想定内 スライム倒せませんでした

「あんなスライムも倒せないんじゃ終わってるよ黒崎君」


「チート能力とかがあるのかと思ったら、身体能力は全く変わってなかったわ」


気がつけばサキちゃんにタメ口をきいていた。


僕は、あの朝、パパの空港券のくだりを食い気味に解決して、学校にきて、テストの結果をまたずに、ミキちゃんと一緒に帰ることにした。作戦が必要だ。


周りからは驚きの声が上がったが、まあ想定内。


ありがちな物語あるあるだろ?

陰キャな僕と美少女の2ショット!!


しかし、並んで考えるのは、スライムを殺す方法だってことが虚しい。

スライムのことだけで頭がいっぱい。


本当は、もっとでかい敵を倒すのがかっこいいのに・・・スライム団子か。


「僕もう死ぬ感覚がわかったから最強…」

「どうだった?」

「絶対体験したくない。辛かったよ」

「そうだろうね死んだんだもん」

「あの後、私が泣き崩れたところで、目が覚めたのよ」

「ヒントが少なすぎるよ…」


そんなゆるい会話をしながら、7月1日の放課後を過ごす。僕たちが飲むカルピスソーダが無駄に青春を誘うが、本題はスライムだ。


「本当に戻れるのか不安になってきた。まあせいぜいあと1回じゃないかな。とにかくスライムが言うには『倒せば次の日』って死にゆく時に聞いたし」


「スライム声ヤバかったね。なんかモザイクかかってテレビ出た人の声だった。プッ。あっそんなことより!私、スライムのこと調べ尽くしてきた」


「当たり前なんだけどさ、スライムって粘着してるから、とりつかれたらもう終わりよ。だからさ…」


サキちゃんが僕に耳打ちする。近い近い!!

カルピスの香りがした。

赤いであろう耳を気にしながら僕は


「なるほどその方法か!!」


と叫んだ。

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