朽屋のゾンビ

触れた者は皆...。


 たたたたたた...

一台の鋼のポニーが進むは荒野...

乾いた路面をスリップしない様に

じっくりじっくり進んで....

「何かお店がありますよ?」

その声の持ち主は、

小さい運転席が広く見える...

そんな錯覚に陥りそうな程、華奢な旅人....。

彼の名前はルアと言った...。

「じゃあそこで停めようか...」

荷台に何故か張られたテントから返事、

名はシュネー...銀の髪の女性...。

手のひらの上には小さなドラゴン、

収まり切る程、そこまで小さくは無いが...

ファネと名付けられた白いドラゴンだ。

たたたたたたたた....ととん...。

パタン!

そうして一行はその店へと入った。


「ごめんくださ〜い.....」

「おじゃまします....。」

しかし....返事は無い...

「まだやって無いんですかね...。」

「そうなんかな」

だが店内はランプに灯りが灯っている...。

油の継ぎ足しが必要なオイルランプ、

直近に誰かいた...それだけが分かる。

と...

がたっ!

「ひぃっ...!?」

「大袈裟じゃねぇか?」

「す、すみません。」

がたがた....!

店の奥からその音は聴こえる...

次第に足音となり......姿を現したのは!

「うわぉ...」「ええええ....。」

死体、死体が歩いて来ている。

「逃げましょう。やばいです。」

「同感」

ゆっくり後退りをしようとすると...

じゃこっ!

「な、なんですあれ...。」

「ゾンビならゾンビらしく....」

シャッコン!

「素手で来いよなぁ....!」

づがぁーん!

「がふっ...!!」

弾き飛ばされるルア。

飛ばされた由来はゾンビでは無い、

シュネーによって突き飛ばされた....!

そのシュネーはと言うと...

どたっ!

その目はルアだけを見ていた。

「師匠...!?」

たす...たす....

散弾銃を携えたゾンビが....シュネーに近づく。

と思いきや....不意に進路変更......その行先は

「ッ....!!!」

咄嗟に横に飛ぶ。

づがぁーん!

遅れて...火の雨が通る。

「はぁ.....はァ...ッ!?」

分析だ....自分が弱いのは...

痛いほど底の底から知っている...!

何か越える要素が無ければやってらんない...

シュネー《師匠》には興味を示さず...こちらを。

何が違う?性別?強さ?いや、あるじゃないか。

決定的で単純で、それでいて空想のような...

その答え.....。

魔力だ....魔力を追ってきている....

目は見えてないのか、

匂いで感知しているのか.....

そこのところ考えている暇があったら...

少しでも可能性あるもので.......。

僕は....ヒトを殺すかもしれません。


 じゃこっ!

雨のような弾丸を浴びせるその銃器...

散弾銃ショットガンと呼ばれる種類だ。

変なものじゃなければ....

装弾数は5~6発か?

嘗て訪れた国の銃大会の試し撃ちで知ったが

ルア本人にしか知る由は無い事。

ゾンビの類似品であるグールは、

頭を過度に損傷すると死ぬと聞いた事がある。

硬度がどの程度かは知らないが....

ちゃきっ!

普段持ち歩いているカメラバッグから...

取り出すは拳銃....

消音器サプレッサー付きの古代異装掘り出し物

ぱしゅっ!ぱすぱすぱすっ!

頭に躊躇いなく撃ちこむ....。

「ゾンビならもう死んでる!!」

そう叫んで一心不乱しかし正確に....

腐った頭をばっすばっすと欠いて行く....。

だが、

づがぁーん!

「頭じゃない....このままじゃ....せめて武装解除させてからでも....。」

落ち着くまで隠れ、

時が来たと確信した時に....

ぱしゅぱしゅぱしゅっ!

散弾銃を構えるゾンビの右手に集中...

だが.....

「.....!!」

ゾンビはなんと銃を守る様に背中を向けた。

元々手首があった位置に、弾がめり込む...

「てことは秘密はあのショットガン?」

ならば....


 づがぁーん!

 じゃこ!

 づがぁーん!

 じゃこ!

 づがぁーん!

.....

ゾンビはカウンターの内側を

既に無い頭で覗く。

そこにあるのは一枚の紙っ切れ....。

第二類魔法書物、それの破片。

そして振り返る頃には....

ぼと。

手首は千切れ飛び、散弾銃が落下。

ゾンビは声も上げずに朽ち崩れて行った...

ルアの魔力量は弱すぎた....

紙っ切れに込められたエネルギー以下で、

ゆえに、実際に魔力を追っていたゾンビは

そちらに向かって進んでいってしまった。

シュネーは魔力を分散させてしまう体質、

魔力の流れを0と見なしてしまったが為に

興味が無かったのだった。

「ししょー起きてくださいよ....。やっつけましたよ?」

「んぐ...おはよ」

散弾食らってこうも無事なのは....

やはり可笑しいが......

ここはもう何もツッコミはしない。

ツッコんだのは....

「ッ.....ルアッ!それから手を離せッ!!」

迂闊にも、

怪しいと踏んでいたその遺物を...

ルアは手に持っていた....。

つかんでしまっていた。


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