亜ぐ刻旅日:覇

 其れは只管ひたすらに想像に難く、

しかしこの状況を生きた者には

容易く思考が回った。

かくスローモーに見えた。

しかながら一瞬であった。

「トラックが....!」

黒髪の少年ルアが叫ぶ....

「飛んだ.... !? 」

銀の髪の女のシュネーも叫ぶ.....

何かが弾け飛ぶ派手な音を、

その恐ろしい着地時に巻立て...

そのトラックがすぐ後ろに現れる!!

ぐふぉぉぉぉぉん!!!!....

「あぁ.......。逃げ切れる気がしない.....。なにか遠距離に仕留められる武器無いですか....?」

「うーん....悪魔ショットガン?」

「えげ.....ぶち抜けませんかあれ。」

「弾ねぇし...」

「ぬ.....。」

「あ、これは?貰いもんのライフル!」

「あれですか?ゴテゴテした....」

「これなら行けるべ」

「まずは当てて下さいよ?」

「がってんでいっ!」

レバーを引き、弾を込め....

ずがぁーん!

大きく右に反れた。

「まだまだ!」

ずがぁーん!

それはそれは大きく反れた。

「あぁぁぁ!もう!!」

銃剣モードに展開し大きく振りかぶり

ヤケクソに投げつけ....

「し、師匠....。」

「べ、別にッ!わざと外してあげたんだからね!次はっ観念しなさいよ!」

る前にルアの哀れみの声によって

なんとか正気を保った....。

「師匠....。」

「ごめんなさい」

「いや、違います...」

哀れみの声では無かったようだ。

「ン?」

「坂です。」

「いいじゃん、チャンスだよチャンス!」

「いや....登りです....!」

そびえるちょっとした山みたいな坂....。

「あらら....」

急激な失速

その鋼のポニーには、

余りにも馬力が足りな過ぎた。

「終わったね」

「あ、諦めないで下さいよぉ!!」

「....うーん」

白銀の頭に乗っていた...

小さな白いドラゴンが、

突如ひょことシュネーの

細いが白い手に乗り....

顔をトラックに向けると、

じゅうううん!

ビームを吐き出した!!

そのビームはトラックの

フロントガラスを突き破り、

何処までも何処までも飛んで行った....

驚いたのかそのトラックは少し減速する

「おおっ!よしやれ、今度はよーく狙えよ〜?」

「師匠...!」

「なによ?いーとこなのに」

「前からもアレが!」「え.....」

同じモデル、同じペイントの

何もかも同じ大型トレーラーが...

坂の先、前からもせまっていた。

撒いたはずのそれが...恐ろしい程の豪速で

瞬間移動ワープしたかのように回り道して来たと

.....そう、回り道して来たと思っていたが...

答えは簡単だったみたいだ。

「意味の分からない移動をすると思えば!!」

左は崖、飛び降りればもしかすれば…

いや、そんなことしたらこのが...

躊躇い、そして

「ルア!前!!」

「─────ッ!!!」

本能的にハンドルを大きく切ってしまった。

急に飛び出した鼠を追うように...

前と後ろから来た化け物も飛び出す。

しかしその鼠には届かず、

トレーラー同士で空中で大激突。

弾かれるように落ちて行った...

鋼のポニーはまもなく、自由落下を始めた。

そして、

それと同時に...

八つに別れた

Cから始まる機械的...

それでいて芸術的な音階が鳴り響き.....

虚空の壁を突き破り、

いざなわれたかの様に現れるのは....

トレーラーの何倍も大きい...

頭頂の抉れた大海獣くじらの頭。

其れはそのままグワゥ!と顎を開き、

落ちるだけの一台のポニーを丸呑みにすると

音階を残し再び虚空へ消えて行った。

蒼く...黒い光を霧の様に残して.....。


{排除に成功したか?}

{現在、残骸を捜索中、だが死体は見当たらない....その上、行方知れずの模様...}

{今回は仇になったか?だが、見つけ次第再度アタックを仕掛ける}

{その前に....こちらを....}

{なに?動いたか?...うむ、そちらを優先する}

{了解}


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