第20話 バイデント
「『戴冠』だと…!我ら『真なる王』に獣王を加える…だと?」
ポセイドンは驚愕に目を見開く。
『真なる王』とは、各種族の長という枠組みを超え、世界の運営を担う存在である。
神々・天界を統べる『神王』
海界を統べる『海王』
魔族を統べる『魔王』
ドラゴン・竜人を統べる『龍王』
エルフ・妖精を統べる『妖精王』
そして冥界を統べる『冥王』
『龍王』については、二柱--光の龍王と闇の龍王が--存在し、相争うことが宿命付けられている。
この七柱の王の『八番目』として、獣王を加えることを冥王はゼウスたちに求めているのだ。
「そうだ。そもそも、獣人たちの祖は地火水風雷の神々…その王たる獣王は『真なる王』に相応しい…というのが兄者の意見だ。」
ゼウスはポセイドンに告げる。
「ならば…我ら以外の『真なる王』を集め、獣王の『戴冠』の是非を諮ろうではないか!」
ポセイドンはゼウスにそう答えるのであった…。
◇◆◇
「流石冥王。あれだけの光の力の奔流を受けて生きているとは…!」
ゼニスは冥王に畏敬の念を抱く。力を出し切り術を受け切ってなお立ち続ける姿に。
「ホホホ。とは言え限界ですねえ。アナタに敬意を表しトドメを刺させてあげますよ。」
冥王が防御結界を解く。冥王は限界なのだろう。顔から生気が消えていく。
「偉大なる冥界の王に対し、礼を尽くさせて貰おう。天地を貫く大いなる神槍よ、『オーディンの槍』!」
「ホホホ。獣王サン、後は任せました…。」
--『あの痴れ者』『世界に厄災を振り撒く者』…アナタなら……
◇◆◇
(ベレスよ…。獣王ベレスよ…。)
目の前の勇者たちは動きを止め、自分も瞬き一つできない。声の主が止めているのだろう。
(何者だ……?)
(我が主人を救って欲しい…。)
声の主は冥王から貰った二股の矛のようだ。
(主人…冥王か。分かった。)
べレスは答える。ふざけた話し方をするひねくれた奴だが、悪い奴ではない。
(礼を言う…。我が名は『バイデント』。偉大なる神の武具…。)
◇◆◇
目の前のものが動き出す。べレスが上を見上げると、大賢者が冥王に向けて魔法を放つ直前であった。
「させるかあああぁぁぁ!『獣王の矛』よ!偉大なる『バイデント』よ!真なる力を顕し我が盟友を護れ!」
獣王はそう叫び、大賢者と冥王の間に矛を投擲する。
大賢者が放った魔法は矛によって阻まれる。
「何!?『オーディンの槍』が…!」
「獣王サン!それを手放しては…!」
「神器が獣王から離れました!今です!」
地上で聖女の声が響き渡る…。
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