清々しい国

 たったったたたたたったった....

クリーム色のボディに

イカした赤のラインを引いた鋼の馬が、

清々しい程の晴天の元に駆けていた。

「いい天気ですね。」

短く黒い髪で、1人乗りの筈の運転席に、

余裕ができる程、華奢な少女....

「むっ」「え、なに?」「いや...」

少年、ルアは、風景の感想を述べる。

「ほんとだ、さっぱりじゃんねぇ」

荷台に何故か張られたテントの、

扉が巻き開くと、

銀の髪にパステルピンクの瞳、

猫のように細い瞳孔を持った女性。

シュネーが身体を乗り出す。

正直言って危ない。

たかたか...と空き箱を叩く様な音を立てて、

二人は次の国へと進んで行った。

山なりに建てられた城壁が見えた。

少しだけスピードを上げた。


『ようこそ旅人さん!2人ですね!どうぞこちらへ!』

流れに任せて、待合室に入る。

『なにか入りますか?』....と

ドリンクの名前が書かれた紙を渡され、

ルアとシュネーはそれぞれ、

ミルクティーとオレンジジュースを頼んだ。

そして届いたドリンクを、

飲みながらマップを見る。

「湖を囲んで家が建っているんですって。」

「へぇ....さぞかし綺麗な朝が待ってることやら」

「湖が見える喫茶店みたいなのがそこそこ有るみたいです。朝ごはんはこれでいいですかね。」

「いいじゃん!」

『旅人様〜!ご準備の方が出来ました!良い観光を!』

「行くか」

「はいっ。」


 待合室から出るとすぐさま目の前に

広い湖と斜面に並んだ家達が広がる。

「おぉ〜!」

「撮って来ますね少し。」

「うい〜」

バッグからカメラを取りだして...。

けしゅん!

「よし。」

「いいかな?」

「はいっ。」


 宿は湖が見える好立地で、

それでいて安価なナイスプライスだ。

シャワーを1人ずつあびて、

ルア達はプラン決めを行う。

「少し遠いところに良さげな喫茶店がありますね。」

「朝ご飯ですの?」

「うーん、でも1番近いのここぐらいですね。」

「周りは青果店とかかー...まぁそれでいいんじゃない?」

「はーい。」

シュネーは座っていたベッドに倒れ込む。

が、木の板に毛布を、

敷いただけなベッドである事を忘れており。

「あいた...」

後頭部を押える。

「大丈夫ですか.....?」

「いつものように飛び込んでいたら即死だった!!」

「大丈夫そうですね。おやすみなさいです。」

「おやすみ〜」


 朝に差し込む陽の光で目が覚める。

心地いい上無い。

「おはよう少年」

「おはようございます師匠。」

朝ご飯を食べに予告通り、喫茶店へ向かう。

どるん...たったたたたた....。

止まった湖に流れて行く建築物を横目に、

宿で見たマップを元に進む。

少し走っていると、

パラソルが刺さったテーブルが

店先に並んでいるのが見える。

もちろんそのテーブルに座る。

備え付けのメニュー表を読んで、

サンドイッチを二個頼んで待つ。

「ん....少し席を外すよ...」

「どうしました?」

「地図置いてきた」

「えっ....」

「案ずるな?脚で走って行く!」

「いや、別にっ....あぁ....。」

本当に走って行ってしまった。

それとこの店、かなり人気なようで、

周りも賑やかで届くのはまだ先だろう。

「あ、そいえば」

ルアはカメラを取り出す。

昨日の夜、宿で写真の出来を

確認しようとしたのだが忘れていた。

ついでにここからの湖も撮っておくかと

レンズキャップを外す...が、

うっかり力を緩めてしまい、飛んでしまった。

転がったキャップは後ろの席へ。

そして....。

『なんか転がってきた〜wこれお前のぉ〜?』

『違うぜ』

『じゃあw』

パキッ....。








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