第8話 アリシア捜索作戦②
「おいハインツ講師!何だこの体たらくは!?貴様は指揮官を降りろ!」
作戦が開始されて丸3時間。1時間ほど前からイライラし続けていたモーリスがついにしびれを切らして絶叫し、アルガイルが資料を開いていた机を叩いた。
3時間の間にあったことといえば検問所を突破しようとした男が数名拘束された程度で、どれもフォルク市封鎖と比べたが些細なことだった。
となると、アルガイルやモーリスが立ち向かっている姿も数も規模も知れない敵は3時間もの間何処かに潜伏していることになる。
始めから、モーリスは元々子ども一人のために市域を封鎖することに違和感を感じていたのもあり、警備隊と海兵が総出で捜索しても見つけられない物を探し続けていることにふまんたらたらだった。
そして3時間。アルガイルは新しい作戦を示すわけでもなくただ報告を待ち続けており、しかもモーリスの提案──というか小言に近かったが──にもほとんど聞く耳を持たなかったのでいい加減モーリスもキレていいだろう、と怒声を上げたのだ。
「ったく…講師をしている間に脳みそでも
そんな事を言っているモーリスにアルガイルが静かに、しかし重みのある低音で返事をした。
「君の提案は概ね的を射ている…かも知れない。 ただ、君の提案は現状の僕を超えれていない。 根拠のない想像など幾らでも出来るからだ…」
「し、静かに!!!!!」
アルガイルの言葉を遮って、カルラの声がだだっ広い検疫所に静かに響いた。
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どうも、自分は大きな建物の屋根裏近くにいるらしいということと、吹き抜けの下の階でアルガイルが何やら指揮をしているらしいことは理解した。
ただ、自分の状況を把握するには少々どころかかなり情報不足だ。
「ところで」
そう話を切り出したところで、強く口をコクロウに抑えられた。
コクロウは、低い声で「残念だが俺から話せることは何もない…お前は海を越えるまで何も知る必要はない」と言った。
ブチギレていたモーリスの声が聞こえなくなり、アルガイルが何やら話していたがその声は小さすぎてアリシアには聞き取れなかった。
コクロウではない方の男がもう得れる情報は無いと判断したのか手近にあった物体で木の隙間を閉めた。漏れ出る光に照らされチラチラ輝いていた埃の粒子も、見えなくなった。
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カルラはずっと静かにオシロスコープのような何かと腕時計(のようなもの)を交互に覗き込んでいたが「静かに」という声を上げつつアルガイルの方に向き直り、至近距離にいたアルガイルにすらギリギリ聞き取れるか、というほどの小声で
「敵さんの居場所がわかった」
と言った。
モーリスは驚きのあまり声を上げそうになり察したアルガイルに腹に一発食らわされ悶絶していたが、アルガイルはそれすらも意に介さない表情でカルラに「どこだ?」と返した。
「この建物の中だね少なくとも」
「階は?」
「わからない」
「どうやって見つけた?根拠はあるのか?」
「根拠はある。見つけ方は企業秘密かな」
「…わかった。すぐ動こう」
「そうだね」
話に置いていかれたモーリスがは?とだけ言い、また悶えだした。
もはや戦後の魔導技術研究科 ダカツ @DaichiOkamoto
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