第3話 人はダイエットをどう考え勝ちか
第二章
前章で主張したように、人は自分の都合、立場(要は感情的な要素も含めた「損得勘定」)でモノを言い、正当化してしまう存在です。言い方を換えれば、客観的な理屈で動く生き物では無いのです。ダイエットが上手くいかないのも、そこに原因があります(そういう言われ方自体にムカつくでしょうが)。
で、「はじめに」でも少し触れたように、デブってしまう唯一の理由は、その人が体重を維持する為に最低限必要な以上に食べ過ぎているからです。勿論、その最低限必要な量(カロリーベースで)は、体格や年齢、体質等で大差がありますが、遺伝的な要素はコントロール出来ませんから、そこを幾ら嘆いていても余り意味はありません。問題は、その先のその人の生活の仕方です。活動(現役世代では普通は家事等も含めてほぼほぼイコール労働でしょう)が、肉体的な消耗を伴えば、それに応じて大きくなるでしょうし、ほとんど、動かなければ、極めて少なくなるでしょうが、それ以外の理由は、有り得ません(たとえば、高校の野球部員等は大きなタッパーで「白飯」食べていますが、体格が良い子は居ても、単なるデブはいません)。
「そんな事は無い」と、言いたくなるでしょう。自分の生活の仕方を、従って生き方、欲望を正当化したいからです。無理もありません。それこそは、つまりは個性であり、自分の選んできた自己の存在理由の基本になるからです。この先の展開は次章以降(まとまった形ではありませんが)まで致しますが、本章では、ひとまず棚上げして具体的にダイエットする。或いはしようとする時にどのような考え方、発想をしてしまうのかを、指摘しておきたいと、考えます。
基本、我々は欲望のままに、従って原則的に自由に振る舞う事が許される世界に生きています。その為に金を稼ぐ事が奨励されているとも、言い換える事も可能でしょう。そのような社会(資本主義社会) では、その事が良くも悪くも世間を動かしているはずです。私の個人的な見解では、少なくとも、けして無条件に良い価値観ではないと、感じてはいますが、少なくとも世間の多数派では有るはずです。
欲望には、良いも悪いもないかもしれませんが、我々はそれが許されるか否かを常に考えているはずです。たとえば、自動車を運転している時に、一般道では幾ら「ブッ飛ばしたい」と、思っていても、信号を無視する人はまずいません。つまり、その欲望は「許されない」と、ほとんどの方は認識しているからです。一方で、高速道路ではどうでしょうか。アクセル全開で時速180㎞で突っ走りたいと、考えている方は少数派ではあるでしょうが、存在するでしょう。もっとも、実際はそこまで出さずに流れに乗って運転している方がほとんどです。理由は多様でしょうが…。しかし、中には、実際にそのスピードは「幾ら、速く走れるクルマだとしても、まずいんじゃねぇ」と、つぶやきたくなるようなクルマともしばしば遭遇します。制限速度を厳守して‘いるわけでは無いので「五十歩百歩」「目くそ鼻くそ」の世界ではありますが、つまりは、そのクルマを運転している方の欲望と、その結果生ずるかもしれないリスクのバランスをつけたつもりで走行しているはずです。傍から見れば、危険極まりないと、しても、です。
食欲も同様です。その方の食習慣が普通で常識的であるなら、多少の幅はあっても体重も正常値の範囲に収まるはずです。つまり、デブは過剰な食欲(食習慣)から生まれるのです。誰かの指示命令でそうせざるをえないわけではない以上、当然ながら、その欲望を支えている発想(考え方)に問題があることにならざるを得ないのですが、如何でしょうか。そこを認め無い限りダイエットは上手くいくはずはありません。
それを更に具体的に言えば「私が見つけた魔法を実行しさえすれば、簡単にダイエット出来ます。簡単で時間もかからず、苦しくもなく、今まで通りの生活を変える必要も全くありません」と、囁かれば飛びついてしまうから上手くいかないのです。
結局、自分の欲望は正当な範囲内で「問題は無い」と、考えてしまい、肥満に悩んでいないようにも思える人は何か魔法を知っているに違いない。或いは、日進月歩の世の中なんだから、最新の科学をもってすれば、楽々ダイエットがあるはずだと、認識する事に問題があるのです。
つまり、原因は明々白々、対応対策も既に充分に認識しているにも関わらず、やろうとしないわけですから、ダイエットに成功するはずはありません。自分の心に問題があり、その心は考え方によって出来ていると、捉えるべきではないでしょうか(一種の逃げですが、逆に考え方が心を造っているのかもしれませんし、或いは、両者の相互作用なのかもしれませんがね)。
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