第23話 ある女性のお話

 最初に断っておきますがここに書かれる女性は、日本人でも中国人も朝鮮人のどのカテゴリーにも含まれない人物でです。


 ある所に女の子が生まれました。彼女の祖国は多くの少数部族を抱えた国でした。

彼女の父は英雄と呼ばれるほどの人物で世界大戦後のその国を発展させるために尽力を続けました。

 彼女もその父の背を見て育ち「他国に負けない強い国」に自国をするのを理想と考えるようになりました。

 時がたち彼女の父の没後、彼女は自らの部族の人々に担がれ、指導者へと歩む道を選択しました。その理想は、あまりにも高く、短期間に達成できるとは、誰も思えないほどの高い理想でした。

 そして彼女がその理想を掲げて国をまとめようとしていた時に、あることが起きました。軍の反乱です。


 軍人や知識人の中には彼女の「」に不安を持つものが多く存在しました。

 彼女の改革論は理想が高すぎて、国内の部族間での対立のあるこの国では性急に映ったのでしょう。「劇薬は重病人に与えるべきではありません」。


 そして軍事政権という人たちは彼女をその取り巻きから隔離し政治活動をできないようにしました。取り巻きの中に自分たちだけが指導的立場にあればいいと考える人のいる可能性を見て、その勢力から彼女を切り離そうとしたのです。

 

 そして軍事政権が始まり批判も多く見られましたが、おおむね穏健的な対話でのゆっくりとした経済成長路線がとられました。ですが、この行動を彼女は声高に発信し続け、違法であるといい続けました。


 それから月日がたち、その国の土台も、彼女の若かったころに比べ落ち着いてきたため、彼女の30年を超える軟禁生活は終わりを告げました。


 周りの人も彼女の考え方が多少でも「に期待しました。その後、彼女が主導する政党が政権与党となり彼女はその指導者になりました。

 彼女の父以来の復権でそれによって彼女の周りの部族の人たちには良い影響がありましたが、ほかの部族は、考え方や彼女のやり方に対して反対の意思を示しました。


 軟禁されていた30年を超える月日は彼女を柔和にゅうわにさせるのではなく、逆に鋭さが増す結果となり、反対部族はこうげきされることになり、これを見た軍部の関係者によって彼女はまた政権の座から追われました。


 そして政権の座から追われた彼女の支持者たちを「民主化推進派」とたたえ、彼女が帰ってきたら、国が良くなるかのごとく書いたニュースが夕方に放送されましたが、部族間の対立を関係修復不能に近い現状にまで追い詰めた張本人が帰ってきて、民主化されることはないでしょう。

 彼女は「遠くの理想を追い続け、足元の現実」が見えていないのです。


 彼女はアウンサンスー・チーさんと呼ばれるビルマ(ミャンマーと言っているのは日本のほかには数か国です) 指導者であり、独裁者でもあります。

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