第16話 大賢者とは何か?
「大賢者とは何か?」
太古の大賢者アルネ・サクヌッセンムがゼニスに問う。
初めて冥王と戦った際、ゼニスは冥王に追い詰められ、『冥王秘術』を放たれ戦場に散らんとした瞬間、ゼニスが存在する現在の時空とサクヌッセンムが存在する時空がつながり、異空間へと誘われた。
ゼニスに世界を守るための啓示を授けるのが目的だった。
そして、『冥王の剣』を継承するとともに、この問いを投げかけられた。
「魔法職の頂点にして過去と現在の全てを知り未来を見通す者です!」
ゼニスは人間が使用できるあらゆる魔法を知り、古今のあらゆる知識、星の読み方を身につけ大賢者となった。これまでの修行から見出した大賢者の姿をアルネ・サクヌッセンムに示す。
しかし、太古の大賢者は首を横に振る。
「正解ではあるが間違いでもあるのう。大賢者とは…」
◇◆◇
「大賢者とは『最も愚かなる者、故に全ての者から学び続ける者』!」
--自分で『賢い者』というヤツが賢い訳がないだろう--
時空の繋がりが切れるその瞬間、サクヌッセンムはそう言って笑っていた--
「ホホホ。死を前におかしくなったようですねえ。では死になさい!」
冥王の魔力が周囲に展開される。
「狂・戯・乱・盗・淫・弄・悦・惑……冥王秘術…」
冥王の周囲に展開された魔力が8つの力場を形成する。この力場から闇の波動を照射するのが冥王の秘術。
「仁・義・礼・智・信・孝・悌・忠……」
ゼニスは冥王の詠唱と対になる詠唱を始める。冥王と同じように8つの力場がゼニスの周囲に展開する。その中身は光の魔力。大賢者魔法の神髄だ。
「なんですか、それは?大賢者魔法にそんなモノは…!」
冥王は動揺する。冥王が知る大賢者魔法にこのようなものはない。
「お前から学んだものだ!」
ここで冥王は気づく。8つの力場、魔法の構成。魔力の質は違っても、自らの秘術と全く同じであることを。
「所詮は猿真似!術ごと砕け散りなさい!冥王秘術『八大邪』!」
猿真似がオリジナルに勝てる訳がない--冥王は発動の『宣言』をし8つの力場から闇の波動が放たれる。
「『八大聖』!」
同時に大賢者も発動の『宣言』をし8つの力場から光の波動が放たれる。
光と闇の魔力がぶつかり合う…。
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