第12話 [マウントの取り合いはやめてほしい]
一体全体、白銀さんはどうしたのだろうか。白銀さんは夏墨の前に立ちはだかった。
「……フユキちゃん? それはどーゆーことなのかなぁ?」
「言った通りですが何か?」
「なんで急に…………あー、そーゆーことねぇ」
夏墨は何を理解しているんだ!? 俺にはさっぱりわからないぜ……。
「お姫様抱っことか壁ドンとかぁ? 羨ま……じゃなくて、その程度?」
「『羨ましい』ですか。はいはい、そうですか。ではあなたはされたことないんですね、可愛そうに」
「はぁ〜? そっちこそ一緒に寝たこともあーんしたこともないくせに!」
「ぐぬっ……。いいえ、それは問題ないですね。手は打つつもりです」
「へぇ……面白い。その勝負受けて立っちゃうよ〜ん」
なぜ、彼女たちはマウントの取り合いをしているのだろうか。しかもその中心人物は俺という。
謎に謎がかけられ、謎の二乗になっているが大丈夫か? 大丈夫じゃない、問題だ。
俺もクラスメイトも、何が何だかわからないまま一時間目が近づいてきた。
「あ♪ ねぇねぇ透ぅ〜、あたし教科書忘れちゃったから見せて〜」
「ダメです夏墨さん。私も忘れたので見せてもらうので」
再び、夏墨と白銀さんの間(俺)でピリッとした空気が流れ始めた。
挟まれる俺の気持ちをわかってほしい。友人である悠人に目で助けてと訴えてみたが、「わっはっはっは!!」と笑っていた。
あの野郎は後で頭かち割る。
「大体さぁ、フユキさんは右の人に見せてもらったらいんじゃない?」
「隣の方も忘れているし、私はよく知らない異性と机をくっつけて教科書を見せてもらうのはあまり好まないので」
「そんなぁ……」
ああ、白銀さんの右の席に座るクラスメイトAの心にダイレクトアタック! あいつはぁ……いい奴だったよ。多分。
「むぅー……。透はどーなの!?」
「お、俺? いや、別に……忘れたなら見せるけど……」
「透くんがそういうならば仕方ないですね。三人で見ましょう。よろしくお願いします、透くん」
俺に二人が机を寄せ、どちらもぴったりと肩をつけてきていた。甘い匂いが鼻をくすぐり、心臓の鼓動が早くなっている。
一限目の先生も一瞬この状況に突っ込もうとしていたが、二人の覇気で何も言わなくなってしまった。頼りにならねぇ!
「透くん……ちょ、ちょっとみにくいのでそちらに寄らせていただきますね」
「えっ……!」
ぐりぐりと肩を押し付け、顔が更に俺に近づいてきた。白銀さんの顔も少し赤くなっていた。
前までの白銀さんなら絶対にこんなことをしなかったのに、どうしてこんなことをしているんだろうか。何か焦っているように感じられる気がするが……。
「むぅ! あたしも見えないから、し、仕方ないし!」
「夏墨まで!?」
夏墨も同じく、俺にぐりぐりと肩を押し付けて顔を近づける。
側から見れば両手に華で羨ましい光景に見えるのだろうが、周囲の視線やら先生に怒られないか不安な感情やらでハラハラドキドキが止まらないのだ!
「(だ、誰か助けてくれぇえええ!!!!)」
ちなみに授業は一切耳に入ってこなかった。
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