第7話 聖女の魔法?
買い物帰りのスーパーゴブリンを倒したという事で、クエスト達成回数が一気に50も増えた。加えて通常のゴブリンも243体倒しているので達成回数は48回増え、合計98回も達成したとみなされたのだ。
また、クエストで2400ドゥル、スーパーゴブリン討伐で5000ドゥルと、稼ぎも相当なものだった。
「案外簡単にドゥーになれそうですね。」
私達はクエストも終わり、ギャモーの家で過ごしている。
「普通はこうも簡単にいかねぇよ。」
「そうですか?」
ギャモーが言うならそうなのかもしれない。
「冒険者ってのは、数年かけてドゥーになるか、そうなる前に死ぬってのが大半だ。」
「結構大変な仕事なんですね。」
「あぁ。今日みたいに強ぇ奴とバッタリ遭遇したら、余程の強者でない限りくたばっちまう。」
スーパーゴブリンはそんなに強くなかったと思うけど。
「という事は……もしかして私って強いですか?」
「買い物帰りの奴を一撃で倒しちまうとなれば、この街の英雄ドゥードゥルドゥーよりも強いだろうなぁ。」
変な名前。親の顔が見てみたい。
きっと変な名前を付けられ……グレてしまった結果暴力に走り、たまたま運よく英雄に祭り上げられてしまったんだわ。
なんて可哀想なのかしら。
「あいつは今までスーパーゴブリン、タイガーゴブリン、姫ゴブリンなんて大物を数々倒してきた英雄なんだ。」
本当に強いのかしら? 全部ゴブリンばっかりじゃない。
「全部ゴブ……」
「全部ゴブリンばかりだが、本当に強いんだぞ?」
凄い……何で私の言おうとした事が分かったんだろう。
きっと心が通じているのね。
ブッ叩かなくても心が通じたのは、お母さん以外だと初めてかもしれない……。
※それが普通です
「そんな街の英雄でも、流石に一撃では倒しちゃいねぇ。それなりに苦労して討伐してんだ。」
「そうなんですか……。私の住んでいた村付近の森では、あれより強い魔物ばかり住んでいましたので。」
「お前は一体どこの魔境に住んでたんだ?」
失礼な。魔境というのは、エンシェントドラゴンとかヴァンパイアロードとか魔王みたいな強力な魔物が居る場所だって、田舎者の私でも分かるんだから!
※これらは全て伝説レベルの超強力な魔物ばかりです
「魔境じゃないですよ。深淵の森から1㎞も離れていない普通の村に住んでいました。」
するとギャモーは驚き、言い返してきた。
「それは完全に魔境だ! 英雄レベルの戦士か一級魔法士以外は探索すら出来ない死の森だろうが!」
死の森? お母さんが良く遊びに連れていってくれましたけど、特に危なくはなかった気がするんだけど……
「はぁ……。昔から良く遊びに行っていましたけど、そんなに危険じゃなかったですよ。」
「それはお前が異常なだけだ。」
まぁ。なんて事を言うんでしょう。
「異常じゃないです。私のお母さんだって良く遊びに行っています。」
ギャモーは更に驚きの表情を見せる。
あっ、鼻毛出てる。
「お前の母親は何者なんだ?」
「良くいる普通の美人のお母さんです。」
「普通のお母さんは深淵の森には遊びに行かないぞ。本当に分かってんのか? ちなみにお前とどっちが美人だ?」
まさか……ギャモーったらお母さん狙い?
友達のママなんてダメ。
「多分同じくらいでしょうか。」
「お前レベルの美人がそんじょそこらに居てたまるか!」
褒められてる? チヤホヤの一環かしら?
あっ。
これはもしかして……遠まわしのプロポーズ?
どうしよう。まだ出会ったばかりだし……。
でも、プロポーズされてしまった以上……友達のままなんてダメ。
「私達ってまだ会ってから二日目ですよ?」
「? まあ、そうだな。」
ギャモーは出会ってからの期間は気にしないタイプの人みたいね。
「それなら、一度お母さんに会って下さい。」
「うん? 良いぞ。俺も会ってみたかったしな。」
親との顔合わせに躊躇しないなんて……
ギャモーったらそんなに私と結婚したかったのね。
※全然違います
「お母さんに会うまでは、節度を持ったお付き合いをしましょう。」
「あ? ああ……まあ、そうだな。」
やっぱり紳士ね。私達ってこんなに相性が良かったんだ。心が通じるって素晴らしいわ。
「明日からも張り切ってクエストに行きますよ!」
「お、おう……。」
(アリエンナの奴……。急に元気になりやがって、一体どうしたってんだ?)
そうして私達は連日のようにゴブリン討伐に明け暮れた。姫ゴブリンも倒せたお蔭で、随分と懐に余裕がある。
「これだけお金があれば旅をしても安心ですね。」
「深淵の森付近となれば、結構距離があるからなぁ。ちなみにどうやってここまで来たんだ?」
「赤い大きな猪の魔物に乗ってきました。」
「……それ、猪突猛進か?」
「? 私は猪突猛進じゃありませんけど。」
「そうじゃなくて、猪突猛進って名前の魔物だ。スーパーゴブリンの比じゃないくらいに強い筈なんだが……。」
「魔法を使ったら友達になってくれました。」
ギャモーはへえ……と感心したように呟いている。
「テイムの魔法が使えたのか?」
「違いますよ。『みんな友達』を使ったんです。」
「何だそれ?」
「ブッ叩いて回復魔法を使うと友達になるんです。そういう魔法ですよ。」
ギャモーの顔が引き攣っている。どうしたの?
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