第2話ごめん、ありがとう
「あ、あれって…」
「誰だよ…俺わかんねえぞ、目ぇ悪いから」
「まぁ元々猫は目が悪いからね」
「誰かわかるのか?」
「たぶん、、ね。ちょっとまってて」
「ふわぁ…寝とくか」
石の階段を降りていく
サッサッ砂浜だから走りにくい
急いで行きたいのに
あの人がこちらを振り向いた
驚いたような顔をした、実際驚いたんだろうけど
ばしゃばしゃ!
「ちょ、ちょっと!美玖奈さん!!」
海の方へ逃げていく
「ま、まって!」
すごく、泣いている
海の塩水か涙かはわからないけどもうぐちゃぐちゃな顔である
「好きにさせて!」
「うっ…」
そう言われたら何も…
いや、ダメだほっといたら!
バシャ!
美玖奈さんがわざと顔を海に沈めるような動きをする。
死ぬ気なのか
そんなにひどいことをしたかな
ほんとごめんなさい
バシャバシャ!
「石束くん!離して!」
「ダメです、そんなことしちゃ!」
「うわああん!」
美玖奈さんのこんな泣いた顔見たことない
もう何がなんだかわからない
とりあえず陸にあげよう
引きずるようにして陸に引き上げた
美玖奈さんはまだ泣いている
「うう…うぅ」
やっと落ち着いてきた
僕の上着を美玖奈さんに掛ける
美玖奈さんの肩に手をかざす
こういう時のためのこの魔法である
「すぅ…」
すーー……
悲しみを少し吸える魔法
せいぜい少しだから意味があるかは分からないけど
沈黙が続く
波の音がよく聞こえる
「…ありがとう…」
「いや、いえ…」
「ごめん、ほんとしんどく、なっちゃって」
「僕のせいですか…」
「どうだろう…ね、けど全部君ではないかな」
ちょっとは含まれているようだ
しばらく沈黙が続く。しばらく一緒にいてあげよう
「ねえ、石束くんって、魔法使いでしょ?」
「え!」
驚いた本当に、なぜ知っているんだろう
「え、え…」
いつ知られて…
お店で片付けた時とか…
猫と話した時とか…か?
「えっと」
「なんでほんとに魔法使いだったみたいな顔してるの?」
あ、ああ安心した
「いつも私を慰めてくれるし」
たしかに、たまにバーに来る時泣いている時があるから慰めてたりはするけど
「しんどい時いつも駆けつけてくれるし」
今も…たしかに駆けつけてる…みたいになっている、たまたまなんだけど
「今日なんて、急に悲しさ?が石束くんといたらなくなったし」
魔法を使ったからだ
効果あったんだ
「実際は急に悲しみはなくなったりはしないんだろうけどなんだか楽になったんだ」
あれ、魔法が役に立った…?ってこと…?
今まで役に立ったことがなかったから、嬉しい、、な
「今日はありがとう、またね」
「え、濡れたまま帰るんですか」
「ん?そう、なるね着替えとかないし」
どうしよう。ダメだろうか、だけど心配だし
「あの!」
「どうしたの?」
美玖奈さんが月と重なって美しい
「えっと!あのー…
僕の家来ませんか!
」
「うん、それがいいね、少しお邪魔します」
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