迷い迷えど...

 たたたたたたた......

のろのりのろのろ......山を登ること数時間。

「ついたぞー」

銀の髪をそう言いながら、

若干窮屈な運転席に垂らすのは...

パステルピンクの瞳に猫のように細い瞳孔。

彼女の名はシュネー...旅人だ。

「はい....おりますね。」

何か酸っぱい顔しながらテントから降りるは

黒髪に青いターコイズブルーの瞳の少年。

「......」「またなんかあった?」「いえ。」

少年、ルアは空を見る。

有るのはサンサンと輝く太陽の光.....

「.....で、どこに着いたんです?」

「此処はな...頂上だ」

「そうですね...。」

「んでだ...山登りにやたら時間をかけてしまった...なので...」

「なので?」

「ここで確実な、安心な野宿を取るか....下って夜通し走り続けるか....そして運良く道に宿が現れるのを祈るか.....」

「選ぶんですか....?」

「そうだ...選ぶんですよー...ちなみに後者なら私が走らせ続ける事になる」

「じゃあそれで。」

「げぇ....」

「いいでしょ?パシリさせたんですからそれぐらい。」

「お母さん、あなたをそんな子に育てた覚えありません!....と言いたいところだが.....ラクして生きて行こうとするのはヒトとして、どこかで少しは芽生える考えだから......ま、いいか。これで貸し借りゼロね~」

そうして二人は山を下ることとした。


 たたたたたたたたたた.......

「とばしてくぜぇ~」

「ひえぇ....。」

ががががががっ!

超軽量ボディのその車体は、

下りにおいて、スピード出しの良い材料だ。

ましてやその小型でスイスイ下っていく....

後輪駆動の少し滑りやすい特徴は、

彼女の高度なテクによって、

美しく、だが効率的なドリフトへと昇華。

まぁ、舗装されていない路面で、

やる事では全くないのだが....。

「パンクしたら師匠が手に入れてくださいよ?タイヤ。」

「それはできかねん!何故か!高いからDA!」

「じゃあやめてぇ~.....。」

意味の分からないノリで下って行った....


 たたたたたたたたたた.......た.....

急に速度が落ちる.....。

「なんです?急に落ち着いて....あぁ....坂ですか。」

今まで前方側に傾いていたのが、

突如として後方に転げそうになる。

後部座席...と言っても実態はテント.....

勾配によってはかなり怖い。

「な~しょーねん...」

「なんです?」

「間違えたと思うか?道」


 下ったのにまた登っている....。

だが、それだけなら....

「それだけなら....また下るかもしれませんよ?」

「うーん...ま、そうね...うし出発!」

こうして、またゆっくり登りはじめた。

もう少しして....

「師匠!下りです!あっていたかもです!」

「うおっしゃ!いっきまーす!」

そうして下りきった....。

はずだったが.......

「って!あの山!」

「えぇ...。」

なんと、そのまま進んだ結果、

その道が過ぎた筈の山の方向に向いている。

「なんでまた戻ってるんですか!!」

「えへぇ....なんでだろ」

「一度はいったら出られないとか嫌ですよ?」

「それは同感....しかし辺りは暗くなっている...進めばこれ以上、道しるべも分からないだろう....だが、ここで野宿を取ろうにもそんなスペース無い....どうする?」

「い、行きましょう!」

「こうかいしませんね?」

「わーっ!そういうの言わないでくださいよぉ!!」

「ふーい」


 結局のところ、山を出たのは翌日の昼間。

そういえば、この山は嘗て城壁として使われ、

道が次のルートに進む時に必ず山に戻る地形。

その作りで敵に迷いを生ませ、

その侵入を防いでいたという.....。

日の光で正しい分岐ルートへの道筋が現れる

そんな意地悪なおまけつきでもあった。

これによってのこんな時間だ突破時間だ....。

もし頂上で野宿をしていたら....

何か結末は変わったのだろうか....。

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