第15話 その後
半刻は過ぎただろうか。
薄明るい映画館のようなそれの中心。そこには、初老ほどの女性が一人座っていた。
「あーあ……。あれはもう、いなくなっちゃうかもしれないね……」
ヒ、ヒヒ、ヒヒヒヒ。
呟くように、けれど語り掛けるように。
ソファーに沈む女性は気味の悪い声で嗤い、嬉しそうに泣いた。
落ち着くと、彼女は射影機へ歩み寄りつまみを回す。
すると会場は真っ暗になり、どこからかドクンドクンと腹に響くような重い音がすべてを包む。そして、男が焦ったように叫び出した。
「次もあるじゃないか! 紬が死ぬなんて……。堕してくれよ!」
「だめだよ、たか君。あなたはこの子のお父さんになるんだよ」
それはさっきまで流れていた、少女が狂った原因となる映像だった。
ああ、なんて可哀想な子供だろうか。
ヒッ
父親には要らないと言われ、母親には「代わりに死んでごめん」と謝られ、自分の命は母の屍の上にあると気づかされ。
ヒヒッ
なんて、なんて残酷な悲劇だろうか。
ヒヒッ、ヒヒヒヒッ。
それから、何度も何度も。
初老の女性は同じ場面を繰り返し、気味の悪い嗤い声をあげ続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます