プロローグ
言葉と能力の世界で
まえがき
ちょこちょこ作者の地元愛が見え隠れしてたりします。(うどん、方言etc...)
◇
「それじゃあ、行ってくるよ、父さん!」
そう言って、彼――
「便利だけど、結構調整大変だねぇ...これ。まあ、自分のせいといえば自分のせいなんだけど」
彼の固有能力を使いながら、一人こぼす。そんな耳に声が飛び込んできた。
「よう!カイ!」
声をかけたのは同じマンションに住んでいる幼馴染にしてクラスメイトである
「おお、泰斗。こんな時間なんて珍しいな。寝坊か?」
「まあそんなところだよ。とにかく、俺は急ぐんでお先だ!」
「良いよな。お前の『
「そうか~?お前の『正確無比』も相当に便利そうだけどなぁ」
「まあ便利だけど出力系じゃないからランクが低くなるってのがな...」
◇
異能力
量子力学の応用体系であり、意図的に量子もつれを発生させる技能である。例を挙げるとして、部屋の温度であれば、99.99%の確率で25度,0.01%で10度の確率が存在すれば、0.01%を意図的に引き起こすことができる。
量子もつれ現象の一環である以上、存在し得ない事象――極端には時間の停止などの能力は発現しない。
ここまで聞けば極めて理系的な能力なのだが...
現段階での習得、発動には基本的に文系としての知識――言葉への習熟が必要となる。
なぜかと問えば―――
精神構造を支えてきた信条――ことわざや抱負、四字熟語等が必要になり、それに関連した能力が発現するためである。
◇
「せっかくだし、一緒にいくか?」
「オッケーだよ。」
そう言って彼らは各々の能力を発動する。
泰斗の周りには風の力場が発生し、追い風になり、筋肉、神経に電流が走る。そうして、通常の3倍程度の速度を出す。
一方の灰は能力を発動しても目に見えた変化はない。だがその動きはさながらオリンピック選手、もしくはそれ以上に美しい、いや、奇怪とも言えるフォームで走る。
普通ならバランスを崩して倒れてしまう角度。それでも彼の能力が動きをサポートし、最適化された移動方法を見せる。
極限まで下げられた空気抵抗、一切の無駄のない筋繊維の動きは素の力こそ通常通りでありながらも、異常なまでの速度を叩き出す。
何よりそれを可能にするのは、能力の発現以降全力で身体組織の熟知に努め、能力の制御訓練を怠らなかった努力である。
「それじゃ、競争でもせんか?」
「いいね。ショートカットはありかい?」
「ナシで行こう。速度勝負だ。」
そう言って二人はさらなる加速を見せる。
ここは西暦2522年、四国、香川ブロック、Zn=11エリア。
首都ブロック、東京と似通った気候でありながら、本土と隔離された巨大な実験場。
実験場といえども学校などの公共施設、民家などは概ね外の通り、むしろ発展している程度。
その中にある過去の趣を残しながらも、利便性が増した場所。
そんな世界で、今日も言葉と科学とうどんは交錯するのだ―――
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