電流迸る

 とある国のとある路地の中....

屈強な男達に囲まれた二人が居た....。

1人は黒くツヤのある長い髪で、

その者は旅人であった....

箒で旅をする魔女なのだ....。

もう1人は短い黒髪の...少女....

「むっ。」『何?』『あ...スミマセン、何でも...。』

少年、ルアはピンチであった。


『やっちゃいますわ!』

深呼吸した其の魔女はキッと精神を整える....

『忠告しておこう...』

動く前に男が口を開いた....

『俺のマグナム弾は....』カチっ...

ハンマーを下ろし弾倉が連動し60度回転...

『強いぜ?』

ずがぁあん!

大口径のリボルバー式拳銃が再び火を噴く...

『こんなもの...』

魔女は紫の稲妻を杖から発し...弾へとぶつけ、

たのだが、止まらない...!

魔女はこの刹那に忠告の結論に至った。

『ちっ!』

がすっ!杖が折れる!...しかし軌道が逸れ、

完璧に着弾予定だった筈の右目には当たらず

『うぐ...』

だが、顳顬こめかみ直ぐ下から赤い液体が垂れる。

「魔女さん!?」

『魔女だぁ!?へ....でも魔力なんざ、この古代異装掘り出し物の44マグナム弾頭の敵じゃねぇ...まぁ、杖折ったぐらいで目からそこまでズレるとは...ちょっと想定外だがな!』

カチっ!

引き金が引かれる瞬間、折れた魔法の杖を、

魔女は石タイルの隙間に突き刺し....

ずがぁあん!

ごぼぉん!

岩の柱が生成される、

流石の自慢の弾も貫通仕切らずにめり込む。

「防いだ....でも!!丸腰ですよ!!」

『知らねぇです!伏せな!』

魔女は杖を拾う...でも無く、

パンっ!と身体の前で合わせると、

手を捻る様に素早く離す.....

右手を相手側に向け、

胸を開くよう大きく左手を背後へ!

そして紫色の激しい雷撃が放出、

前と後ろの男達は、声も上げずに倒れこむ。

見た目通り100万ボルトの高電圧...。

「こ、殺したんですか?」

『大丈夫...電流を下げれば...失神程度で済むよ』

と、男たちはビクビクと痙攣し始める。

『ほらね?....さて、そのまま動かないでね〜...』

そう言ってタンクに指を当てる...

「なんです...?」

『すぅー...ふっ!』

小さな魔法陣がタンクに一瞬、

うすーくうすーく浮かび上がると...

「わわっ!?」

『きた!』

地面の石タイルから何かが染み出てきて....

摩訶不思議な物理的では無い動きをして、

タンクの中へと収まっていく。

そのまま間も無くタンクの穴さえ消え去り...

『出来たっ!コレで大丈夫だ!』

「そんな事まで....」

『回復魔法の応用の応用...てとこかな?残っているガソリンを元に、零れた分を吸い寄せたんだ。タンク治しは...割とそのまんま...』

「はえええ....」

『じゃ、行こっか!』

「は、はい!!」

二人は待たせているヒトの元へ向かう。


 カツカツ!硬いものが叩き合う音...

「お、ファネ!来たんだな!」

ファネと言われた白いドラゴンは、

またカツカツ!!と嘴を鳴らす...

そして言葉を紡いだのは、

銀の髪の女性...彼女の名はシュネー...。

「おーい!」

「師匠!」

『ただいまです』

「おつかれ〜おかえり〜」

クリーム色の鋼のポニーに、給油を施し....

「じゃ、行くか!」

「はい!!」

『よーし!』

ニコニコで皆、クルマに乗り込む.....

そして走り出す.......

たたたたたたたたたた.........

「何故アナタが!?」

またもや荷台で二人ぎゅうぎゅう詰め。

『アハハハハ....最後ぐらいさ?』

「うーん....。」

ちょっと赤くなるルア。

『何赤くなってるのさ....あ、』

「?」

『私.....いや、僕は....そう、男の子だよ?』

「.....!?」

『君、ずうっと驚いてるね....男性が魔女に突入した時点でもう、かなりのイカれイレギュラー扱いだからさ...女装してるって訳....今じゃちょっと楽しいケドね....あははは.....そういえば...僕の名はエウルメスだ、また会った時は宜しく!そしてさよーなら少年!ホントの女の子はしっかり捕まえろよな!ま、私でいいなら?構いませんわよ?おほほほほ.....』

テントから転がり落ちたかと思えば....

いつの間にかに出していた箒に跨り、

空の彼方へと去っていった.....。

......呆然としていたルアに...

「え?気付いて無かったの!?」

と、声。

「.....わわわわわわ!!!」

エウルメスがどうして態々わざわざ

ルアの方に乗り込んでいたのか.....。

今更理解し、また発火オーバーヒートしたのだった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る