第9話 王都騒然
10月12日午前王都会議室。
王都、そして王城は騒然としていた。獣王べレス率いる獣王軍一万が王都へと迫っているというのだ。
魔族の使い魔たちが「魔王が獣王に王国攻略を命じた」と触れ回っていたため、これを捕らえて尋問した。
自白魔法により得られた情報は次の三点。
・魔王の命令が発せられたのは10月1日
・出陣するのは獣王、幹部連たる獣魔将及び獣人族5000人
・他の魔族は参加しない
この情報については、『獣王の郷』を監視している密偵から、
・獣王が9月末に魔王城に向かったこと
・『獣王の郷』の人口構成から、動員兵数は5000前後であること
・獣人族の地位向上を唱える獣王ベレスに反発している魔族が魔王軍上層部に多い
という報告があったため、確実なものとされた。
このため、王国軍上層部は、
・獣人族は魔法に弱いため、魔道士の割合が高い編成にして国境に派遣する
・獣王軍の国境到達は10月20日前後とみて、それまでに国境への派遣を完了する
という方針を立て、国王に上奏し裁可を得た。
この時点で10月4日。
魔王軍との熾烈な戦いを経て、王国は迅速に対応を決定し、実行に移せるようになった。
この時は、誰もがそう思っていたのだ。
10月6日に獣王軍が国境に現れたという報告が届くまでは--
その報告が王都に届いたのは10月10日。
--獣王軍の異常な速さ、そして、何故ここまで報告が遅れる?まさか…
大賢者ゼニスは自身を付け狙う、あの男の影を感じずにはいられなかった…
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