等倍の失踪

 ワタシをみてくれたヒト

 ワタシをみとめてくれたヒト

 いない、

 でも...きいた。


 どこ....?


 日が昇った。

その日、少女は現れなかった。

「今日は居ないんですねぇ」

受付の男に銀の髪の女性が話しかける。

彼女の名はシュネーと言った。

『そうなんだよ!行方不明だ!いつもならコロシアムの寮で大人しくしているのだが…いつの間にかに抜け出したらしい』

「へぇ...主人、今日の対戦相手は?」

『昨日来た旅人さんが入ってるけど、彼女が居ないなら辞めるって帰ろうとしてるんだ...!今日の分の数が合わなくなって...残念だが彼女の捜索隊が出てる』

『とりあえず、度胸がある奴だなその旅人とやらは』

「ふぅん...」

シュネーはそこを去った。


 その頃黒髪にターコイズブルーの瞳...

そんな風貌の少年、ルアは観光に出ていた。

市場で日持ちする食材や、

使えそうなものを探すための徘徊。

観光と言っていいのかはちょっと怪しいか...

角を曲がると

ごん

「ったぁ...。」『ンっ...』

双方がぶっ倒れた。

「だ、大丈夫ですかって...あれ?」

大きな布を被ったその少女は

『どこ...』

こちらを睨む様に一瞥する彼女に、

「どこって....?」

『そんざいいぎ』


 シュネーに戻る。

「そっかそっか〜お休みかぁっと....!」

目の前からヒトが来るのに気付かなかった...

『失礼...』

双方とも前を見ておらず、

ぶつかりそうになったが....

シュネーは間一髪避けた。

遅れた反射をゴリ押す、脳筋回避だ。

「ん...コロシアムから逆方向...君...」

『急いでいるので...』

「.....ふんふん.....昨日のグロガールを探して?」

『........。あぁ。』


「存在意義...?」

『そう、そんざいいぎ。』

「なんのために?」

『ころすために』

ルアは一瞬言葉に詰まった。

しかしその少女が、

例のバーサーカー少女であると気づいた。

そして血の匂いがした。

蝿の羽音が耳にこびり付いてくる。

「殺すのは何故?」

『そんざいいぎのため...』


「失踪中だってね?彼女」

『あぁ...聞いた、だから帰るとこだ。』

「帰ってくるかもよ?」

『帰ってくる保証はない』

「なら他のと闘えば?」

『出る予定だったのやっぱり知ってたのか。』


「殺して存在意義を見つける為に、こんなとこにいるの?」

『そう、きこえたのよ...ブラボーって』

「じゃあ...探すよ、一緒に、でも...」

『でも....』

「ゆっくりこれから生きなよ...。そんなに急ぎすぎても...トラクション無視で踏み込んだタイヤみたいに...空転しちゃって...いい事無いよ?」


「見つけてどうするんだい?」

『仕留める。』

「ほほぅ...何ででして?」

『彼女を越えて...私は...私は.....。』

「貴女は....?」

『褒められたい.....。』

「いいじゃん」

『え?』

「ヒトとしてそれは当然だ、生きる為、死ぬ時、ヒトは常に幸せを求めるんだからやるなら尽くしなさいな」


『とらくしょん?たいや....?』

「あ、ごめんなさい。」

そういえばマニアックな言葉使いの助言だったかもしれない.....。

賑やかな市場を2人はその青い瞳と金の瞳を、

キョロキョロ動かし歩き回った。

そしてルアはふと思った。

手がかりが無い...

「あの...そういえば他に情報は...」

『ない』

「あははは....ハイ。」

どうするべきか真面目に分からない。

何かいい考えは...

閃いた。

しかし、それは彼女に悪いのかもしれない。

だが進む事にした。

「その...大会に...決闘に......も一度、出ませんか?」

なんで?という顔で首を傾げ見つめてくる。

吸い込まれそうな程に暗い金の瞳。

「えと...あれです!闘えばその人がブラボーって言ってくれるかもですよ?」

『その人はそこにいるの?』

「分からないですケド...」

『ダメ、さがす』

「えげ....ハイ。」


 一方の2人は

ここ1時間ずっと、

そしてお昼時で...

他に人影も減ってきたにも関わらず......

未だ座っていた。

『本当に来るのだろうか…』

「うーん...解らん!」

『私の方からも探した方がいいのか...?』

「私は歩いてもよくってよ?」

『.....。行きましょうか....。』

「おっし、行くか!」

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