24「最低最悪のスキャンダル」
❖同時刻 /
動画が始まった。
「…………え?」
あーしは、愕然となる。
その動画の内容は――すごかった!
プロ顔負け? いや、プロそのものな出来栄え!
まず、しっとりとした雰囲気のイントロの中、3D千代子様がうつむいているシーンから始まる。
ぱっと顔を上げた瞬間、イントロも華やかになり、背景に光。世界が開かれた感覚。
そうして、歌と、ダンスが始まる。
「わぁ!」
そこからはもう、夢中になった。
先輩バンドに作ってもらったオリジナル和ロック、
私が考え、仕込んだ千代子様の優雅なダンス、
けして主張し過ぎず、千代子様を支えるあーし(ヱリス)のバックダンス、
ママによる完璧な編集。
それらすべてが、プロ水準でまとまっていた。
圧倒的没入感!
動画が終わった時、しばらく終わったことが理解できなかった。
真っ暗な画面を見つめて、続きを探してしまった。
「ママ……これ」
「どや、カンペキやろ?」神戸の見事なドヤ顔。
「すごいすごいすごい!」
思わず、神戸に抱き着いてしまった。
🍼 💝 🍼 💝
❖同時刻 / 神戸 耕太郎❖
「抱き着くなや!」
と言いつつも、悪い気はしなかった。嬉しいまである。
だって、有栖川は恩人だ。
有栖川がいてくれなければ、曲も歌もダンスもボロボロだったはず。
それにたった今、応募し忘れという最悪の事態から救ってもくれた。
もう、有栖川に対する嫌悪感はみじんもない。
僕らは最高のチームだ!
「ママ!」
有栖川がハイタッチの姿勢を取る。
僕は迷わずハイタッチ。
「をいをいをいをい」千代子が白目を剥いて、「なーにを2人でイチャついとんねん」
「ほら、千代子様も!」
そうして僕らは、3人でハイタッチした。
最高のチーム、最高のPV、最高の娘たち。
この大会、きっと受かる。
何もかも上手くいく!
「はぁ~」僕は尻餅をつく。「改めて眠気が」
「ウチも」
「あーしも」
「寝ます……」立ち上がり、2段ベッドのはしごを登ろうとして、「あれ?」
足を踏み外した。
「「わーっ!!」」
千代子と有栖川に抱き留められた。
千代子の手、ちっちゃい。
有栖川の手、たくましい……トゥンク。
「おーい神戸、床で寝るなし」
「あはは、ここんところずーっと寝とらんかったからなぁ。もうええ。下で寝ぇ」
僕は2段ベッドの1段目、千代子の城へと放り込まれる。
「……へ? あ、ちょっ」
「いいですね! 3人で寝ちゃいましょ」
「えええええっ!?」
「すごいね神戸、両手に華だし」
「3Pやで神戸」
「ちょっと千代子、生々しいこと言うなや!」
左右から美少女に体をくっつけられる。
目が冴えて、眠るどころ……じゃ……zzzZZZ。
🍼 💝 🍼 💝
「神戸! 神戸、起きぃ!」
翌朝、千代子の声で目が覚めた。
深刻そうな顔をした千代子が、「神戸、今すぐ引っ越す。準備しぃ」
「引っ越し? はぁ、急に何!?」
「神戸、これ……」
顔を真っ青にさせた有栖川が、スマホを見せてくる。
表示されているのは、僕――コンブママのTwitterだ。
そこに書かれていたのは、
『死ね』
『NTR野郎』
『クズ』
『こんぶ最低だな』
『ヤリチン』
『やっぱり千代子とデキてたんですね』
『同棲とかサイアク』
『あーあ』
『裏切り者』
『千代子のファンやめます』
『
『死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね』
『この件、どう説明するおつもりですか? つ動画』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます