スキルチェック
チャイムが鳴り響く校舎、その教室にに滑り込みで二人が到着する。
「おーお前らおせーなぁ。」
「むしろお前が早いのに驚きだよ…黒縁」
そんな彼らに一番に声をかけたのは黒縁と呼ばれた好青年…といえども髪はボサボサ、シャツは曲がっているといった風貌の友人であった。
「いやぁなんせ今日はスキルチェックなんだぜ?そりゃあ楽しみにするってもんよ!」
「いやお前Noneじゃん」
ランクNone、暴走能力。または無能力。それは志を持ちながらも制御ができない者へ与えられる烙印であり、危険物の証でもあった。
「まあな。だが今回の俺には秘策がある!」
((また始まったよ))
黒縁がこのセリフを言ったのはもう今年に入って4回目。このセリフを吐いては毎年None判定を下されている。
「そもそもお前の能力名って出てるのか?」
「出てないな。順当に行けば臥薪嘗胆とかになるんじゃないか?」
「いやお前そんな努力するタイプじゃねーだろ何でだよ」
灰の問いかけに帰ってきた黒縁の回答に思わず突っ込みを入れる泰斗。
「語感がカッコいいから?まあ真面目に行くなら触らぬ神に祟りなしとか...」
一同絶句する。だからNoneなんだよ。という残酷な突っ込みを二人して最後の良心で抑える。実際言ってもどうにもならないのだから。
「ま、まあ頑張れよ…」
「おう!」
◇
「次、えーっと、天野君ね。タイプはBで、能力は…精密性の上昇と応用の筋力増加。それじゃあ、ブース7に入ってもらいます」
「はい次の子、タイプAの――」
そう言った具合に、個々の能力登録に応じたブースが割り当てられる。
『データベースの照合が完了しました。それでは能力の計測を開始します。』
灰がブースに入るや否や、測定機器によるガイドが表示される。
『右腕を地面から水平の角度に調整してください』
そう表示されて灰が腕を上げると、OKマークが付き、次の指示が出される。
『左腕を23度の角度に調整してください』
このような測定を繰り返すこと数十回、足や頭の角度、腰の角度に至るまで、ほぼすべての関節をチェックされる。
『強化能力の測定に移ります。右側のサンドバッグを殴ってください』
そう表示されたのを確認し、筋肉の最適化を行う。それによって、普段熱エネルギーとして浪費される60~70%のエネルギーを運動エネルギーに転換し、通常の2.5倍から3倍程度の力を出す。
「ってて...やり過ぎた。脱臼した?」
段階をふまずに一気に出しすぎた力に肩が耐えられず脱臼した。
それに気づくと左腕で肩を抑えてはめ込む。ゴリッっと嫌な音を立てて骨は元ある位置に戻った。
「これでよしと」
『測定が完了しました。 精密性:評価10 身体強化率:評価6 制御性:評価6 総合評価:ランクB ブースを退室してください』
(脱臼したのが悪かったかな...)
そう考えながら、ブースの外に出てメガネ型デバイス、ASDから結果をアップロードする。
こうして、2522年度第四回スキルチェックは終了したのであった――
◇
『secondworld online』に登場するASD《additional sense device》の進化版とも言えるミニゴーグル型デバイス。
AR(拡張現実)を進化させたAR(アルカナリアリティ)を常時展開し、HUDの実装、五感の上書きを行う。これによって、装着感0、視界の遮り0を達成し、究極のARデバイスとして名を馳せている。また、VRモードが存在し、ゲーム用途にも使用される。
他者のつけているデバイスは見えないように設定が行われており、お互いの顔も見えるため、装着者同士でゴーグルの存在を意識することはほぼ無い。
2300年代に完成した後、国によって配給が行われ、普及率は国民の95%にまで広まっている。
◇
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