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 心霊スポットの撮影を終えて家に帰り、三時間ほど仮眠を取った後に、今度は編集作業に入る。

 今日撮った動画をパソコンに落とし、動画編集アプリを使って、余分な部分をカットしていく。字幕をつけたり、霊障とおぼしき箇所をクローズアップする。幽聖さんが一人で撮影しているシーンをみながら、本当に凄い人だなと感心していた。

 噂とされている窓を叩かれるという現象も、ばっちり収められていた。驚きながらも逃げ出すことなく、それどころか「今、この位置から叩かれて」と言って、近づいて音の出所を探ることまでしていたのだ。

 その探究心とリスナーの心を擽るような、解説や検証が人気の秘訣なのだろう。

 サムネイルを作り、やっと動画が完成した時には既に午後三時になっていた。始めてから五時間以上が経っている。

 一息入れようとコーヒーを作り、啜りながら今度は、昨日投稿していた動画を見ることにした。

 やっぱり自分が作った動画が、どのような反響を得ているのか気になる。

 コメント欄を見ると、肯定的な意見が目立つ中で「ヤラセくさい」という言葉もある。

 それは仕方ないことだった。どんなにヤラセはしません、と謳っていても、それを証明する手立てはないのだから。

 だけどそれだけ、この動画の心霊要素が高いという証拠でもあった。ヤラセと疑う程に霊障がリアルであるということだからだ。

 僕はいつの間にか、ニヤニヤと顔の筋肉を緩めていたと思う。

 しばらくリスナーからのコメントを見ていると、中には「うちの近所にも心霊スポットがあります」と紹介しているものもあった。

 僕はそれをスマホに書き留めておく。リスナーたちの要望に応えるのも、一つの戦略に違いないからだ。今でも充分ヒットしているとはいえ、やっぱり上には上がいる。

 幽聖さんにも高みを目指して貰いたかったのだ。

 僕も一時期、自分でチャンネルを持っていた。

 有名な心霊スポットを巡ったりしたけれど、イマイチ伸び悩んでいて、労力と対価が見合っていなかったのだ。

 そんな時に幽聖さんがアシスタントを募集しているのを知り、僕が飛びついたのがきっかけで今に至っていた。

 当時から伸びていたチャンネルだけあって、多くの応募者がいたはずだ。だけど、なぜか僕が選ばれたのだった。

 一度理由を聞いたことがあって、「全く霊感がないから」と言われた時は、唖然とした。

 それからいくつかの条件を守れるのであればと言われて、あのときの僕は「もちろんです」と答えていた。

 心霊スポットで無礼な行いはしない、人為的なヤラセは駄目という、当たり前のこと以外にも、幽聖さん個人に対する詮索はしない、行く先は幽聖さん自身が決定するという不思議な条件も並んでいた。

 その時は別段、不思議にも思わなかったが、さすがに二年も一緒に行動していると、どうしても気になってしまう。

 それに信頼されていないのではないか、という不安や焦燥感が最近酷くなっていた。

 明日にもまた、撮影がある。こんなモヤモヤした気持ちがいつまでも続くのかと思うと、正直寝不足よりも辛かった。


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