第2話 人はどういうふうに考え勝ちか

 第1章

 人間の思考がどんなものかをあまねく提示出来るほどの能力は、有るはずもありませんが、ある種の独断で整理してみます。

 まずは、公私に区分してみましょう。この場合の「公」は、自分には直接影響が無い事例に対する態度、考え方とします。そうすると当然「私」とは、自分に直接関係する事象が対象となってきます。

 前者は、たとえば、現状では「ロシアによるウクライナ侵攻」が該当します。日本に居ると、地理的、心理的に遠い世界での出来事です。意識高い系の方々には「それじゃー、ダメでしょ。明らかな不正は、それが何であれ自分の事として考えていかない」と、言われてしまうでしょう。確かにそうです。影響が全く無いわけでもありません。しかしながら、縁遠いからこそ、失礼な言い方ですが、何が正しいか、従って何が悪なのかは容易に分かります。「盗っ人にも三分の理」のレベルでみればプーチンの主張にいくばくかの正義が有るのかもしれませんが、だとしても、少なくとも、手段として戦争(特別軍事作戦!)を仕掛ける行為は無条件に「悪」でしょう。

 しかし、それが具体的な、たとえば金銭的な利害関係に無かったとしても、どうでしょうか。具体的にはロシアの庶民を考えて下さい。その多くが巧妙なプロカダンダに騙されているのかもしれませんが、我々のように考えるわけではありません。「ロシアの人々は何でプーチンを支持するんだろう」と、感じるのが普通でしょうが、若干ではありますが「歴史学」をかじった者にとっては、戦前の大日本帝国と日本人も「あんな感じだったからねぇー」と、言いたくなります。つまり、どの国民でも、自国からの都合と論理からの視点で物を考え勝ちなのです(遥かに緩くはなりますが、サッカーの国際試合なんかもそうでしょ)。それとは逆に感情的な部分も含めた利害関係が無ければ無いほど、人は公平公正な判断をする可能性はかなり高くなるのです。

 それに対して、自分に直接関係する事、つまりは私の言う所の「私」の領域となると、途端に冷静に判断材料を集める事すらしないで、都合のよいデータや見解等を拾い集めて、意見なるものを言いがちです。

 例をあげようとすれば、幾らでも捻り出す事は可能でしょうが、ここでは、タバコについて考えてみましょう。

 この文章の最後の方でも触れますが、私は喫煙者です。頭の中では、百害あって一利も無い事は承知しているつもりですが、実際の行動となると止める気は全くありません。その理由を間違い無く「炎上」する事を覚悟して書けば、自分の、大袈裟に言えば生き方に干渉されたくは無いからです。勿論、副流煙等によって周囲の自分以外の人間の健康を害している事等も認識はしていますが、そんな事を言い出したら、世間で人の迷惑をかける行為は山ほどあるはずです。たとえば、通勤途中に限定しても、混み合った電車の乗り降りの際にドアの周辺に立っているにも関わらず、一旦ホームに降ずに人流を妨げて平気な大人、或いは、混雑するバスの車内で会社の同僚の悪口(しばしばイジメに近い)を聞かされてイヤな気分にさせられたりもします。それに較べたら副流煙なんて「屁みたいなもんじゃないの」と、言いたくなります。

 ですが、客観的に言えば、タバコを止めない理由は、要は合理性の無い間抜けな屁理屈です。「屁」でも理屈は理屈かもしれませんが、少なくとも非喫煙者には、自己の健康を害される可能性はかなりあるわけですから少なくとも、「公」の世界で通用する理屈ではあり得ません。

 結局、人間と言う生き物は、客観的に、つまりは自身の感情的なそれも含めて損得勘定を抜きにして「この場合に何が客観的に正しいか」を追求する事は、控えめに言って、余り得意では無い存在なんだと、言う事にならざるを得ません。

 勿論、その得意では無い程度は、状況的に、或いは、個人的な価値観によってかなりの差はあるでしょう。また、無私を貫いてしまえば、おそらくは、社会から孤立した、およそ「クソ面白くもない」理解不能な人間として生きざるを得なくなります。どこをどれだけの正しさで乗りきるのか。悩みは尽きなく、人生とはそんな事の繰り返しなのかもしれません。

 

 

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