少し慌てた様子を見せる。


 そして、デールが私を見る目には熱がこもっていた。


「またそうやって! 魅了の魔法を使ったわね!」


 そんな魔法使えませんけど……。


「さっきから聞いていれば貴様ら! 聖女様は魔女なんかではない!!」


 そう言って騎士達は剣を抜き放つ。


「「ヒィっ!!」」


「ダメよ。」


 騎士達はすぐに斬りかかる癖でもあるのかしら?


「もういじめるのはやめて下さいね。」


「いじめてるんじゃないわ! あなたがマトモな人間になれるように教えてるのよ! それに聖女って何なのよ!」


 ムカっ。なんて言い草でしょう。





 ゴンッ!



 頭にコブが出来た女の子が道に倒れている。


 こんな所で寝ていたら危ないわ。


「ア、アリエンナ……その、良かったら一緒に……」





 ゴンッ!



「あの……何故この男を叩いたのですか?」


 騎士が戸惑いがちに聞いてきた。


「この男は私の下着を何度も盗んでいったからです。」


「そうだったのですか。」


 成程。聖女様の下着を盗んでしまうのは仕方ない。

 確かに。村娘達も美人だったが、聖女様と比べればただの煩い小娘だもんな。

 今回の報酬はいらないから、聖女様の下着を貰えないもんかな。


 騎士達が何やらボソボソと小声で話していた。


「どうかしましたか?」


「「「いえっ! 何でもありません!」」」


「では、女の子を青い屋根の家に、男の子はその隣の赤い屋根の家に置いてきて下さい。」


「「「はっ。」」」


 いくら嫌いな人だとは言え、やっぱり道端に倒れた人を置いていくのは良くないしね。


 ちなみに赤い屋根の家には変なお爺さんが住んでいて、男の子が三度の飯よりも好きらしい。


 詳しい事は良くわかりませんけど。


 そうして実家へ向かっていると……


「ねえ、聖女ってのになったんでしょ? 聖女が何か知らないけど、魔女のあんたは昔から変な力で治療出来るんだから治療してよ。」


 そこそこ美人な村娘に話しかけられる。


 確かこの子は……リズだったわね。


 この子とはあまり話した事が無いので、若干うろ覚えだ。


 先程からのストレスもあり、つい……


「誰がんな事すっかバーカ!」


 と汚い言葉を発してしまった。


 反省しないと……。


 彼女は少し頭が良くないようなので治療として頭を叩いてやり、気絶した彼女を移動させ、股を開いた状態で木の下に座らせておいた。


 どうやら性女だったようなので、彼女の白いワンピースにでっかく『性女』と書いておく事も忘れない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る