ある男の子の独白
俺にはずっと昔から好きな子がいる。
金色の髪はサラサラと、まるで絹のような触り心地。小顔で目がクリッと大きく、鼻筋はスッと通り、形の良い唇は幼くして色気を漂わせる。
天使が地上に降臨したならば、きっとこんな感じなのだろうと思わせる程。そんな可愛らしいでは表現し足りないような女の子だった。
その子は成長するにつれて、より一層美しさを増していく。
昨日よりも今日。今日よりも明日。その美しさは冗談抜きで日に日に磨きがかかる。
恐らく近い世代の男は全員、例外抜きで彼女に恋をしていただろう。
俺はその子、アリエンナと仲が良かった。
彼女が恋しくて……愛しくて……どうしようもなくて……。でも幼い俺はどう表現していいか分からず……
「結婚してやるよ。お前なんてどうせ誰も貰ってくれないだろ?」
なんて言って彼女を怒らせてしまった。
幼かった俺の、しょうもない照れ隠し。次の瞬間には……
棒で叩かれた。
軽い擦り傷程度の怪我ではあったが、彼女を怒らせてしまったというショックで、数日間口を開く事が出来なかった。
彼女に嫌われてしまったかもしれない。
たったそれだけの事で、口がきけなくなる程のショックを受けてしまったのだ。
どれだけ彼女を恋しいと思っていたのか、最悪な形で自覚してしまった。
俺が口を聞けなかった間、アリエンナは女の子達にいじめられ、仕返しに全員を棒で叩いていたらしい。
村中の女の子がアリエンナに嫉妬していたのは分かっていた。が甘く見ていたのだろう。
回復魔法で怪我を治してやったのをキッカケに、彼女は魔女だと言われるようになる。
大人の男の目にも幼いアリエンナは魅力的に映っていたようで、それを認めたくない大人の男は彼女から目を逸らし、無視していた。
彼女なりの意地があったのか、アリエンナは村人に一切溶け込もうとする様子はなく、彼女が16歳になる頃には、完全に村八分状態であった。
その美貌は、女神と評される程に美しい彼女の母親さえも凌ぎ、その暴力は村中の男の誰よりも圧倒的で、村中全ての男を魅了し、村中全ての女を嫉妬に駆り立てる。
女達はこぞって彼女を迫害し、男達は彼女に襲い掛かったり下着を盗んだりする日々。
かく言う俺も、彼女の下着を10枚持っている。3回は発見され叩かれたが……。
ある日を境に、彼女の姿を見かける事は無くなってしまった。
きっとアリエンナはウンザリしていたに違いない。
こんな事なら、彼女をどこかへ連れ去ってしまえば良かった。
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