燃えるような呪いを込めて...

 呪詛....魔法とはまた違った....

ちょっとした概念.....。

所謂、念で怪異を祓ったり、

逆に奈落に突き落としたり.....。

但し、魔力を使ったり使わなかったり...。

もっとラフな存在...それでいて固い存在。

魔力を使ったら魔法では無いか!

...と言いたいのもあるが、呪詛と言うのは、

訳が分からないから呪詛足りえるのだ。

現代魔術では到底辿り着けない...

無意識、そして不明瞭で奇跡的.....

時に安らぎを与え、時に畏怖となる.......。


 ある日の昼下がり...

「なんだこれ.....」

置かれているのは1冊の本。

不自然に置かれた怪しい怪しいそれは...

如何にもな禍々しいオーラをなびかせていた。

「触らない方が....いいですよね......。」

その少年は普通に去っていった....。

本は思った....

[[やはり私を読まぬか....だが、次期こそ読んだ瞬間!貴様は我が呪いの内である!ハァーッ!]]

直後、本をカラスが攫っていった...。


 次の日...

「あれ...?こんな所に....。」

公園のベンチの上に1冊の本...。

「うわぁ....誰か読んだのかこれ.....。にしても....置いたままってどーなんですか...。」

「ん?どったの?」

「いや....。」

「この本?ほっとけほっとけ...!パン食い行くぞ!」

「あ...はい。」

少年と女は離れていった....。

[[ぐあああ!何故読まぬ!この美しき我が書を!見れば見る程、読みたく成るであろうが!....ええい強行手段を取るか.......!はァーッ!]]

又、カラスが何処かに持っていった。


「美味しかったですねー。」

と黒い髪の少年...

「うむ...!オリーブオイルと岩塩だけであんな美味いもんかね...」

と銀の髪の女。

「聞いて驚きましたね。」

「面白くは無かったな!」

「えぇー面白いじゃないですかー...。」

「こう...アヤシイ物質が....」

ドスッ!

「!?」「!」

毎朝新聞が届くこの宿は、

ドアに郵便受けが付属している...。

その郵便受けに......激しい音を立て......

「この本!!」「昼間のじゃんか」

「やっぱ怪しいですって。」

「へぇー...少年のなんじゃないの?実は」

「まさか〜....。」

又、本は思った。

[[怪しいとは失礼極まりない...私はレッキとした唯の本であるぞ!何がそうも思わせるか!]]


「いいよ?読んじゃえよ」

「何をいきなり!?」

「読んでもし乗っ取られたら、出て行きたくなるほどにとくから...安心して読みなよ」

「安心出来るかっ....。うーん...でもスッキリしませんし....読みます....!!」

[[遂に読むのだな!?ふふひひひ....はははは!!!]]

と本は思った。

ペら....

「うおっ.....。こ、これは.......!!」

「来たかッ!修正パンチッ!!」

「ちょ!!まってください!!なんもありませんよ....。」

「じゃあ何さ...」

「普通に面白いなって...この本。」

[[やっと分かって貰えたッ!我、満足也.....。]]

意志を持つ書物は、

特類魔法書物として認定されるのだが...

今までそのような魔法書は見つかっていない。

唯一無二のその書物は....誰も知られぬまま...

いや、誰かの心を"確かに"響かせ、

その刻まれたひとつの呪怨は消滅した。



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