第6話

「なに、話って」

マリが椛島にタリーズに呼び出された。

「まあ、すわれ」

椛島は難しい顔だ。

マリは多少イヤな予感がしたが、とぼけ通そうと

思った。

「なによ、ムッツリとした顔して」

「おまえ、何かオレに隠れてやましいことしてないか」

椛島が身を乗り出してマリにガンつけた。

「なっ、なによ、それ。私が何したっていうのよ」

「とぼけるな」

椛島があたりかまわず大声を出した。

「クルミさんがオレに泣きついてきたぞ。

オマエが大変なことになってるって」

椛島も泣きそうな顔だ。

「オイ、どういうことだよ。デリヘルで働いてるって。

オレに相談してくれればオレが何とか」

「1億円用意できる?」

「いっ、いちおくっ!」

椛島は卒倒しそうな顔になって、椅子から

転げ落ちそうになった。

「できないでしょう。だから、相談しなかったのよ」

マリが椅子から勢いよく立ち上がった。

「さようなら。もうわたしはあなたのお嫁さんに

なる資格はないわね」

マリが小走りに立ち去った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る