第一章 Hacked Device

外れ者

隔離実験場四国において、情報機密上の懸念から、警察と言った国家組織は少数しか存在していない。そのため、犯罪者や不良に対応するため、四国では各エリア周辺における治安維持組織の一種である調停者ストッパーが存在する。

Tier2以上の能力者は、Tier判明後、成績や人格の精査を行われ、調停者へのスカウトが行われる。

勿論Tier2の灰、そしてTier1判定を受けている泰斗も例外ではなかった。


終業式前、学校の授業が短縮され、昼前に帰宅している最中にそれは起こった。


「ASDに通知...泰斗、そっちは?」

「俺の方も来てるな...内容はまあ、、アレだろうな。」

『エリアZn-13において外れ者アウトローの通報あり。付近のメンバーは至急、拘束へ向かってください。』


彼らの学校が存在するエリアZn-11に隣り合うZn13での事件はエリア11の管轄であり、出動要請を受けるやいなや視界上に表示される地図の通報場所ポインターに向けて、走り出すのだった。



調停者ストッパーです!今すぐ武器を捨て、投降してください!」


そう言って、眼前の荒くれ者集団に向けて勧告する。

外れ者になる人間は、TierNoneの能力者、無能力者が多く、ナイフなど武器を携帯していることが多いのだが。


「能力者がなんだってんだ!こっちにゃ銃があるんだ!やっちまえ!」


今回はどこから入手したのかエネルギー拳銃を所持していた。無論、銃刀法違反である。


「だったら実力行使だ!行くぞ。灰!」

「OKだ」


「「拡張戦闘apk、起動!」」


拡張戦闘apk、それは調停者上層部から支給されるシステムであり、凶器や鈍器、時には能力を使用してくる外れアウトローに対して戦闘を有利に進めるために存在する。

起動した瞬間、前方に居る相手が赤くハイライトされ、灰から見た泰斗、泰斗から見た灰が緑色に、それ以外の地面や壁が青色一色、武器やそれになりうるものが黄色くハイライトされた。


その後すぐに、外れ者の1人によって銃が向けられる。それをASDが察知し、弾道予測線を赤色に表示する。それを見て、それぞれ能力による超スピード、肉体の超精密性によって銃弾を回避する。


「なっ...当たらねぇ!」


まさか銃弾をかわされるとは思っていなかったが、リーダー格と思われる男が声を荒らげる。


「悪いけど、捕まえさせてもらうよ」


そう言って、灰は無意識に筋肉を操作し、リーダー格と思われる敵の目前まで迫る。後方の数人はそれを見て逃げようと背を向ける。


「いや、逃さねーよ?」


背を向けた敵のすぐ真後ろまで駆け寄って、能力を使用した電撃を食らわせる泰斗。

電撃を食らった彼らは声をあげることも出来ず、地に伏した。


「チッ...ここまでか...テレポート!」


そう言い残して彼は倒れた仲間ともどもそこから姿を消す。


「なっ...」

「能力...なのか?」

「いや、、数メートルならともかく...ここから逃げ出すほどのテレポートなんて聞いたこと無い...そもそも能力で実現できるのか?」


そう。能力はあくまで『起こりうる可能性の範囲内』でしか発現しない。電子の流れが発生する確率、空気が流れる確率が実現できても、複数人が同時に他の場所で存在するなどという可能性はあり得ないのである。


「量子テレポーテーションじゃないか?」

「まさかそんなわけ...実際あれは大型の機械が必須だし..」

「だよなぁ...」

「考えても仕方ない。報告入れておくよ」


そう言って灰は、「銃の所持を確認、交戦、撃破を行ったが、すんでのところで逃げられた」胸の報告を行う。


「まあ終わったし、今はちょうど昼過ぎ。うどんでも食いに行かないか?」

「良いね。最近行ってなかったし、どこにする?」

「この時間なら...麺族だな」


泰斗の誘いから、二人は、近場のうどん屋へと駆けるのだった。



あとがき

次回はうどん回です。

うどん屋の店名は実在する店で私がおいしい!って思った店の名前をもじってつけてます。

地元の方なら分かるかも?

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