何時しかの夜の森で

 何時いつしかの夜の森で....

ぴこーん♪

目標地点到達、之ヨリ作戦行動二移ル>>

『了解、ポルタフォルトゥーナの第1ロックを解除、続き、炎魔法による追い込み開始』

山に挟まれた深い森に火が放たれる。

使い魔兵ソルダーファミリャスの移動完了。こちら第2フェーズに移行。』

『了解、ポルタフォルトゥーナ第2ロックを解除、応じて、座標指定も開始。』

その装置に搭載された、

魔法石による座標指定を行う....

箱に煙突の付いたような物体から

稲妻のように枝分かれしつつ、

しかし、最短のルートで進み、

放たれたそれは赤い宇宙に青い光を加え....

5方向から1地点にぶつかる。

その稲光に立ちはだかった木々は、

為す術なくへし折れた。

『全ての座標が目標地点に集束するのを確認。』

『了解、ポルタフォルトゥーナ起動、第3フェーズに移行...使い魔ファミリャスの投入開始』

大型トラックに載せられた

2-3mサイズのモンスターが、

ポルタフォルトゥーナと呼ばれた光の扉へと

続々吸い込まれていく。


「何...!?」

彼女の瞳には燃える宇宙が

くっきりと映し出された。

その少女はキャディと言った....。


『3,2,1...攻撃開始!!』

急遽建てられた木の棒に布をかけただけの、

シンプルなプレハブに集まったのは、

魔法協会の特務部隊....。

司令官の一声により、全ての魔物達が、

本来穏やかに朝を迎えたはずの森に、

攻撃を開始した。

奪取か破壊を命じられた、

見た目の割に賢い魔物達が....

生体反応をその皮膚で感じながらに、

1つのポイントに進んで行った。


 そこには古びた鉄のコンテナや

列車と思わしき物が並列に並べられ

奥には更に鉄クズの山があった。

もちろん容赦なく、

その不自然なオブジェクト達を破壊し周る。

列車等は跡形もなく砕け散り...

魔物達は止まる気なく続ける

魔物の1体がスクラップ山に近づく。

そのゴミ山の中から、

「ここはッ!!!あっしの!!!!私の!!!!家だァ───ッ!!!!!」

どがーん!!!

山の中から魔物以上に

スクラップをぶっ飛ばして

その竜は無音の雄叫びをあげる!

その覇気に少し怯んだ最も近い魔物を、

出てきた勢いそのままに蹴飛ばし....

「距離20!今!」

高飛びしたと思った次には

ちょうどの位置に居た魔物2体の頭を、

その豪脚で地面にめり込ませ....

「そこだっ!!!!!」

状況を知り襲ってきた一体を、

10m先のもう一体に投げつける.....

「レーダーに反応!後方5時方向!3、1、ショット──ッ!!」

若干7mスケールの鋼の竜が

比にならない反応速度で、

迫った魔物に回し蹴りをぶち当てる。

粗3分で第1波を返り討ちにした。

「熱源センサーは火災でなんの役にも経たない...3次元音響ソナーが無ければ即死だった!」

その眼前に広がる動かない魔物達を映した、

目の前のディスプレイを眺めて、

通常いつも通りブツブツ言っている。

「可哀想だけど...」

帽子を被り直し、

その音響ソナーと光学スキャナーの情報から

駆る竜は歩を進めた。


{先行偵察隊壊滅ヲ確認、コレヨリ精密誘導ヲ開始}

『容易くだな...』

『所詮は逃げ足だけの偵察、戦闘向きでは無い』

『しかし一体も逃げんとはしつけがなっとらんぞ』

『忘れたのか?わざとやられて情報を擦り付けたんだ』

『まぁそうだが...使い捨てと知ってか…可哀想にな』


「可哀想だけど...やらないと....!人じゃない、今まで猟もしてた!それと、同じ.....!!」

無茶苦茶な理由で納得させる...

びびぃ──────ッ!!

「反応...!」

何かのセンサーが急な反応を示す

かなり遠く、いや、近い!

「直撃コース....!!回避不可ゼロッ!」

ずがぁああん!!!!

木々を突き破り一直線に、

紫の光が周辺を抉った。


「こちとら、7000倍の筋繊維装甲と対魔力コーティングがあるッ!」

遠い昔....

古代異装掘り出し物の映像機器から聞いた台詞をまね、

口の動くままに叫び散らかすと...

ばぐん!と大地を蹴り、

ひとっ飛びで光線の主へ辿り着く。

光線を放った魔物は

真上からの襲撃に対応できず

ヘモグロビンの色素を

ぶちまけながら沈黙した...。


{遠距離型沈黙、}

『なにッ!?効かんのか!』

『そりゃそうだ!奴は古の悪魔だ!魔力が効くわけが無い』

『ええい...やはり近接に持ち込むしかないのか』

『いや....』


 右半身がべっとりと赤くなったが...

内側から確認は出来ず!

気付くことは無かったが、

「ここは...ポジションチェンジだな」

狙撃の有利要素が木で"見えないだけ"の

微妙な場所良くも当てたと感心していた刹那。

同じく、びびーッ!と熱源反応....

魔物の体温は勿論の事炎より低く、

其れを探知はしない、

しかし、それ以上の熱源を感知したのなら...

また別の話だ。

メガネ越しに映った情報を、

初期は見くびっていたが....

心から避けねばならないと感じた。

本能に正直に飛び退くと、

脚のすれすれを光線が通過した。

ビームの色は紫ではなく青、

青い光というものは…

「龍子砲....!?龍もいるってこと!?」


 龍、それは

竜と区別されたまた別の怪物。

活動には食事を必要とせず、

星を巡る龍脈から汲み取って、

強き其の生命いのちを維持している。

そして何より、

魔法協会では手に負えない程の

自我的な物があり、それ故に....!

ヒトと連む事は滅多に無い。

だが実際、その光の主は龍であった。


 がぎゅあっ!!!

「シャオラァあぁぁぁぁぁ!」

金属と岩が思いっきり擦れる音

自身の叫びで聞こえなかったが。

レーダーに映し出されのは無数の振動探知、

飛び跳ね、大地抉り、全力の全力で避ける。

びびぃ──────ッ!

音響ソナーからも反応、

此方は全くの別方向から、

「酷いぞそりゃあ!」

鋼の竜は大きく飛び上がった。

元々いた、虚構に魔物が食らいつく。

其れが上を見上げた瞬間、

頭を龍子の熱線が消し飛ばした。

キャディの額からは汗が垂れている。

帽子を被り直し、

髪に溜まった蒸気を放出する。

「じわじわ、じわじわと...!こりゃ堪んないぜ....」

びびー!

「次ッ!」

再び襲い来る龍子の弾幕。

無限供給されるエネルギー弾が

その場への長居を許さない。

ががっ!

ブレーキと共に大きく方向を変え...

「射撃の方向から敵を予想、正面から突っ切る!」

ひゅいい...!

呼応したかのように、

ディスプレイの光が一瞬強まる。

「ろりゃああああ──────ッ!」

そこからは只管に、目の前からの

動物とは思えない正確な射撃を

限り限りに避け続けていく。

近づくにつれ、被弾が出てきた。

掠った装甲の表面が溶け始めては...

大気により冷却される。

目の前の大木を思い切り蹴飛ばすと

大木を挟み白い龍がいた。

「貰ったァ!」

その勢いで其れの頭に...

ごぉおおん....!!!

パイルバンカーがその龍の

2/3の内包物を弾け散らした。


 しかし、待ち伏せていたかのように

魔物が沸き出してくる。

「こいつらッ!?頭良すぎだろうが!魔物は魔物らしくぅ!一途に来いよ──ッ!!!」

キリが無かった。

しかし的確に一体ずつ仕留めて行く。

キャディには道筋が見えた。

しかし、その道筋から次第に外れ始めた。

ごぉおん...

優勢に駒を進めて居たその鋼の竜に、

遂に魔物の手がかかった。

「ッ!」

急いで振りほどき、膝で殴り飛ばす。

そして姿勢を一気に低くし、

コクピット狙いで飛び上がった魔物を、

フリーにし、そのうえで、

背中のキャリーユニットを垂直に射出!

脳天にぶち当てた.....。

そしてまた別の個体を右脚で押さえつけ、

パイルバンカーを放ち、持ち上げ、

刺さったままもう一体諸共、串刺しにした。

アッパーカットを決め、

宙を舞ったキャリーユニットは

自由落下を始め真下に居たもう一体に命中。

それを踏み台に斜めに舞い、

脚を振りながらその鋭利な脚部装甲をパージ、

遠心力で銃弾のように命中させる。

着地先の最後に残った一体に

重力加速に乗せた、

渾身の踵落としを叩き込んだ!!

息が途切れてきた。

深呼吸をして落ち着かせる。

振り向くと

「..................ッ!」


[全使イ魔兵ソルダーファミリャス、活動停止ヲ確認]

『な、なんだって!?全数で39体もだぞ!』

『もうチャンスは無いんだ!確実に息の根を停めるんだ!』

『しかし....』

『司令ッ!森を見てください!!青い光が上に向かって...!』

[目標沈黙]

『うおおおおぉ!』『やったぞ』

『これでギルドはあの力を得ることはもう無い!』

丸太に大きな布1枚で

包まれていた司令室は

その上に歓声で包まれた。


 白い龍は2/3が削れた頭に

杭が刺さったまま羽ばたき去った。

血みどろに染った、

鋼の肉片が散る森を背に.......。

そして、日が昇った。

明るい朝陽あさひだった.....。

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