27「千代子のウソ」
「正式な診断は検査結果を待たなければなりませんが」診察室で、内科のお医者さんが言う。「症状から診るに、アデノウイルス感染症でしょうね」
「アデノ? そ、それは厄介な病気なんでしょうか……?」
恐る恐る尋ねると、お医者さんは破顔一笑して、
「ただの夏風邪ですよ」
「へ? はぁ~~~~……良かった!!」
ベッドでは、千代子が点滴を受けながらすやすやと眠っている。
「ただ、体力と免疫力が極端に低下している状態ですので、半日ほど入院してもらい、様子を見た方が良いでしょう。よほど不規則な生活をしているようですね。食事と睡眠は取っているのですか?」
「食べてはいます。睡眠の方は……彼女はショートスリーパーだそうで。毎日数時間くらいでしょうか」
「ショートスリーパー? それはウソでしょう」
「……え?」
「これは典型的な、睡眠不足による免疫低下の症状です」
「なっ……」
🍼 💝 🍼 💝
数時間後、千代子が目を覚ました。
「……知らない天井や」
「余裕あるやんけ」相部屋の病室で深々とため息を吐いてみせ、「何でショートスリーパーやなんてウソ吐いてまで無理しとったん?」
「…………」気まずそうに眼を逸らす千代子。
「はぁ~……とにかく、今日からは毎日8時間眠ること!」
「そんなに寝とったら時間足らんくなる」
「やったら振れる作業は僕に振りぃ。台本作りにサムネ作り、配信準備やったらできるから」
何しろ明治千代子のキャラは僕の脳みそから現出しているのである。
千代子は明治千代子になり切ることで台本を書いている。
同じことが僕にできないわけがないし、できなければ原作者失格だ。
「
「娘が生意気言うな。弱っとるときくらい、ママに頼りぃ」
「でも、神戸に迷惑かけるわけには……」
「アホ、もう十分に迷惑かかっとるし、それに見合う以上の見返りももらっとる。それに」
千代子の手を握る。
荒々しい明治千代子のキャラとは異なる、弱々しくて小さな手だ。
「お前は僕の娘なんや。娘のために尽くさせてくれや」
千代子が目を閉じる。
二、三度呼吸をしてから目を開き、
「うん」
手を、握り返してきた。
🍼 💝 🍼 💝
「みんな、今日は急にごめんやったで」夕方、千代子は無理を
『大丈夫!?』
『心配した』
『生きてて何より』
『ムリせんでもろて』
『病院代』
「
『タフネス』
『千代子は強いなぁ』
『無理はしないで』
「うん。けどお言葉に甘えて、今日は30分くらいで終わらせてもらうから」
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