第82話 あれっ!? この手って!
食堂の営業終了後、部屋に戻った私は 、目をつぶってベッドの上であおむけになっていた。胸にはキャロちゃんが乗っている。
暗闇の中には、いつものスキルツリーが浮かんでいた。
スキルポイントは既に『7』も溜まっていて、何を取得するかリディルさんと相談している真っ最中だったのだ。
『《ケチャップ生成》は他の生成スキルと同じです。《塩生成》なら塩を、《胡椒生成》なら胡椒を、つまり《ケチャップ生成》ではケチャップが生成されるのです」
「ではこの、〝けちゃっぷ〟って、なんなんですか?」
『それは私にもわかりません』
「じゃあこっちに書いてある〝しょうゆ〟は?」
《プロテイン生成》からは《ケチャップ生成》以外にももうひとつ枝が伸びているんだけれど、そこには《醤油生成》と書いてあるのだ。
「それもわかりません」
ですよね……!
がっかりしつつも、私は想定内の返事に納得もしていた。
だって、ぷろていんの時もそうだったもんね。
この〝けちゃっぷ〟というのも〝しょうゆ〟というのも聞いたことがないから、きっと自分の目で直接見てみるしかないんだろう。
となると……。
私はスキルツリーをじっと見た。
《ケチャップ生成》に必要なスキルポイントは『6』。それに対して、《醤油生成》に必要なスキルポイントは『9』。今私が持っているポイントが『7』だから、《醤油生成》は取れない。
「なら、《ケチャップ生成》でお願いします!」
「わかりました。あなたに《ケチャップ生成》を授けましょう」
すぐさま、リディルさんの白い手――ではなく、なぜかにょっきりと伸びてきたのは、見覚えのあるオレンジ色の丸い手だ。
あれっ!? この手って!
「ぴきゅぅ~」
気が付けば、リディルさんがキャロちゃんを抱っこしていた。
えええ!? キャロちゃん!? なんでキャロちゃんがここにいるの!?
あわてて目を開けてみると、キャロちゃんは変わらず私の胸の上に寝転がっている。
ただし、その大きなおめめは閉じられて、すやすやと寝ているように見えた。
私がもう一度目をつぶると――やっぱり暗闇の中で、リディルさんがキャロちゃんを抱っこしていた。
「なんで!?!?」
『この子は不思議な子ですね、ララ』
キャロちゃんの葉っぱを撫でながら、リディルさんが淡々と言う。
『本来ならこの空間はわたくしとあなたしか入れないはずなのですが、気がついたらこの子がぬるりと入り込んでいました』
ぬ、ぬるりと……。
「それだけで入れるものなんですね……!?」
『普通ならまず無理でしょうね。ですが、この子はマンドラゴラキング。キングと名の付くものは通常個体とは違い特殊技能を持っていることが多いのでそのせいかもしれません。……とはいえ、わたくしもここまで入ってきたのは人間でも見たことがありませんが』
「ぷきゅきゅ~!」
リディルさんの言葉に、キャロちゃんが元気いっぱいに返事をしてみせる。
まるで、「うまくできたよ~!」と言っているようだ。
『まぁ、害はないようなのでいいでしょう』
「そうですね……キャロちゃんのことだし、純粋に一緒に参加したかったのかな?」
『そうかもしれません。この子は、ララのことが好きなようですから』
言いながら、リディルさんはまだキャロちゃんを触っている。
ふさふさの葉っぱをつんつんつついてみたり、ちいちゃなおてての先をきゅっと握ってみたり。
…………あれ? リディルさん、もしやとっても楽しんでいる……?
あいかわらず無表情だけれど、若干頬が赤くなって目がいきいきしているような……! それにキャロちゃんを腕の中からおろすことなく、ずっと触っているし……!
私がじっと見つめていると、気づいたリディルさんがハッとした。
『こほん。失礼いたしました。次は《ケチャップ生成》でしたね? ララ、あなたに授けましょう』
……と言いながら、リディルさんはキャロちゃんのおててを持ち上げた。
そのまま、スキルの銀貨にキャロちゃんのおててを誘導していく。
……あ、やっぱり今回はキャロちゃんにタッチさせるつもりなんだね……?
「ぴきゅ~~~!」
オレンジ色のおててが触れた瞬間、キャロちゃんのご機嫌な声とともに銀貨がパァァアッと光った。
***
キャロちゃんもなんだかんだ色んな意味でチートなんですよね……。
そして!!!「はらぺこ令嬢」のコミカライズ2話も更新されていますよ~~!!!フィン様がべらぼうにかっこいいので……(涙)ぜひともみんな見てください。あと35P全部無料で公開されているのすごくないですか……!?
https://comic-walker.com/detail/KC_005938_S/
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