第9話 洞窟の中で
森の中の洞窟の中。
入口の高さが3メートルくらいのその洞窟の広さは、
大人8人がすっぽり入るくらいであり、
勇者、キャロライン、メルシー、キッド、セレナが入っても
まだ広さに余裕があるように見える。
洞窟の中の地面は土でおおわれており、
そのところどころに雑草のようなものが顔を出している。
「腹が減ったな。俺はちょっと食材を探してくるよ」
仲間の4人を残し、勇者が洞窟の外へと出ていく。
暖かい太陽の光に照らされた勇者の髪は黄金色に光り輝き、
それを見ていたメルシー、キャロラインの目がハートになった。
「勇者様~♥なんて眩しいの!眩しすぎて、わたくしの目がああ~~」
メルシーが額に手を当てながら、その場に倒れ込む。
(私が子供じゃないってとこ、勇者様に見せてあげなきゃ・・)
「私も食材、取ってくる!」
キャロラインがすっと立ち上がり、勇者とは別の方向へと走り去って行った。
キッドは疲れて眠っているのだろう、スヤスヤと心地よさそうに
地面に寝そべり、寝返りをうっている。
「・・・・・私、ちょっと行ってきます・・・」
セレナがメルシーに背中を向け、洞窟の外へと足を進める。
「・・・勇者様のところに行くつもり?抜け駆けもいいとこだわ」
メルシーが大きな胸を隠すように、腕を組みながら言った。
「・・・私やっぱり、うんこさんの事が心配なので、
あの崖の場所まで戻ること、勇者様に伝えてきます」
セレナの言葉にメルシーが驚く。
「ちょっと、なに言ってんの!?正気!?あいつはモンスターなのよ?
それに、あんなひどい容姿に加えて、私達を襲ったクソみたいな奴よ?
って・・・あんた、まさか・・・
そいつを仲間にしようなんて言うんじゃないでしょうね?」
「そんな、仲間にしようだなんて・・・。
ただ、心配だから様子を見に行くだけです」
相変わらずのお人好し。
そう思いながら、メルシーがふっと鼻で笑い言う。
「・・・・そう、じゃあ行きなさい」
「えっ?」
「勇者様や皆には、私から言っておいてあげる。
他の化け物に喰われる前に様子を見に行かないとね。
まぁ・・・あんな汚いモンスター、誰も喰わないだろうけど」
「・・・・ありがとうございます」
セレナはメルシーに深くお辞儀をして、その場を後にする。
キッドの寝息だけが響く洞窟の中、
メルシーが日の当たる場所へと腰を下ろした。
「本当の事を言ったら、勇者様はあの小娘を追いかけるに決まってる。
だから、仲間から離脱したって伝えておかないとね・・・」
メルシーとセレナの会話をこっそり聞いていたのだろう、
洞窟近くの物陰から勇者がセレナの方へと足を進めた。
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