第10話 聖女の母
やっと実家に着いた。
この村は相変わらず私を迫害する酷い所だ。
余計な時間を取られちゃったじゃない。
「ただいま。」
「あら、アリエンナお帰りなさい。最近見ないと思ってたけど、どこにお出掛けしてたの?」
どうやらお母さんは一人娘を全く心配していないようだった。
少しだけ悲しい。
「村人が酷い事ばかりするから、遠くへ出掛けてたよ。」
「そうなのね。そういう時は加減なしで叩いても良いって言ってるじゃない。アリエンナは優しい子だから本気で人を叩けないのね。」
お母さん。それ毎回言ってるけど、本気なの?
私だって流石に分かってるよ。
本気でブッ叩いたら村人がミンチになるって……。
「それはちょっと……。」
「全く、優しいのね。」
お母さんは結構ヒドいと思う。
「あら? そこの方たちは?」
そう言えば、全く事情を説明していない事に気付いた。
「この人たちは、ドゥーから来た護衛の騎士。私、ドゥーに行って聖女になったの。」
「「「よろしくお願いします!」」」
「わざわざ娘の為にありがとうございます。」
騎士達はお母さんにデレデレしている。私にもデレデレしていたし、結構だらしないのかしら?
「考えてみれば、回復魔法も使える事だし聖女よね。」
村人は聖女を知らない様子だったが、お母さんは知っているようだ。
「お母さんは聖女を知ってるの?」
「勿論。お母さんね、この村の出身じゃないのよ。」
それは知らなかった。
「昔、ストレンジ帝国でSSSランク冒険者やってたから、色々な情報を知ってるの。」
SSSランク? 何だか凄そう。
「帝国のSSSランクですか?」
騎士の一人が驚いている。
「SSSランクに女性は一人しかいなかった筈……。もしかして、絶対暴力の魔女!?」
なにそれ? 超格好良い。
「懐かしいわ。結構前の話なのに知っているのね?」
「大ファンです! 握手して下さい!」
残りの騎士も追従して俺も俺もと握手を求めている。
流石お母さん。聖女の私よりもチヤホヤされて……。
あっ。身長の高い騎士がどさくさに紛れてお母さんのお尻触った。
「そう言えば、一番大事なこと言ってなかった。」
「どうしたの?」
「お母さん。私、結婚する。」
「あらっ! おめでとう。良かったじゃない!」
「うん。それで、相手を連れてきてるんだけど、歓迎の準備をしてから呼ぶ事にしてるの。」
「任せなさい。お母さんが美味しいものいっぱい作ってあげるからね! じゃあひと狩り行って来るわ。」
「待って! 私も。」
そう言ってお母さんと森へ出掛ける。
森にはたくさんの美味しい魔物が住んでいるのだ。
騎士達もついてきちゃったけど大丈夫かしら?
深淵の森最深部にて
「俺ら本当に大丈夫なのか……?」
「俺達、逆に邪魔になってるよな。」
「なあ。何で俺ら護衛対象に守られてんだ?」
「どうかしました? ちゃんと一か所にまとまってないと危ないですよ?」
次の瞬間、グレーターデーモンの爪が一人の騎士の頬をかすめる。
「ひぃっ!!」
「ほらっ。危ないですよ。えい!」
ドギャッ!!
危なかった。せっかく護衛に来てくれた騎士が怪我してしまうところだったわ。
「「「は?」」」
そんなに驚いちゃって……。
グレーターデーモンがすっ飛んでいくのがそんなに珍しいのかしら?
「ギャモーに買ってもらった杖のお蔭で、前よりも楽チンですね。」
「あの……聖女様。」
「はい?」
「俺らって役に立ってませんよね?」
「まぁそうですね。でも、護衛の練習だと思えば……。」
ドォォォォォン!!
お母さんが、グレータードラゴンの頭をデコピンで吹っ飛ばしていた。
「やっぱり、お母さんの方がまだまだ強いなぁ……。」
「グレータードラゴンってSSSランクだろ? それがデコピンで……?」
「絶対暴力の魔女は特級魔法士なのに、直接殴ったり蹴ったりの方が強いらしい。」
「あぁ。SSSランクより上が無いからSSSランクなだけって話は聞いた事がある。」
「ところで、さっきから言ってる……そのランク? って何ですか?」
私は騎士達の話をあまり理解出来ていなかった。
「ドゥーの冒険者にはあまり馴染みが無いと思うんですけど、大体どこの国でも共通して魔物や冒険者をランクによって分けているんです。」
知らなかった。説明してくれて助かるわ。
「通常の冒険者や魔物はA~Fまでに分類されます。この中で一番強いのがAですね。それ以上はS、SS、SSSと強くなっていきます。」
あれ? もしかしてお母さんって一番強い?
「ちなみにSSSランクは絶対暴力の魔女以外に5人いますが……。」
「他にもいるんですね。」
「いますが……絶対暴力の魔女 対 残り5人で戦って、魔女の方が勝ってしまったそうです。」
想像以上に凄かった。
「あら? 私の昔話?」
「もう食材は良いの?」
「バッチリよ!」
いつの間にか集めきっていたみたい。
「お母さんはSSSランクだったんでしょ?」
「そうね。」
「私はどのくらい?」
お母さんは顎に指を当て考えている。
「そうねぇ。普通のSSSランクより少し強いくらいかな。」
「そうなんだ。」
「普通のSSSランクって何だ?」
「そんな言い方初めて聞いたぞ。」
「SSSランクが既に普通じゃねぇよな。」
騎士達は何やら小声で相談している。
この森の環境が合わないのかもしれないわ。
※合う人類はほぼいません
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