豪轟鉄塊

 たたたたたったたたたたた...

乾いた荒野を一台の鋼のポニーが走っていた。

「あれは...」

「どったの〜少年」

「郊外宿舎の類ですかね」

「どれどれ?」

グイッと上半身をせり曲げ

白銀の長髪を適当に散りばめた女性が...

テントの後ろから前方を見る。

「いや......」

「師匠...?」

「そこを右だ」

「いいんですか...?」

「あぁ...なんだか嫌だなありゃ」

嫌だと、そう言うのは、シュネー...。

シュネーはパステルピンクの瞳と、

猫の様に細い瞳孔も持つ旅人...。

その嫌に答えるのは、

狭いはずの運転席にゆとり持って収まる...

華奢な黒髪の同じ旅人....彼の名はルア。

さて、言う通り道を右に曲がると...

ごぉおぉぉ...と大型トラックが

その謎の建築物からドンと現れる。

そしてとてつもない爆音を立てて走り出した。

重い足を無理矢理持ち上げる様に....

先程曲がった鋼ポニーが居た場所を

勢いに任せるまま走り抜けた。

「んぅ...考えすぎじゃ無いですか?」

「そうだといいが…」

「ここを行くと崖みたいな道ですね」

刹那、

ぐふぉぉぉぉぉん!

「きたきたきた!フルスロットルだ少年!」

「えぇ!?、....っはいッ!!!!!」

アクセルペダルを全開に踏み込み...

半分崖の気持ち狭い道を一気に加速した。

「き、来ました!!」

崖とカーブにより見えなかったその巨体が...

豪快に....ゆっくりと再び姿を現す。

「「で.........でっか!?」」

遠近法的に見て大型トラックだったが...

近づくとそんな事は無く。

渋い茶色が全身を包む...

その大型トレーラーは、

そこら辺の魔物より下手をしたら大きい。

鬼スケールの怪物トレーラーだった!

「踏まれたらぺたんこだぞ!」

「何で追われるんですかァ!!」

「多分私だわ」

「じゃあ師匠なんとかしてくださいよ」

「残念だが、このスピードで降りたら普通に着地できない....かもしれない」

「可能性あるなら....やって欲しいですケド。」

「このやろ〜なんでも出来ると思うなよにゃ〜♪」

「ぐえ...」

「なんだよ、ぐえって!」

「ひええ.....まぁ逃げますよ! 全力で!!!!」

ごああああああああぁぁぁ...

後ろからはまるで雪崩のような轟音。

突如始まったカーチェイス!

そしてその様は鼠を追いかけるドーベルマン。

未だ辛うじて均衡を保ったその車間は、

張り詰めパリパリと乾燥していた。

先に均衡を破ったのは鼠の方だった....

下り坂になり、道も緩いカーブが増える、

小回りと軽いボディを活かしその距離を稼ぐ。

ぐふぉぉぉぉぉん!!!....

ほんの少しずつ離れ行くその鼠に、

フラストレーションが溜まったのか

こんな風に吠え散らかした。

崖の端の狭いU字カーブに阻まれ....

その怪物トレーラーは動きを停めた。

「うっし!」

「師匠なんもしてないでしょ」

「ぬぐっ....でも予測はしたもーん」

「はーい。」

確かに真っ直ぐ行ってれば、

師匠の言う通りぺちゃんこだったかも...

いや、かもでは無い...真っ平らだ。

「できるだけ離れましょう...」

そしてまたカーブを抜けると....


 どっしり構えた渋い茶のトラックが

「ま、前から!?」「えぇ?」

辛うじて空いた、さながら針の穴を

奇跡的に通ることができ衝突は免れた。

鋼ポニーはそのまま曲がり...

一段下の道に入る。

「なんなんですよもう........なぁッ!?」

なんとトラックは上から、

引っ張ってきていた荷台部の大型タンクを

隕石の様に落としてきた。

タイミングも絶妙で引くこともできない...

アクセルを緩めず一息に突っ切る。

ごしゃあ...と中身が破れ散る音が背後から。

落とすモノ落とすと共に...

トラックは猛スピードで進み出した。

一段上を走っている其れが、

コレから実行しようとすることは

概ね予想ができた。


 EXT

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