第6話 [覇気をやめてほしい]

「お疲れ様です」

「おお、透くん! いいところに来たね!」

「どうしたんですか店長」


 バイト先の喫茶店に到着するや否や、店長のおどおどした顔が目に入った。

 黒髪で大きな金色の瞳を持つ、俺より小さい男の子。見た目は中学生くらいに見えるが、成人である。


「実はね、冬雪ちゃんがなんか機嫌悪いんだ……。何か知らない?」

「……知ってるかも、です……」

「じゃあ話は早いね! 透くん頼む!」

「俺に全任せですか!?」

「だ、だって圧で死にそうだもん……。怖いもん……」


 ウルウルと涙ぐんで声が震えている。とても大人には見えない。


「そんなんだから子供見たいって馬鹿にされるんですよ」

「んなぁっ!? き、気にしてるのにぃ!」

「まあ、任せてください。できるところまで頑張りますから」

「ありがとう透くん! 助かるよ……」


 さてと、一体どんなことになっているのやら。


 そんなことを思いながら、俺は休憩室の扉のドアを開けた。入るや否や、蛇に睨まれた蛙の如く動けなくなるほどの眼光が刺さる。

 相変わらずすげぇ覇気だ。


「えと……白銀さんお疲れ様……」

「今日はてっきり休むのかと思っていました。仲睦まじげにあの転校生さんと帰っていましたし」

「あ、ああ……(やっぱ夏墨の件で怒ってるっぽいなぁ……。店長には任せてくださいって言ったが、どうやって解決すんだ?)」


 とりあえず俺も椅子に座る。手持ち無沙汰になったので、バッグにしまって会ったラノベを取り出した。

 チラチラと横目で白銀さんの表情を伺いながら、どうやって切り出そうか悩んでいた。


「……透くん、何か用ですか」

「ヒャイッ! いいいいっ、イイエ、なんでもありまセリヌンティウス……。スミマセンッ」

「……なぜ透くんが謝るのですか。私のはうが謝らなきゃいけないのに」

「え?」


 白銀さんは読んでいたラノベを閉じ、こちらに体を向けた。


「今日はぷりぷりしてしまって申し訳ございません……。ついついムキになってしまいしまい……」

「あ、ああ。いや、全然大丈夫だよ」


 話したら案外簡単に仲直り(喧嘩の内容がわからん)できたみたいだ。


 しかしやっぱり、なんで夏墨の件でこんなに怒っていたんだろうか? もしかして俺を取られたくない……ってコト!?

 ……流石にそれは自惚れだな、うん。


 制服に着替え、俺たちはバイトを始めた。

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