第5話 胡椒挽き《こしょうひき》

 何か野球の大会で有名になった行動(ポーズ)だが、日本高校野球連盟にほんこうこうやきゅうねんめいは、この行為に対して不快感を示したとあった。

 今の人たちには理解できない感覚であろうが甲子園の春と夏の大会は『高校生の部活動を通しての人間形成』という言葉だお題目おだいもくにある。つまり勝負する相手を侮辱する行為はいけないと言っているのだ。

 何年か前にホームランを打った選手が、3塁コーチャーとハイタッチをして、アウトになったことがある。これは、インプレー中に他者が選手に手を貸す行為が違反に当たるという、高校野球規則にのっとったものだが、今回の行為はもっと悪質である。


 最近ではメジャーでもホームランの後などのパフォーマンスはあるが、あれは、ホームイン後のインプレー中ではない。そしてインプー中でなくとも少なくとも、数年前までは、相手チームを侮辱する行為としてずべき行為とされていた。

 昨年、メジャーで様々なホームラン後のパフォーマンスをされていたのは、実は別の意図があってのものである。

 今年はメジャーリーグのキャンプの様子は流れていたが、昨年のはどうだttだろうか?昨年は3月10日までメジャーは労使交渉ろういしこうしょうに対して、交渉が決裂し、ロックアウトが行われていた。早い話が球団がキャンプ場や球場に入ることを認めず、選手側の要求を『不当に高いもの』としてつっぱねたのだ。

 実はこのようなロックアウトは以前にもあり、その年は、開幕が遅れ、選手の要求した最低年棒保障などが高額であることから、経営者だけでなく、選手側はファンからも白い目で見られ、メジャー人気の低迷につながった。

 その為昨年は、ドラマティックな試合が増えるように、公式球こうしききゅうの規定が緩和されていたり、ホームラン後のパフォーマンスを行うことにより、ベースボール人気の低下を起こさないように選手側、経営側とも様々なパフォーマンスを行っていた。メジャーの中継でも実況、解説が盛り上げていたが、チームによっては、ガラガラなスタジアムも多くみられたのは、そのような背景があっての観客離れもあった。


 元々メジャーは、戴せない手を侮辱する行為にとても厳しい。俺は『不文律ふぶんりつ』としてあったらしい。メジャー帰りの選手が言うには、一方的試合での盗塁や、緊迫した場面でのダブルスチールなどは記録としてカウントされず、相手側の選手だけでなく、審判団や味方選手からも嫌われる。それはアメリカにとって、ベースボールとは『エンターテイメント』であるからだ。真剣勝負をしてお客様を楽しませることによって対価を得ている選手が卑怯ひきょうとみられる行為をすることを嫌う。そういう行為をした選手は、その次の接触プレーなどで『悪意を持った行動に会う』。

 何年か前に日本プロ野球からメジャーに挑戦し開幕2試合目で大けがをした選手がいた。彼自身悪いという考えはなく『チームの一体感を出すための行為』として、ベンチ入りの選手で、あるポーズを流行らせようとしたのだが、その行為が愛©手チームから侮辱に見えたのかもしれない。

 日本にやってきた外国人選手でも、ホームラン後のパフォーマンスは、『メジャーでは絶対にやらない』と言い切っていた。

 野球場はテーマパークであり、野球とは夢のあるプレーでせるものであった。


 最近おこなわれた大会で『胡椒挽き《ペッパーミル》』という行為が流行したが、それは公式戦でないから許された行為であり、その行為を流行させた張本人に対して、同僚から『チーム内で金メダルの話はしないように』という忠告があったそうだ。仮にも国の代表として、相手を侮辱する行為とtられ金な行動をした彼に対て、報復行為ほうふくこういがあっても不思議ではない。仮にも国の代表を破ったメンバーであるので、公式戦とは別のものとして接しろという意味なのだろう。

 

 日本高校野球でもそういう浮かれた行為、敵を作るような行為は『人間形成』というお題目の元批判されている。自分だけがよければ、という行為が認められないからだ。ただでも日本高校野球は高校生の健全な育成という立場をとりながら、入場料をとる、放映権をとる行為をしている。この利権に対しての品の矛先が向かいかね婦負行為に対して、ナイーブになっているのに、そこに水を差す行為はいけないというのだろう。これも既得権粋きとくけんいきの保持のための行為であるとみえる。


 

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