第二話 モネアの過去
ジ)その声...モネアか?何で君がこんな所に?
モ)ジアンこそ、ここは人間の国だよ?あと、苦しいから上に乗るのやめて欲しい。
ジ)あっ、ごめん。すぐに離れるから、君も一旦ナイフを置いてくれないか?
そして、話を聞かせて欲しい。別れてからどうしていたのかを。
モ)...分かった。私はジアンのお陰で人間の国に帰れたけど、家に戻ってからの生活も良いものではなかったわ。
私の実家は、ベラーカ男爵家といって、貴族なのは前に言ったけど、私は正妻の子ではなくて、庶子なの。
ジ)庶子って事は、望まれて生まれた子ではないのか?
モ)その通りだよ。だから、私が吸血鬼の国から戻って来たと知って、父のベラーカ男爵は、私にキツくあたったわ。
〜八年前〜
男爵)なぜお前が家に帰って来たのだ?汚らわしい上に、何も出来ないクズが!
大人しく、吸血鬼の食糧となっていればよかったものを。
モ)ごめんなさい、これから何でもするので家に置いて下さい。ここから追い出されたら、生きていく術がありません。
男爵)「ごめんなさい」ではなく、「申し訳ございません」だろう?
モ)あっ、申し訳ございません。訂正致します。
全く教養が身に付いていないな。これは、雑用としてしか使い物にならない。ならば...
男爵)私の厚意で、お前を家に置いておく事にする。だが、扱いは使用人以下だ。馬車馬のように働け。
モ)ご厚意に感謝して、精一杯働きます。
男爵)ふん、精々我が男爵家の役に立て。
どうしよう、今まで働いた事無いよ。だからといって、断ったら追い出されるし、とにかく頑張ろう。
しかし、私の認識が甘かった事が直ぐに思い知らされる。
メイド)今まで何もやった事が無い!?
そんな事知らないよ。そこの洗濯板を使って、洗濯物を洗ってちょうだい。貴女の事は、最下級の使用人として扱えと言われているから。
モ)えっ、でも、やったことないのに...
メイド)メイド全員分よろしくね。
モ)えっと、まずは、桶に水を汲んで...つめたっ、こんな温度の水で衣服を洗うの?しかも、約二十人分?無理に決まってる。
二時間後...
モ)どうにか終わった。手が痛いを通り越して、感触が無いよ。とりあえず、報告しないと。
メイドさん、終わりましたよ。次は?
メイド)終わってないよ、汚れが残っているからやり直しね。
モ)無理ですよ、もう手の感触が無くて...
メイド)そんな事を言うなら、男爵様を呼んでくるよ。
数分後...
男爵)呼ばれて来てみれば、手が痛いから出来ないだと?知るか、動けなくなるまで働け。
モ)そんな...痛いので、手当てだけでも...
男爵)そこのメイド、モネアに次の仕事を。
メイド)わかりました。
モ)お願い、誰か、助けて!!
メイド)誰も貴女の事なんて助けない、早く仕事をしなよ。
モ)...はい、分かりました。
モ)それから約八年間、奴隷のような扱いを受けて、成人したと同時に、身一つで追い出されたの。
ジ)そうだったのか、辛かったな。というか、追い出されたなら自由になったのに、何で自殺を?
モ)だって、用意もなく追い出された上に、私一人だけで、何も知らない外の世界で生きていく事は不可能だと思ったの。
ジ)確かに、衣食住が揃っていない上に、頼るあてもない状態で、女の子が一人で暮らしていく事は難しいね。
でも、大丈夫だよ。これからは、俺が一緒に...うっ、
モ)どうしたの?急に喋らなくなったけど、
大丈夫?
この感じ、さっきと同じだ。また、血を求めているのか?
ジ)モネア、今すぐ離れてくれ。また、吸血衝動が...
モ)ジアン、苦しいの?なら、私の血を飲んでもいいよ。
ジ)なっ、何を言っているんだ?俺は、君を傷つける事は...絶対に、絶対にしない!したくない!
だから、お願いだ、離れて欲しい。
モ)いいの。貴方になら、何をされてもいい。
だって、吸血鬼の国での辛い生活から救ってくれたのは、貴方だから。
〜約九年前〜
ユ)ジアン、そろそろお前も、牧場の見学にいってみるか?
ジ)兄上、牧場とは何ですか?
ユ)簡単に言うと、私達に血を供給する、様々な動物や人間が飼育されている場所だ。
王族は皆、一度は見学に行く義務があるんだ。
ジ)分かりました、でも、兄上にも同行して欲しいです。
ユ)可愛い奴め、勿論同行するさ。
牧場にて...
ジ)衛生環境が良くないですね、臭いがひどい。
ユ)確かに、動物のエリアはそうだな。けれど、人間を飼育しているエリアは、多少はマシだよ。行ってみるかい?
ジ)はい、行きたいです。
ユ)では、ついて来てくれ。数分で着くからね。
数分後...
ユ)着いたぞ、そういえば、ジアンは人間を
見るのは初めてだよな?容姿は私達に似ているだろう?
ジ)そうですね、牙が無いのと、瞳の色がバラバラな事以外は、同じですね。
ユ)加えて、人間達は私達と同じく、言葉を話す事が出来る。試しに話しかけてみなよ。
試しにって、どの人間に話しかければ良い?
誰に...うん?あの子、綺麗なピンク色の瞳をしていて、吸い寄せられそうだ。
ジ)そこのピンクの瞳の君、名前を教えてくれないか?
モ)...私?
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