魔法でどうにかなるのなら...

 マジカルな帽子、マジカルなローブ...

宙ぬ浮かんだ箒...それに跨った箒乗り.....。

それを見上げる二人の旅人がゐた。

「..........」「........。」

一人は銀の髪、パステルピンクの瞳を持つ女。

彼女の名はシュネー......。

もう一人は、黒い髪の少年ルア...略。

そして二人の頭上を旋回し続けるのはファネ

成体なのか幼体なのか謎多き肩乗りドラゴン。

「少年....車の運転席に」

「分かりました...。」

ほぼ口パクで意思の疎通を完遂し...

目を離さぬように、されど自然ナチュラルに、

ルアは運転席へと潜りる。

ルアが魔法で攻撃された時、

最も身を守れる場所なのは古代異装掘り出し物の中。

古代の遺産である其れは、

未だ完璧な解明、再現が成っていない性質....

魔力を掻き消す力を持っている...。

普通に闘えば魔法の方が強い...

だが、その性質から手に入れさえしまえば、魔法センスを気にする事も無い。

重宝されている理由だ....。

因みに、芸術の様な魅力を感じたマニアが、

金を叩いて集める為、相場も衰えない。

投資にもやはり打って付け....

この話はどうでも良かったかも知れない。

大切なのは最初の話...魔力への対抗力の方。

幾ら優秀だとしても、破れぬ物は破れず。

ギルドの集めたデータによると...

岩をも溶かす高出力の魔力光線を、

古代異装掘り出し物の鉛筆が受けても、

其れは何も無かった様に存在し続けたという。


 さて、その箒乗りは口を開いた...

『あの...お困り...ですか?』

そう、図星。

顔には出さずにシュネーは...

「うん、お困りだぜ?」

『何か手伝う事があれば....』

「おっと、それ以上近づくなでございますよぃ....君、随分若いけど魔法資格は何級?」

『それは...』

勿論この箒乗りは嘘を付かずにはっきり、

『魔女です...私は甲級魔女です、大事な事かもしれないので二回言いました。』

「おいおいおいおい....」

魔女、しかも甲級魔女、まさかの最高位。

甲級は四段階ある魔女の内の最高ランク。

「世界に三人しかいないんじゃ無かったか?頭おかしいぜこの展開は....」

最高位なら待遇どころの話では無い、

協会側ともずっぶずぶだろう...。

困ったなぁ.....

『困ったなぁ...って思ってますよね?』

「ッ.....なぜ?」

『いや、単なる心理学ですが....何しましょう?引っ張ってあげましょうか?励ましてあげましょうか?』

「はははは.....はぁ....引っ張ってもらうよ」

『なんです?今のため息...』

「いや?きのせいじゃん?」

『なんだかフレンドリィですね』

「せんきゅ....じゃあ頼むよ?」

「待ってください!!」

ドアを開け、出てきたのは一人の少年。

「何か要求される奴です?これ。」

「随分ケチんなったな、てか指示したのに」

「(小声)誰のせいじゃい.....。(通常)失礼な気がして...すみません。....で、どうなんですか?」

『そだね.....うん、世の中等価交換が主流だけど...モノを”動かす”だけ...の等価が思いつかないので....特別ですよ?』

「じゃあ頼みます...。」

『乗っていてくださいね?空間魔法なら古代異装こだいいそうの魔法はじきも間接的な干渉になるので突破できますので....。』

ルアは一旦出てしまったので、車に戻る。

ちょっと前まで荷台詰めだったせいで、

反射的に荷台の方に入ってしまったが....

まぁ問題は無いだろう........

『おじゃまします....』

「ひゃうっ!?」

荷台にはなんと、魔女も乗り込んできた。

『箒で行くより、自分もワープした方が楽な気がしたんで....宜しくです。ちょっと帽子邪魔だな...』

当然の様にその防止を格納魔法で消してみせ

艶々のロングヘアーがあらわになる。

狭い空間に犇めき合って収まり、

その髪からは甘い良い香りが漂う....。

「し、師匠...!!場所チェンを!!!!」

「えーめんど、いやだ」

「ごはっ....。」

『じゃ、いきますよ~』

「うわああああああああああ......。」

ばしゅっ!

そして車だけがその場から消滅した。


 EXT

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