エピローグ

ジアンが血を吸ったという事は、私は死んじゃったのかな?

 

 その割には、首の辺りに痛みがあるし、何か

声が聞こえるような...


 ジ)..ネア、モネア、聞こえる?


 ...あれ?何でジアンの声が聞こえるの?

それに、ぼんやりとジアンの顔が見える。泣きながら、必死に呼びかけてくれてる。


 早く、目を覚まさないと!


 モ)ぅう、聞こえるよ。

 

 ジ)よかった、目が覚めたみたいで。体は、大丈夫?


 モ)起きるのはキツそう。だから、このまま聞くね。ジアン、あの後私はどうなったの?


 ジ)えっと、今から順を追って話すよ。


 俺がモネアの血を吸った時、自分を制御出来なくて、本当に最後まで吸ってしまうところだったんだ。  

 

でも、ギリギリのところで踏みとどまれた。


 モ)何で、踏みとどまれたの?ジアンのお兄さんは、止められずに相手を吸い殺したのに。


 ジ)...確証は無いんだけど、多分、ペンダントのお陰だと思う。


 モ)ペンダントって、私が人間の国に帰る時にジアンがくれた魔術具だよね?


何か特別な効果があったの?


 ジ)いや、そういう事じゃなくて、思い出したんだ。


 モネアを人間の国へ逃した時、俺はモネアを傷つけたくなかったし、殺したくなかった。守りたいから、ペンダントを託したんだって。


 ペンダントを見た事で、その想いが強く引き出されて、どうにか踏みとどまれたんだと思う。


 今日まで、ペンダントを肌身離さず身につけてくれて、ありがとう。


 モ)いや、お礼を言われる程の事じゃないよ。むしろ、私がお礼を言うべき。二回も私の命を救ってくれて、ありがとう。


 ジ)俺は、命を救うどころか脅かす立場

だと思うけど...。とりあえず、話を続けるね。


 血を吸うのを止めて、我に帰った時には、君が生死の境を彷徨さまよっていた。


 だから、止血処置をして、安静に寝かせてあげられる場所が欲しかったんだけど、何せここは森だ。そんな場所ある訳ないし、加えて夜が明けようとしていた。


 洞窟まで戻る時間もなくて、戸惑っていた時、体に魔力が宿っている事に気付いたんだ。


 モ)えっ?ジアンは、魔力を持っていないはずなのに...


 ジ)それが、吸血鬼が人間の血を吸うと魔力が覚醒するんだ。俺は、モネアの血を吸った事で覚醒したんだと思う。


 でも、魔力単体だと魔法は使えない。だから何か術式を唱えなければいけないけど、俺は大した術式を知らなかった。



 モ)多分、ジアンが知っている術式って「吸血鬼の国から人間の国への転移」だけだよね。どうやって、この小さな家とベットを作ったの?


 ジ)父上が人間の国へ追放する時にくれた巻物に、「人間の国から吸血鬼の国の王城への転移」以外にも、数種類の術式が載っていたから、それを使った。


 モ)なるほど?話をまとめると、転移する場所を指定する場合は、ジアンが知っていた術式とは別のものが必要。

 

 だから、ジアンのお父さんがくれた巻物に、たまたま数種類の術式が載っていて、そのお陰で助かったって事かな?運が良いね。


 ジ)本当に偶然だったかは分からないけど、そればかりは父上に感謝だな。さて、これからどうしようか?


 そっか、魔力が覚醒したから、ジアンがここに残る理由は無い。

 ということは、私は一人に...


 ジ)モネア、君はこれから住む家が、こんなに狭いのは嫌かな?


 モ)へっ?ジアンは、国へ帰らないの?


 ジ)うん、モネアと一緒に残るつもりだったけど、嫌かな?


 モ)嫌な訳ないよ!ずっと一緒にいたいもの。


 ジ)っ...今、そんな発言されると、歯止めが効かなくなりそう。


 モ)それってどうい...うぅん...


 いきなりの事で驚いたけど、ジアンの唇は優しく私を包みこんだ。


 ジ)君の彼氏として、これから先も一緒に居たい。君が良ければ...だけれど。


 モ)良いよ!というより、ずっと一緒に居させて下さい。


 ジ)分かった、約束する。俺達はこの先、ずっと一緒だ!


 モ)...うん。よろしくね、私の王子様。


 ジ)こちらこそよろしく、俺の愛しい人。   



                   終





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

吸血鬼の葛藤 一ノ瀬 夜月 @itinose-yozuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ