第25話 エピローグ その2 酒盛り
現在???上空
「ぬおおぉぉぉぉ!破!」
「ホホホ。4分51秒。実戦レベルには遠いですが、まあ、いいとしておきますか。」
ゼニスが術を破ったことに満足した冥王は、両腕を交差させる。
「冥王貴様…それは冥王秘術か。」
40年前は冥王の魔力が枯渇したために勝利したが、此度はどうなるかーー
「以前は負けてしまいましたが、今だとどうですかねえ。
狂・戯・乱・盗・淫・弄・悦・惑…」
冥王が詠唱を始める。
「仁・義・礼・智・信・孝・悌・忠…」
ゼニスも負けじと詠唱を始める。
「冥王秘術…」
「聖法秘術…」
互いの秘術の発動を宣言しようとした瞬間、大声が響き渡る。
「こんな夜中に何をしている!『バイデント』!」
二人の間に二股の矛が投げ込まれる。
声の主を見ると、二人はふっと力がぬけたような気分になる。
「ホホホ。獣王サン、お騒がせしてますねえ。」
「獣王の郷まで来ておったのか。迷惑かけたのー。」
獣王の郷。先の大戦において獣王が示した武威と獣王の『真の王』としての戴冠、そして『獣人族独立戦争』により、魔族から独立した国である。
「やはり貴様らか。楽しそうなことをしているではないか!しかし、子供たちが起きてしまうからやめてもらおうか。」
とは言え、元々が村に等しい状態だったので、王が子供の眠りを気にかけるような微笑ましさだが。
「ホホホ。ワタシとしたコトが申し訳ありませんねえ。」
そんな様子に冥王は破顔する。
「獣王、すまんかったのー。」
ゼニスも子供を持ち出されると引かざるを得ない。
「勝負を止めた詫びにどうだ?一杯飲まないか?」
「それはいいのー。」
「ホホホ。アナタの一杯は一樽でしょう…まあ、付き合ってあげますよ。」
冥王の脳裏に以前付き合わされたときの記憶が蘇る。
「ガハハ!大賢者、今、何をやっているんだ?貴様の気配だけは時々感じていたのだが。」
どうやら幽体離脱を行い飛び回っていたのを感じ取られていたようだ。獣人の気配を読む力は侮れない。
獣王がゼニスの気配を感じていたことを魔王軍に知らせていないようだ。とするならば、次の大戦で獣王たちと矛を交えることはないだろう。
「それはのー。…………。」
ゼニスは話す。教師生活のこと、在学中は放置していたこと。幽体離脱して赴いた先で見た卒業生たちの様子。
気がつけば、彼方此方で酒盛りが始まっている。
冥王と大賢者が来たことを獣人たちは喜んでいるのだ。
獣人たちは冥王に深い恩を感じており、大賢者に対しては強者に対する畏敬の念を。
このため、二人が来たことを喜んでいるのだ。
「大賢者、お前…卒業後の方が生徒のことをよく見ているではないか!」
「ホホホ。普通は逆だと思うのですがねえ。」
そのように二人に言われ、ゼニスは笑うのであった。
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